自動運転サービスの2020年までの社会実装を目指した実証実験が、9月2日(土)に全国に先駆けて栃木県にある道の駅「にしかた」において開始された。順次、全国13箇所で開始され、社会実装に向けた具体的な検討がされていく。

過疎化・高齢化する地方で人流・物流の足として期待

国土交通省は、中山間地域における自動運転サービスの実証実験を開始した。全国で初めてとなる実証実験は9月2日〜9日まで道の駅「にしかた」(栃木県栃木市)にて行われ、自動運転のために必要な道路状態や環境、地域への導入効果などを検証する。
9月2日の実証実験開始式には石井啓一国土交通大臣や茂木敏充経済再生担当大臣も参列。
この実証実験は、主に高齢化が進む中山間地域における人流・物流の確保のために、全国に1117箇所ある道の駅(4月現在)を活用し、そこを拠点として行政エリアや病院、住宅地などを結ぶ自動運転サービスを検証するものである。
ビジネスモデルとしての具体化に向けたフィージビリティスタディ(机上検討)を行うため、国交省は今回の「にしかた」を含む5箇所を地域指定型として全国から選定、順次実験をスタートさせる予定だ。またその後は、公募によって決められた地域8箇所でも検証が行われる。
国交省では自動運転戦略本部を昨年12 月に設置して自動運転実現の加速化に取り組んでいるが、今回の実証実験はその一環。また政府が進める成長戦略、未来投資戦略の5つの柱のなかには自動走行やドローンによる「移動革命の実現」があり、政府としても自動運転サービスの社会実装は重要項目となっている。
道の駅「にしかた」での実証実験ルートは走行延長約2㎞で、農産物直売所を併設する道の駅を中心に、図書館や公民館を併設する栃木市役所西方総合支所と、それとは反対方向にある集落前とを結ぶ片側1車線道路を使用する。
期間中は一部交通規制され、乗客あり・なしでさまざまな検証が行われる。具体的には、路面上に収穫藁や落下物に見立てた物体、ポストコーンなどで路側の障害物を再現したり、歩行者との混在空間での走行を確認する。
また停留所での乗降・発進時の運用方法についても検証し、配送実験では、集落からの注文を受けて道の駅から商品を届けたり、農家から道の駅への出荷物の納品などを想定した自動運転車の活用も検証する。
DeNA「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」
今回の実証実験に使用している車両はディーエヌエーの電動無人運転バス「ロボットシャトル」で、あらかじめ規定ルートを走行してデータ取得しておけばGPSやレーダー、カメラによって以降は無人で走行できる車両自立型の自動運転車である。
乗車定員は着席6名、立席6名で最大速度40㎞/h。ただし実証実験では乗員は10名程度、時速は10㎞/hで運用する。
ロボットシャトルは、フランスのベンチャーEASYMILE社のEZ10という無人運転バスを使用した交通システム。車体は前後の区別なく走行し、車内にはハンドルや運転席がなく3人掛けベンチシートが両サイドに備わっている。
実験中は緊急時のために係員が乗車するが、本来はカメラによる監視システムと運行状況確認システムにより、呼び出しがあれば車両を向かわせ、終われば自動運転ステーションに戻すなどの運用を遠隔地から行うことも可能となっている。
なお、今後開始される実験地域では高精度3次元地図を用いた車両や、路面に引かれた電磁誘導線を感知して規定ルートを走行する車両なども使われる予定だ。警察や行政では高齢者ドライバーによる交通事故の増加を理由に運転免許証の自主返納を推奨している。
自車位置はGPSとホイールの慣性計測装置で計測。走行時の障害物は車体四隅にある障害物検知用レーザーレーダーが360度全方位をカバーし、マッピングデータと差異があれば自動停止する。乗車定員12名、最高時速40㎞/h、一充電あたりの走行時間は最長10時間。
しかし、公共交通網の整っていない中山間地域では日々の買い物などで生活の足がどうしても必要になるし、物流危機が叫ばれる最近では宅配便や農産物の集出荷など物流の確保も重要な課題だ。
こうしたものを無人の自動運転車に置きかえることができれば確かに高齢者による交通事故防止や物流の効率化に効果はあるだろう。
社会実装実現には運用コストや採算性がいずれ問題になるだろうが、いまはこうしたサービスの社会的効果や安全性を確認することが重要である。

その他の実験車両

ヤマハ発動機(乗用車タイプ)
埋設されたマグネット(電磁誘導線)からの磁力を感知して規定ルートを走行する路車連携型。定員4〜6人程度。速度は自動時で〜12㎞/h程度、手動時は20㎞/h未満。
先進モビリティ(バスタイプ)
GPSと磁気マーカー、ジャイロセンサーによって自車位置を特定して規定ルートを走行する路車連携型。定員20人。速度35㎞/h程度(最大40㎞/h)。
アイサンテクノロジー(乗用車タイプ)
事前に作成した高精度3次元地図を用いてLIDAR(光を用いたレーダー)で周囲を検知しながら規定ルートを走行する車両自立型。定員4名。速度40㎞/h程度(最大50㎞/h)。