テクノロジーにとりつかれた世界をつくった2人だが、自分の子どもには違うものを望んでいたようだ。

ビル・ゲイツの場合

テクノロジーは、ビル・ゲイツを世界一の大富豪にした。ゲイツの3人の子どもたちも父親と同じようにテクノロジーの恩恵を受けているはず、と誰もが考えるだろう。
だが、マイクロソフトの創業者は、テクノロジーの害から子どもを守ることのほうに関心があったようだ。
イギリスの『ミラー』による2017年4月のインタビューによれば、ゲイツと妻のメリンダは、子どもたちがテクノロジーに触れる機会を厳しく制限していたという。携帯電話は14歳になるまで持たせず、夕食のときにはとりあげていたとゲイツは説明している。
「時間を決め、それ以降はスクリーンを見てはいけないとすることも多かった。うちの子たちのケースでは、そのおかげで夜更かしせずに眠ることができた」とゲイツは『ミラー』に話している。
「ご承知のように、テクノロジーは、たとえば宿題をするときや友だちと連絡をとるときには、うまく使えばおおいに役に立つ。だが、使いすぎてしまうこともある」

スティーブ・ジョブズの場合

アップル創業者のスティーブ・ジョブズも、我が子がテクノロジーに触れる機会を最小限に抑えていた。『ニューヨーク・タイムズ』のニック・ビルトンによれば、ジョブズ家もゲイツ家と同じような環境だったという。
「iPad」発売直後の記事をめぐってジョブズから苦情の電話がかかってきたときに、ビルトンはジョブズに対し、あなたの子どもたちはこの大人気の新製品をどんなふうに楽しんでいるのかと訊ねたという。
「うちの子たちは使っていない」とジョブズは答えた。「うちのなかでは、子どもたちのテクノロジーの使用量を制限しているからね」
ビルトンはこの会話をきっかけに、ほかのテック業界の巨人たちが我が子に対して設けている家庭内の制約を詳しく調べはじめた。その結果、テック業界を代表する有力者のあいだでは、驚くほど厳しい制約があたりまえのように見られることがわかったのだ。
『ワイアード』創業者のクリス・アンダーソンはビルトンに「うちの子たちは、私や妻をファシストだと言って非難する。テクノロジーのことを心配しすぎている、そんなルールがある友だちはひとりもいない、と言われるよ」と語った。
ツイッターの共同創業者エバン・ウィリアムズとその妻は「2人の幼い子どもたちには、iPadのかわりに、何百冊もの本がある(もちろん、紙の本だ)。いつでも好きな本を選んで読むことができる」と説明している。ほかにも、多くのテック系著名人が同様のルールを口にしている。

伝説の創業者たちが心配する訳

彼らはテクノロジーをつくった張本人だ。それならば、テクノロジーについてよく知っているはずだ。こうした伝説の創業者たちは、何をそれほど心配しているのだろうか。
それは、自分の子がiPadの画面に夢中で見入っているのを目にしたときに、あなたが感じるであろう不安と同じものだ。ネットいじめ、不適切なコンテンツ、スクリーンを見ている時間のせいで、もっとタメになる活動の時間が減ること。さらには、デバイスがもたらす虚ろな楽しみの依存症になる危険もある。
テック業界のパイオニアたちが、私生活では厳格なルールを設けている。
その事実は警戒心を呼び起こすものだが、何よりも気がかりなのは、彼らを駆りたてている不安の種類ではなく──昨今では、ほぼすべての親が子どものネット使用時間に懸念を抱いている──その不安の大きさだ。
現代の基準からすると、ジョブズ家とゲイツ家は偏執的にも見える厳しいルールを設けている。
だが、彼らはなんといっても、ガジェットのはたらきや、それがもたらす害の大きさをもっともよく知る立場にいる人たちだ。テクノロジーの天才ではない私たちよりも、彼らのほうが正しくリスクに対処している可能性は、おおいにあるだろう。
また『ガーディアン』が先ごろ報じたように、彼らほど有名ではないにしても、やはり大きな影響力を持つ科学技術者たちの多くも、同様の不安を抱いている。そうした技術者たちは、テック系企業のトップに比べ、現状への加担に伴う金銭的な利害関係が小さいため、より率直に不安を口にする傾向がある。
たとえば、フェイスブックの「いいね」ボタンの開発に貢献したある女性は「自身のフェイスブックのニュースフィードを消去するウェブブラウザをインストールし、自分でフェイスブックページを閲覧しなくてもすむように、ソーシャルメディア・マネージャーを雇った」という。

どのような制約を設けるべきか

こうした諸々の事実を知り、家庭内のルールを見直してみたくなった人もいるかもしれない。では、どのような制約を考えればいいのだろうか。
こちらの『ガーディアン』の記事では、さまざまなテック業界関係者の対処法が詳しく紹介されている。
厳しい制約に対する反動を避ける、子どもに衝動をコントロールすることを教える、テクノロジーの創造的な利用と受動的な消費の区別をつける、といった重要なテーマが扱われている。
ゲイツ家やジョブズ家、そのほかのテック系著名人たちの賢明さに共感し、彼らを見習いたいと思うのなら、以下のようなルールを検討してみるといいだろう。いずれも、テック業界を代表するビッグネームたちの家庭で実施されていると報じられたものだ。
● 子どもが14歳になるまで携帯電話を持たせない(一部の家庭では、その後もデータプランの使用は控えている)
● 家族の食卓での使用を禁止する
● 就寝時間のかなり前から、デバイス使用を禁じる時間を設定する
● 平日については、スクリーンを見ていい時間を厳密に定める
(年少の子どもに関しては、全面的に禁止する場合もある)
● 使用を認めるソーシャルメディア・サービスを慎重に検討する(少なくともスナップチャットであれば、若気の至りで書いたことが一生残ってしまうことはない)
● 子どもが寝室でデバイスを使うことを禁止する
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stlllman/Contributor, Inc.com、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:Yalana/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.