【新】スシロー社長の「市場価値」を高めてオファーが来る働き方

2018/1/27

自分の市場価値を高めよ

私はこれまで、いくつもの会社を歩んできました。
電通、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、ローランド・ベルガー日本法人に入社。企業再生支援機構(現・地域経済活性化支援機構)に転じ、日本航空の副社長として、京セラの稲盛和夫名誉会長とともに再建に従事する機会もありました。
そして、アパレルのワールドの役員を経て15年にスシローの社長に就任し、現在に至ります。
自分の市場価値を高めることが大切です。市場価値があるからこそ外から「うちに来てくれ」とオファーがかかる。
では、市場価値を高めるには、どうしたらいいのか。

どこでも順応する

自分が「異分子」として新たな場所に加わることに対して、そういうものだと受け止めていました。
不満をこぼしても状況は変えられないから、覚悟を決めるしかない。
そのおかげでどこでも順応していくタイプになったのかもしれません。

天文学の道ではトップになれない

なぜ天文学の道を選ばなかったのか。それにはいくつか理由があります。
東大って、頭がいいやつは本当に頭がいい。
「このまま学術の世界に行っても絶対に勝てない。その中でのトップ・オブ・ザ・トップには自分はなれないな」と自覚し、自分がいかに思い上がっていたかを痛感したんです。

放浪の旅で学んだこと

どうして放浪の旅に出たか。
今しかできないことをやってみようと思ったのです。むちゃな旅をして、何からも守られていない世界に飛び込んでみたい。そんな衝動に駆られましてね。
そのときに学んだのは、人間どこに行っても生きていけるということです。

電通の本質

電通は約5年で退職しました。
志望していたメディア関係とはちょっと異なるなという部分がずっと心の片隅にあったんです。
電通はすごく影響力を持つ会社ではある。それでもやっぱり広告会社であって、メディアではない。
実際に中に入って電通の事業の本質を見て、それがよく分かりました。

泳げないやつはプールに放り込め

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)では経営コンサルタントのノウハウを実践の中で覚えていきました。
何しろチームはできたばかり。プラットフォームや教育体制はできてない。
簡単に言うと、泳げないやつはプールに放り込む方式でした。

流れに身を任せて力を発揮する

私はわりと流れに身を任せるタイプなんです。どこからか声がかかったら流れに抵抗せずに動く。
すると、自分の力を発揮できる次のステージが不思議と待っているのです。
遠藤功さんが「水留がやるなら俺もやる。お前がやらないなら俺もやらない」とおかしなことを言い出しました。
「しょうがない。一緒にやりましょうか」と言って始めたのが、今日本にあるローランド・ベルガーです。

非常事態の格闘

仕事が切れ、何もすることがなくなりました。
その頃、社員は十数人まで増えていましたから、いわば非常事態です。是が非でも新規顧客を獲得する必要があります。
ではどうしたか。

年収が激減しても転職

誘いに応じて、企業再生支援機構に移りました。
年収は10分の1程度になりました。それでも得られるものは大きい。
私は「ジョブチェンジをするときは下から入ったほうがいい」と思っています。

稲盛さんに怒られても意見を言う

日本航空の再建に向け、同社の会長だった稲盛和夫さん、企業再生支援機構の瀬戸英雄委員長、社長の大西賢さん、副社長の私が中心になり、経営に関わる物事を決めていました。
稲盛さんに結構な回数怒られましたよ。「水留君は全くビジネスが分かっていない」と。
でも私は自分の意見を言い続けました。

稲盛経営の神髄

「そこまで時間を使ってやる必要があるのか」という声がありました。
稲盛さんは「いや、これが大事なのだ。これこそがある意味、経営のすべてなんだ」と言う。
最初は「そうかなあ」と思いながら付き合っていましたが、確かに不思議なほど成果が上がるんですよね。

どんな業種だろうと経営できる

いくつかオファーがあった中からアパレルのワールドに行くことにしました。
やろうと思えばどんな業種でもできる。だから業種に対するこだわりはさほどなかったのです。
ただ、そう簡単に物事は進みません。最大の障壁となったのがオーナーでした。

自由に楽しんで仕事しよう

日本のソフト型のサービス業をグローバルブランドに育てたいというテーマが自分の 中にありました。
そして私は2015年にスシローに移り、社長に就任したのです。
スシローに入って苦労した点ですか。
ファンドの傘下に入った期間が長くなったせいなのか、どうしても数字を追いかけすぎる、優等生を演じさせられているきらいがありました。
もっと自由に、楽しんで仕事をしたほうがいいのではと思いましてね。

スシローを世界ブランドにしたい

回転寿司業界はここ数年、動きが激しくなっています。われわれも業界5位の元気寿司さんと経営統合に向け協議を始めたところです。
スシローに加わって3年。まだやりたいことの1割もできていません。
理想は、世界どこの国の街角に行ってもスシローのロゴを見かけるようにしたい。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第1話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:荻島央江、撮影:遠藤素子、バナーデザイン:今村 徹)