(Bloomberg) -- みずほフィナンシャルグループは日本株のトレーディング業務で、アルゴリズム取引に人工知能(AI)を導入、サービスを開始することが分かった。来年1月から欧州で施行される第2次金融商品市場指令(MiFID2)を前に、世界の金融機関はビジネスの差別化を狙う。

複数の関係者によれば、みずほ証券は今月から、資産運用会社、銀行、生保、ヘッジファンドなど日本を含むアジアの一部の機関投資家に、個別企業の株価が30分、1時間後にどう動くかを予測するAI機能を組み込んだ取引システムを提供する。年内には数百の法人顧客に対しサービスを展開する計画だ。これら関係者は非公開情報だとして匿名で語った。

欧州連合(EU)の金融・資本市場の規制であるMiFID2では、透明性の向上を目指してリサーチ費用を分離し、トレーディングに支払うコミッションと区別することが求められていて、調査と売買執行における質の向上と、付加価値による他社との差別化が課題となっている。

関係者によれば、みずほ証はTOPIX500の日本企業とJリート(日本版不動産投資信託)を対象にする計画で、その後はTOPIX1000と東証マザーズに、将来的には東証1部、2部の全銘柄に拡大することを検討している。

インスティネット・パシフィックのパトリック・モー氏(香港在住)は、「MiFID2においては、顧客は彼らが受けている執行サービスがベストであることを示すことが求められていて、そのことはセルサイド間でのイノベーションを加速させている」と語った。

ディープラーニング

同社のAIシステムには、各銘柄ごとに約5000種類の情報やデータが入力されている。買い注文や約定の詳細などの板情報、株価のヒストリカルデータやニュースの出現頻度、またドル・円相場や金、石油の価格動向などデータを使い、気付くことのできない事象や違和感などといったアノマリーや法則、周期性を見つけ、将来の株価を予測する。

機関投資家にとってはこうしたAIを搭載したアルゴ取引システムを利用することで、市場で有利な価格で約定できる見通しだ。みずほ証では今回のサービス開始に先立ち、5月から8月の4カ月間で、毎月約500件(300億円相当)の取引を実施、有効性を検証。その結果、運用成績はAIを使わない場合よりも0.01-0.017%改善したという。

ディープラーニングを使った株価の予測、それに基づくアルゴ取引への応用で特許を出願中だという。みずほ証の三枝浩紀広報担当は、AIの導入の詳細についてコメントを控えている。

AIチーム

みずほ証は2015年からAIチームを組織し、コンピューターサイエンスなどの分野で博士号を持つスペシャリストなどを外部から起用して開発を行ってきた。現在はアルゴ設計の専門家を合わせ10人程度がディープラーニングを使った最先端のAIによる株価予測に取り組んでいる。

日本株業務においては、MiFID2の施行に先駆け、大和証券グループ本社、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、シティグループ、BNPパリバといったグローバル金融機関がリサーチ業務などの質の向上に取り組んでいる。

みずほFGの株価は21日、2.3円(1.2%)高の198.2円と、7月26日以来の高値で取引を終えた。

(更新前の記事は副見出しと第7段落の改善率を訂正済みです)

英語記事:Mizuho Is Said to Offer AI Trading Before MiFID Overhaul (1)

(第5段落にコメント、11段落に株価終値を追加しました.)

--取材協力: Viren Vaghela

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