[香港 13日 ロイター] - センスタイムグループや北京曠視科技(フェイス++)など顔認証技術を手掛ける中国の新興ハイテク企業に、国内外から投資資金が流入している。中国は当局の監視目的と商用利用の両面から顔認証技術への需要が旺盛で、市場拡大への期待が高いためだ。

顔認証は人口知能(AI)技術を使い、両目の間隔や頬骨の形状から人物を瞬時に定することが可能。中国がカメラによる常時監視システムの構築計画を明らかにしたことが投資家の期待をあおっている。商業分野では、ATMなどのセキュリティー保護や商店の決済システムなどでの利用が見込まれる。

IHSマークイットの推計によると、中国で設置された画像監視システムは、官民合わせて昨年時点で既に1億7600万台に達した。市場規模は64億ドルと世界最大。IHSは2021年まで年12.4%の成長が続くとみている。

一方、米国の市場規模は29億ドルにすぎず、市場の伸び率も0.7%にとどまると見込んでいる。

画像監視システムの爆発的な普及で、中国では政府が電話やインターネットの統制を画像監視を組み合わせ、反体制派や活動家の取り締まりを厳しくするのではないかとの懸念が浮上している。

しかし投資家にひるむ様子は見えず、米国の著名ベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルの中国子会社などが資金を投じている。

香港と北京に拠点を置き、ディープラーニング(深層学習)技術に基づく顔認証・映像分析ソフトを制作しているセンスタイムは今月、直近の資金調達ラウンドが高い関心を集めたと発表した。詳細は明らかにしていないが、関係筋によると同社は5億ドル程度を調達する意向だ。

関係者2人によると、センスタイムは中国の鼎暉投資(CDHインベストメンツ)と組み、約4億5000万ドルを調達する方針。

国内の顔認証最大手のフェイス++は先に、直近の調達ラウンドで4億6000万ドルを集めたと発表した。調達資金はソフトからハードへの事業拡大に充当するという。

フェイス++の幹部によると、同社の技術は中国電子商取引最大手アリババ・グループ・ホールディング<BABA.N>の決済サービス「アリペイ」の顔認証機能に採用されており、警察が逃亡犯3000人以上の身柄を拘束するのに役立ったという。

この幹部はフェイス++の売上高には触れなかったが、成長率は年400%で、今年は収支が均衡するとの見通しを示した。

資金は他の顔認証技術関連企業にも流入している。

フェイス++の幹部は顔認証技術がプライバシー犯すのに利用されるのではないかとの懸念を一蹴。「われわれは技術を提供しているだけで、中立の立場だ」と述べた。その上で「携帯電話やインターネットがない時代にはプライバシーはもっと安全だった。時代は技術とともに進歩せざるを得ない」と話した。

(Sijia Jiang記者)