習いごとの若年化。過熱する、未就学児の“奪い合い”

2017/11/11
夏盛りの7月某日、埼玉県所沢市の少年野球チーム・西富ファイターズの練習を見にいくと、“野球消滅”を象徴するような光景が広がっていた。
小学生の全選手15人に対し、シルバー世代も含めて大人のコーチが9人もいる。10年ほど前から選手集めに苦しみ、6年生の試合に3年生を起用しなければならないほどだという。
パイオニアで社会人野球選手としてプレーし、5年前からボランティアでファイターズを指導する新井貴久コーチ(45)は時代の変化を身にしみて感じている。
「昭和の頃と比べてサッカーをやる子が多くなり、幼稚園で気軽な遊び感覚でサッカーを教えるようになりました。でも、野球は教えられていません。そうすると親がやっている子くらいしか、入ってくる機会がなかなかないですよね」
未就学児や小学校低・中学年の習いごとを見ると、低年齢時に始めたものをそのまま継続している傾向がある。
未就学児の親は「何か運動をさせたい」と体操教室に通わせ、小学校に入ると子どもが特定の競技を選択していく傾向がある
競技団体がパイを拡大するためには、子どもたちにいかに早いうちから取り組ませるかが、未来を見据えたときのポイントになる。
「昔は小学生からスポーツを始めたと思いますけど、今はその下に未就学児という市場ができました。一方、野球界は小学校、中学、高校、大学と横串に統括組織があり、対象外の未就学児には誰もアプローチできていない。野球人口減少には、そういった構造的な問題もあると思います」
侍ジャパンの元関係者は、一つになれない野球界の弊害を指摘する。野球界全体を俯瞰して見る組織がないために、未就学児という新たなマーケットにリーチできず、時代の変化に取り残されているのだ。
未就学児をめぐる教育ビジネスでは、激しいシェア争いが繰り広げられている。2歳から小学生を対象に、運動神経・能力の向上を目的としたスポーツ・体操教室のオールアルビレックス・スポーツクラブを運営する菅野文宣・代表理事が説明する。
「子どもの習いごとはどんどん若年化しています。例えば小学生を中心に運動指導しているところは、新たなマーケットを求めて高齢者を対象にするようになりました。現在は高齢者だけではなく、未就学児もターゲットになっています。子どもの取り合いはかなり激しくなってきた印象ですね」
オールアルビレックス・スポーツクラブに通わせるのは教育熱心の親が多いという