2018年には東南アジア全体で展開

東南アジア最大規模の配車アプリを提供する「Grab(グラブ)」が、シンガポールで新たにモバイルウォレットサービスを開始した。これにより同社は、この地域で急速に増えつつあるモバイル決済の分野に参入することとなった。
Grabは11月1日から、シンガポール国内のユーザー400万人が国内各地のホーカーセンター(屋台村)でチキンライスやエビ麺などの地元料理を食べるときに、QRコードをスキャンした支払いを可能に。「GrabPay」での支払いを受け入れる小規模店舗の数を、現在の25店舗から12月末までに1000店舗に増やす計画だ。
グラブは設立から5年のスタートアップ企業だが、東南アジアではウーバー・テクノロジーズより規模が大きい。
タクシーや自家用車の予約、レンタカーの手配、シャトルバスサービスなどに業務を拡大してきた同社は、配車サービスでの成功を糧により利益の大きい決済市場に手を広げたい考えだ。
共同設立者のタン・ホイ・リンによれば、2018年には東南アジア全体でモバイルウォレットサービスを展開する計画だという。
タンはシンガポールで行われたインタビューで「配車サービスでの展開と同じことだ。立ち上げたときは誰も知る人はおらず、人々はまず試してみる必要があった」と述べている。「それと同じことをGrabPayでもやるわけだが、実際はもっと速いペースになる。すでにユーザー基盤があり、信用と技術もあるからだ」

インドネシアでは壁に突き当たる

グラブは、シンガポールにおけるモバイル決済プラットフォームでトップに躍り出ようとしている。シンガポールでは、この分野を独占する企業がいないのだ。
ペイパル・ホールディングス(Paypal Holdings)の報告によると、シンガポールで現金が好まれる割合は、以前からアジア太平洋地域の平均より高いという。
DBSグループ・ホールディングスやVISAをはじめとする企業は、小規模な現金商売の商店に対して、キャッシュレス決済を採用するよう勧めている。
シンガポールでは決済業務を拡大しているグラブだが、インドネシアでは壁に突き当たった。インドネシア中央銀行が、オンラインサービスプロバイダー向けのライセンスのない残高補充機能を一時停止にしたのだ。
そのため、グラブは10月16日以降、ユーザーが自分のGrabPayに残高を補充する機能を止めざるを得なくなった。グラブは現在、中央銀行と解決策を探している。
「インドネシア中央銀行は、エコシステム全体を見ている。それが大切なことであることは理解しているので、われわれも彼らと緊密に連携をしている」とタンは述べた。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Yoolim Lee記者、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:cougarsan/iStock)
©2017 Bloomberg News
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.