人生の"最適解"を共に探す、投資パートナーの存在価値

2018/3/16
「人生100年時代」を迎え、将来の不確実性がますます高まる昨今。大切な資産を守り、育てるためにはどんな対策が必要なのか。そのひとつが「信頼できるパートナー」を得ること。市場が激動する現代において、資産運用のアドバイスや賃貸経営のサポートなどを行う、その道のプロの存在は確固な安心となる。

今回は、賃貸経営の相談役として長い歴史を持つハウスメイトとNewsPicks のコラボ企画を実施。プロピッカーであり富裕層から厚い信頼を集めるS&S investments代表・岡村聡氏に投資パートナーの価値、そしてひとりの賃貸オーナーとして、どんな目線でパートナーを選んでいるのかを聞いた。

「資産運用の公式」はもう通用しない

──岡村さんは多くの方々に資産運用のアドバイスをしていらっしゃいます。最近のニーズに、何か変化は感じられますか。
岡村:昔からある教科書的な手法が、機能しなくなってきています。
従来の資産運用はシンプルで、年代に応じてパターンが決まっていました。国内外の株式と債券、そして不動産といった対象に分散投資することを基本とし、若い世代は株式の配分を増やしてリスクを取り、年齢を重ねるごとに債券を増やしてリスクを減らしていく。
そして60歳ぐらいで引退し、築いた資産を使いながら人生を全うする、といった「資産運用の公式」が、通用しなくなっているのです。
──それはなぜでしょうか。
こうした公式は、定年まで同じ企業に勤め上げ、安定した収入や退職金を得るといった前提があったからこそ機能していました。今の現役層で、そんな将来を約束された人などほぼいないでしょう。
生き方や働き方が多様化し、仮想通貨のような新しい価値が登場するなど金融市場もめまぐるしく変化しています。
将来に不安を抱いているという点は多くの方に共通しますが、その不安がどこから来ているのかも人によって異なります。既存の公式があてはまらない人が増え、自分に合った答えを求めることが難しくなっているのです。

人生の"最適解"を共に探し出す

──日本の富裕層は高齢者が中心ですが、シンガポールを拠点にする岡村さんのお客様は30代の方も多いそうですね。
当社は私と妻の二人で回しているいわば零細業者ですが、ありがたいことに若い起業家からの相談を数多くいただきます。
資産運用はお金や老後の話にとどまらず、その人の生き方や家族の人生も左右するとてもプライベートな問題です。
資産の置き場所だけでなく、自身のビジネスや子供の教育、住む場所、相続など誰もが人生の様々な選択に迫られる。その最適解を見つけるためにサポートするのが私たちの役割です。
お客様のなかでも、当社のようなパートナーを選ぶ基準や、信頼度を判断するポイントが変化してきていると感じます。若い世代ほどイメージに左右されることなく、シビアに中身を選別している。
私の場合、ほとんどのお客様が口コミや紹介で来てくださる方です。身近な人が利用し満足しているということが最も信頼できる情報なのでしょう。

情報過多な時代のパートナーの価値

──過去に比べると情報がオープンになり、様々な知識を得ることができるようになりました。自分に適した方法を自ら判断し、資産を管理するという考え方もあります。コストを払って、パートナーを得る価値はどこにありますか。
お客様には、我々が特別な情報を持っていて、どこかに"絶対儲かる"商品があるのではと期待されるのですが(笑)、そんな仕事ではありません。
たとえば今、世の中に「食材」は大量にあります。昔はスーパーに行っても3つしかなかったので選ぶのが簡単だったものが、現代は500種類ぐらい並んでいて意思決定ができない難しさにもつながっている。
そもそも、自分が食べたい料理は何か? 投資については、これがわかってない方がほとんどです。
ミシュラン三ツ星のレストランであっても、ベジタリアンの人にとっては意味がないですよね。野菜だけ食べるのであれば、このスパイスを少し利かせましょうという作業をするのが我々の価値だと思います。

「何十年も付き合っていけるか」が重要な判断基準に

──パートナーの選び方によって、投資のパフォーマンスや精神的な満足感は変わりますか。
当然、まったく違いますよね。
パートナー選びでは、今の時点で信頼できる存在であるかに加え、何十年でも長く付き合っていけるかどうかという視点も重要になるでしょう。
資産運用は、粘り強く継続することが大切です。6%の利回りで運用できれば12年で資産は倍にできるし、3%でも24年あれば倍になります。時間のある若い人であれば、継続するだけで資産を増やせます。
一般的に長い期間を運用できる若い人ほど複利効果のメリットを受け取ることができる
それなのに、変動にくじけて退場したり、パートナーへの不信からやめてしまったりすると、せっかくの資産を減らしてしまうことになりかねません。
ただ、投資は順調な局面ばかりではなく、一時的であっても自分のお金が減ることには大変な苦痛が伴うので、本人の真のニーズを理解し、隣で支えてくれる伴走者の存在が重要です。
──信頼関係を築くため、岡村さんはお客様とのコミュニケーションでどんなことを意識していますか。
私はお客様が実際に資産運用を開始するまで、1カ月でも2カ月でも粘り強く面談を繰り返します。
資産運用を通して何をしたいのか。お客様本人も気づいていない本当のニーズを掘り下げ、具体的な運用の手法に落とし込むことが、最終的な満足につながると考えているからです。
また、提案する金融商品には、予算が許す限り自身でも投資するようにしています。
最近は海外不動産に興味を持つお客様がとても多いので、私も思い切ってマニラに投資物件を買いました。お客様に紹介する物件も、なるべく現地に足を運んで実際に見てチェックしています。

不動産が持つ「手ざわり」の魅力

──不動産は株や債券に次ぐ分散投資先の一つとして注目されていますね。不動産投資や賃貸経営のメリットはどんなところにあると思いますか。
理屈でいうと不動産投資は、株式と債券の中間的なミドルリスク・ミドルリターンの位置づけで、賃貸収入と値上がり益の両方が見込めるというメリットがあります。
ただ、そのメリットを取りにいくだけであれば、手軽に売買できるREIT(不動産投資信託)や、REITを対象とするETF(上場投資信託)でも十分です。
実は私自身、起業した当初は流動性の低さが気になり、個別不動産はあまり勧めていませんでした。しかし最近になって、不動産にはこうしたリスクをしのぐ魅力がある、とわかってきました。
不動産には、"手ざわり感"があるんですよね。物件そのものの魅力、街が持つ勢い、そして地域との関わりや発展を肌で感じることができる。これは保有した人だけが得られる満足感です。
不動産投資では実際に現地を訪れて、意思決定が変わる方も多いです。条件的にはベストではない物件に一目惚れしてしまうこともあるし、その逆もありますね。
また、不動産では仲介業者や管理業者が信頼できるかどうかも非常に重要なポイントです。安定した利回りの確保のために必要なのは仲介力と管理マネージメント力。私は候補となる業者を訪問し、自分の目で判断した上でご紹介しています。

そのコストに意味はあるか?

──空室リスクや入居者トラブル、家賃滞納など賃貸経営にはリスクも伴います。岡村さんは、どんな判断基準で付き合う業者を選んでいるのですか。
不動産の場合、手数料は大きなファクターとなるため相見積もりは必ず取ります。ただ、最も安いものを選ぶわけではなく、多少の手数料を支払っても継続して利回りが取れるのであれば、そのコストは必要なものです。
「しっかりと人を置いてサポートしているから、この手数料なんですね」「一括して管理を任せられるので、安心ですね」と納得できる背景構造があれば私は当然、対価を払いますし、お客様にも「こういった理由で対価を支払うべきなんですよ」とご説明しています。
とくに東南アジアの不動産は日本とはまったく信頼レベルが違うので……。日本のように歴史ある企業に相談できる状況とは違って、そもそもちゃんと建つかどうかから心配しないといけないんですよ(笑)。
その分、日本には入居者募集から家賃の回収まで、経験がものを言うPM業務をまるごと委託できる企業があるのは投資初心者の方でもとても心強いですよね。
起業から8年、教育や相続など相談の裾野も広がってきました。今後は、信頼できる提携パートナーを各業界、各地域で見つけ、マッチングしていくことにも力を入れたいと思っています。
(取材・文:森田悦子、写真:北山宏一、デザイン:九喜洋介、編集:樫本倫子)