時価総額3000億円突破。帝国化するライザップの真実

2017/10/2

売り上げは昨年の176.7%

RIZAP(ライザップ)が破竹の勢いで成長している。
2017年3月期の売上高は、前年比76.7%増の953億円。2012年の100億円超から6年で9倍以上も伸びた。
時価総額は3064億円に達し(2017年9月27日現在)、昨年末の3倍に急騰している。
瀬戸健(せと・たけし)社長は、中期経営計画で「2020年には連結売上高3000億円、営業利益350億円」をぶち上げる。
RIZAPといえば、特徴的な音楽とともに衝撃的なビフォア・アフター画像を見せるあのCMで一躍有名になった。
だが現在は、ジム運営など主力の美容・健康関連事業は売上高の38.4%にとどまる。
積極的な買収により、連結子会社の数が今や51社に及ぶからだ。
ジーンズの専門店「ジーンズメイト」、女性向け衣料品ネット通販「夢展望」、繊維専門商社の「堀田丸正」。
インテリア雑貨小売の「パスポート」「イデアインターナショナル」、ゲームやボウリングなど娯楽施設を運営する「SDエンターテイメント」──。
ライザップ傘下のこれら企業の株は「ライザップ銘柄」と呼ばれ、今夏、暴騰。夢展望に至っては一時、年初の8倍以上の株価を記録し、個人投資家の間で話題となった。

「アジアのLVMH」を目指す

「結果にコミットする」がうたい文句のRIZAPメソッドの横展開も拡大中だ。
ゴルフのスコア向上を約束する「RIZAP GOLF」、TOEICのスコアアップにコミットする「RIZAP ENGLISH」、短期間で料理上手に育てる「RIZAP COOK」──。
マンツーマンによる徹底指導がウリの“メンタリング・ビジネス”は、子どもの運動指導を手がける「RIZAP KIDS」にまで、発展中だ。
もっとも、アパレルやインテリア雑貨会社、「ぱど」や「日本文芸社」などメディア企業、はたまた、「タツミプランニング」といった建築会社にまで至るM&Aは、「脈絡がない」との批判もある。
しかし、その一見バラバラに見える子会社群も、瀬戸社長のアタマの中では、「自己投資産業」という括りで、まとまっているようだ。
大胆にも「アジアのLVMH(ルイ・ヴィトン・モエヘネシーグループ)になる」と言ってのける。
RIZAPグループ 瀬戸健(せと・たけし)社長
その真意について、特集1回目、2回目で配信するロングインタビューで瀬戸社長はこう語る。
「アパレルでも、雑貨でも住宅リフォームも同じ。自己肯定感を高めてくれる商品やサービスを求める人はたくさんいて、そのマーケットはとてつもなくデカい」
人間に自己実現したいという願望がある限り、それを満たす産業の可能性は無限大──。
瀬戸社長の「RIZAP帝国」への野望は尽きることがない。
では、その野望の原点はどこにあるのか? そして、「アジアのLVMH」という結果にコミットするためのシナリオとは? 本特集を通してその全貌に迫る。

SB、ユニクロから来た幹部

具体的な特集ラインナップは以下のとおりだ。
特集1回目、2回目は1時間55分に及んだ瀬戸社長のロングインタビューを余すところなくお届けする。
落ちこぼれだから出来た。「結果にコミット」というビジネス
企業ビジョンである、「『人は変われる。』を証明する」の原点となった瀬戸社長の落ちこぼれ時代のエピソードとは。
マンツーマンで顧客に寄り添う「メンタリング・ビジネス」発明秘話も明かされる。だが、瀬戸社長は「ビジネスモデルなんてすぐコモディティ化する」とサラリと語る。その意味するところとは?
また、多様な業種におよぶM&Aの狙いとは。現在は、業績不振の割安な会社を買い、“RIZAP流再生メソッド”を駆使して、黒字化する戦略がベースだが、今後大型買収をしかける計画はあるのか、などについて直撃した。
50社を超えた子会社。「アジアのルイ・ヴィトン」を目指す理由
特集3回目は、M&Aをし、短期間で黒字化を遂げた「夢展望」「マルコ」「パスポート」の3社の再生請負人が登場する。
瀬戸社長は、M&Aをした企業の旧経営陣、従業員と共に改革する方針を貫く。
また、再建を手がける社長のやり方には一切口を出さず、大胆に任せるという。
「当たり前のことを、当たり前のようにすれば会社は成長します」(瀬戸社長)
では、その再生手法とは。豊富なグラフィックと共に解説していく。
4回目は、ジーンズメイトの改革をリードするユニクロ出身の3人に、同社の復活シナリオについて聞いた。
2016年10月までファーストリテイリングのCIOを務めた岡田章二氏。レナウンを経てユニクロに入社し、アテネオリンピックのユニフォームやジル・サンダーとのコラボ商品の開発を手掛けた“伝説のパタンナー”宇山敦氏。エドウィンを経てユニクロに移り、ユニクロのデニムブームを作った“ジーンズの魔術師”高橋慎二氏。
彼らは、どのような作戦を駆使して、ジーンズメイトを“第二のユニクロ”に育てようとしているのか。その中身をリポートする。
5回目には、一橋大学楠木建教授によるRIZAPの分析記事を掲載する。
楠木教授によると、企業は大きく分けて、外部環境の機会の拡大に乗る「オポチュニティ企業」と、企業内部の価値の質向上により稼ぐ「クオリティ企業」の2つに分けられるという。
そして、RIZAPという事業だけをみると、典型的なクオリティ企業のそれだ、と語る。しかし、グループ全体でみると、オポチュニティ企業の面もある。事業レベルとコーポレートレベルの経営の間にギャップがあるようにも見える。では、楠木教授は瀬戸社長の経営手腕をどう評価するのか。
【論考】楠木建、ライザップの戦略ストーリーを解析する
6回目は、ユニクロから移籍したITエンジニア2人に、RIZAPの「結果にコミット」の打率をさらに引き上げるという、ビッグデータ、AI活用術について聞いた。
7回目は、かつてソフトバンクの孫正義社長の「右腕」として、米スプリントの買収や「ソフトバンク新30年ビジョン」の策定を主導したRIZAP幹部の鎌谷賢之氏をフィーチャーする。
瀬戸社長は孫正義社長をロールモデルにしているが、2人の共通点とは? そして、孫正義社長の右腕から瀬戸社長の懐刀に転じた理由とは。
特集の最後を飾る8回目には、堀江貴文氏のインタビューを掲載する。
同じ福岡県出身で、サラリーマン経験のない根っからの起業家。ライブドア時代、積極的なM&Aを展開した堀江氏と瀬戸社長は重なる部分も多いが、堀江氏は瀬戸社長やRIZAPという“帝国”をどのように評価するのか。
【堀江貴文】ライザップを体験してわかった「急成長の本質」
また、番外編として、記者自ら、料理教室「RIZAP COOK」、英語塾「RIZAP ENGLISH」を体験したリポートを掲載する。
(デザイン:九喜洋介)