「SFの世界」が現実になる日

さまざまなミサイルや砲弾を操る米空軍の戦闘機パイロット。彼らが「未来の兵器」を手にする日が近づいてきた──高出力のレーザー砲だ。
11月上旬に空軍研究所(AFRL)はロッキード・マーチン社と、高出力レーザーシステムの開発について2600万ドルの契約を結んだ。2021年までに戦術戦闘機でテストを行う計画だ。レーザーの具体的な性能やテストに使う戦闘機について、ロッキードマーチンは明らかにしていない。
米国防総省はドローンの大群やミサイル、迫撃砲弾に対する防衛として「指向性エネルギー」システムに強い関心を示している。
レーザーはミサイルに比べてコストが安く、将来は兵器体系の要のひとつになるだろう。米陸軍は実戦的なテストを行っており、米海軍は2014年後半から揚陸艦ポンスでレーザー砲の試験運用を進めている。
ロッキードマーチンが開発するLANCE(Laser Advancements for Next-generation Compact Environments:次世代コンパクト・エンバイロメント対応高度レーザーシステム)は、軍用機に搭載する防衛用高出力レーザープログラムの一部を担う。
プログラムにはほかに標的を捉えるビーム制御システムとジェット戦闘機に搭載してレーザーの電力供給と冷却を行うポッドシステムが含まれ、ノースロップグルマンとボーイングが開発を手がける。
「より高出力のレーザーを、より小さな装置に搭載できるように設計を進めている」と、ロッキードマーチンのロブ・アフザル上級フェローは語る。
研究開発の大部分は、電力からレーザーへの変換効率が高く、発熱量が少ない方法を確立することだ。同社はLANCEにファイバーレーザー技術を用いる。これは複数の光ファイバーを束ねて1本の高出力のレーザービームを発射するものだ。

車載式はすでに搭載車両で試験運用

ジェット戦闘機に搭載するレーザー砲といえば、『スター・ウォーズ』を連想するだろう。しかし、米空軍のレーザーシステムは「自己防衛用」で、ミサイルやドローンによる攻撃から部隊を守るためのものだと、アフザルは強調する。
攻撃兵器として配備しても「必ずしも効率的とはかぎらないだろう」と、アフザルは言う。空軍研究所の広報担当者にコメントを求めたが、回答はなかった。
米陸軍はすでにボーイングとロッキードマーチンのレーザーシステムのテストを行っており、出力は徐々に高まっている。
ロッキードマーチンは2014年に2500万ドルの契約を結び、ロケット砲や迫撃砲、小型無人機を撃ち落すための車載式レーザー兵器を開発している。
これはHEL MD(High Energy Laser Mobile Demonstrator:高出力レーザー機動デモンストレーター)と呼ばれるシステムで、今夏には出力60キロのレーザーを搭載した車両の試験運用が始まった。
レーザー兵器は、近年の軍の主要な関心事になっている。
米空軍とボーイングは10年ほど前から、弾道ミサイルを迎撃する空中発射レーザー(ABL)システムを開発。B747-400型貨物機に化学レーザー兵器YAL-1を搭載して試験運行も行ったが、コスト面などの問題から2011年に計画は中止された。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Justin Bachman記者、翻訳:矢羽野薫、写真:Air Force Research Lab/Lockheed Martin)
©2017 Bloomberg News
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.