2030年までに交通量の25%をドライバーレスに

ドバイの青空の下、超モダンな高層ビルが銀色に輝いている。そこに突然、真っ白いヘリコプターが浮かび上がった。ただし普通のヘリコプターほどうるさくないし、巨大なプロペラをつけているわけでもない。
ドイツ製の「ボロコプター(Volocopter)」は、定員2名のパイロットレス・ヘリコプター。あるいはドライバーレスのタクシー。ドバイはボロコプターを「空飛ぶタクシー」として運用することを目指しており、9月25日に初の公開飛行試験を行った。
ボロコプターは、小さなネズミが大きな冠をかぶった姿に似ている。4本足の付いたキャビンの屋根には、直径6.7メートルほどのリングが乗っていて、そこに18個のミニローターが付いている。
試験の動画を見ると、無人のドローンは垂直離陸すると高度200メートルほどまで上昇して、5分ほど飛行すると、ゆっくりと垂直に降りてきた。
ドバイは2030年までに交通量の25%をドライバーレスにすることを目指している。今回の実験はその交通改革に向けた重要な一歩だ。
ただ、ドバイは世界の大都市と比べて、特別渋滞がひどいわけではない。デジタル地図サービスの大手トムトムが作成する「トラフィック・インデックス」最新版(今年2月発表)によると、ドバイは交通渋滞がひどい街のランキングで85位だ。
だが、交通イノベーションのハブになるというドバイの決意は固い。「イノベーションを推進して、最新テクノロジーを採用することは、国内の開発に役立つだけでなく、未来への橋渡しになる」と、ドバイのハムダン皇太子は断言する。

スタートアップから大手まで「ミニ飛行機」開発

ドバイは中国のドローンメーカーEHang(億航)との協力も進めてきた。今年3月には、エアタクシーの送迎がこの夏にかけて始まると発表していた(が実現しなかった)。
ボロコプターのプロトタイプは、フル充電まで2時間、飛行時間は約30分。スピードは時速50キロだが、最高100キロ程度まで出る。安全のため、予備のバッテリーシステム、プロペラ、モーター、操縦装置、そしてパラシュートを装備する。
メーカーのe-volo社は、2018年にはベロコプターの市販を開始する予定という。価格は明らかにしていない。
とはいえ、実際にタクシーとして運用するには、クリアしなければいけない問題がたくさんある。ドバイの道路交通局(RTA)は、自律飛行タクシー(AAT)の運用に向けて、安全基準や航路、離陸・着陸地点など多くの規制を設けるとしている。
すべてが順調に進めば、ユーザーはアプリを使って近隣の「ボロポート(voloport)」からの乗車をリクエストできるようになる。各ボロポートから地下鉄、トラム、船など一般の交通機関に乗り換えらえるようになる予定だ。
現在開発が進んでいる垂直離着陸(VTOL)式の旅客ドローンは、ボロコプターだけではない。エアバスがシリコンバレーに置いているドローン開発部門の「A3」は、シングルシーターの「バーハナ(Vahana)」を開発中だ(NP注:エアバスの「A3」の3は上付き文字)。
これは約80キロ飛行できる予定で、エアバスはタクシーとしてだけでなく、輸送用や緊急用としても運用可能としている。年内に最終プロトタイプの飛行試験をオレゴン州で実施する計画だ。
ウーバーも独自の空飛ぶクルマの開発に取り組んでおり、2020年の試験開始を目指している。
グーグル創業者のラリー・ペイジは、スタートアップのキティホーク(Kitty Hawk Corp.)に1億ドル投資している。同社の「フライヤー(Flyer)」は、いわば空飛ぶオートバイで、足元に車体を取り囲むようにネットが張ってあり、その下にローターが付いている。
ただし、フライヤーは水上での離着陸を想定したもの。オートバイのように操縦するタイプで、米連邦航空局(FAA)からは超軽量飛行機と分類されている。だからパイロットの免許は不要。年内にも発売を予定している。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Sara Clemence記者、翻訳:藤原朝子、写真:Volocopter、Nikolay Kazakov)
©2017 Bloomberg News
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.