[東京 1日 ロイター] - 金融庁は、足元で残高が増えている銀行カードローンについて、実態把握のために立ち入り検査を行なうと発表した。専用ホットラインで利用者からの情報も受け付ける。問題のある銀行にはカードローンに関する業務運営の適正化、審査の厳格化を促す方針。法曹界や政界からは総量規制の導入を求める声が出ているが、金融庁内には慎重な意見が目立つ。

日本弁護士連合会の要請を受け、金融庁は昨年末から銀行への聞き取り調査を実施。そのなかで、「一部の大手行では貸出のロットが大きかったり、地方銀行の中には審査を外部に丸投げしたり、銀行の利益優先でカードローン残高が増えているなどの問題が見受けられた」(金融庁幹部)という。

金融庁は、立ち入り検査に切り替えることで、業務運営の実態をさらに詳しく把握し、早期に多重債務の発生抑止や利用者保護の徹底につなげたい考え。

立ち入り検査は月内に開始する。金融庁は対象となる銀行名を明らかにしていないが、カードローンの貸出残高が多い銀行や融資姿勢の厳格化に疑問が残る銀行などが対象になるもようだ。第一弾として10行程度の検査を実施し、問題の根が深いと判断すれば対象を拡大する可能性もあるという。

検査では、1)過剰な貸し付けを防止するための融資審査体制が構築できているか、2)保証会社の審査に過度に依存していないか、3)融資を実行した後、定期的に顧客の状況の変化を把握しているか、4)配慮に欠けた広告宣伝を行なっていないか、5)過度のカードローン推進を促すような支店の業績目標や行員の業績評価体系になっていないか――といった点が重点的に検証される。

<総量規制には慎重>

日銀によると、国内銀行の6月末時点のカードローン貸出残高は前年同期比8.6%増の5兆6793億円で、1998年以来19年ぶりの高水準となった。銀行カードローンは貸金業法の総量規制の対象外で、多重債務の温床になっているとして政界や法曹界から規制の導入を求める声が出ている。

金融庁では、総量規制の導入に慎重な声が目立つ。ある幹部は「総量規制は短絡的ではないか」と疑問を呈す。銀行カードローンの借り手が、調達した資金を遊興にばかり費やしているわけではなく、例えば中小の事業者が当座の運転資金を得るために銀行のカードローンを利用しているケースもあり、「ローンの残高を数値だけ眺めるのではなく、何に使われているかも見極める必要がある」と指摘する。

麻生太郎金融担当相は1日の閣議後会見で、総量規制について「(議論が)詰まっている段階ではない」とし、今回の実態調査を踏まえて規制が必要か検討する考えを示した。

*内容を追加しました。

(和田崇彦)