ハリウッドの“イノベーター”ノーランの新作『ダンケルク』を見ずに2017年は終われない
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注目のコメント
ロンドンでも本作が話題となっていました。「ダンケルクの戦い」を知らなくても十分楽しめますが、できればちょっとだけでも予習していくと、映画の奥深さをよく理解できるのではないかと思います。
映画というのは、映画館で観るべき映画と、TVやタブレットでも楽しめるものと2つの種類があるように思います。
その意味でいけば、「ダンケルク」こそ、間違いなく映画館で観るべき映画です。
光や音の明暗、主観的に切り取られた空間、お互いにシンクロしながら微妙に別の時間軸を進むストーリーなど、計算され尽くした舞台は、なんの説明もないにもかかわらず、観るものを脱出不可能な包囲網の絶望感へと誘います。
説明がかった一言の台詞もなく、圧倒的な敵の姿どころか、ドイツ兵1人、戦車の一台も登場しないにも関わらず、観るものに、これほどまでに重苦しいばかりの閉塞感、絶望感を与える映像を演出できるのは、まさにクリストファー・ノーランの真骨頂。この感覚はやはり映画館でしか味わえないように思います。
史実のダンケルクの戦いでは、英米連合軍30万人が辛うじてドイツ軍の包囲網から脱出することに成功しましたが、そこには輝かしい勝利はなく、また映画においても、いかにも映画的な英雄的戦いも、勝利のカタルシスさえもありません。
3人の主人公が、それぞれ自分が生きること、人を生かすことだけを考え、決して屈せず、生き抜いたことだけが淡々と綴られているのです。
そして、終盤の有名なチャーチルの演説に被せて、彼らの一人一人の戦いの意味を暗示するラストは、観る観客に静かな、しかし確かな共感を与えることでしょう。
今回は、NewsPicks様のご好意で、先行特別試写会にご招待いただきましたが、久々に凄い映画を見たというのが正直な感想です。
ノーランファンの1人として、是非今回はオスカーをとって欲しいと思いますし、その栄誉に値するだけの作品だと思います。大好きなクリストファー・ノーランの新作ということで、今回は原稿まで書いちゃいました。
これまで摩訶不思議な設定が多かった監督が、今回はじめての史実に挑戦。しかも題材は戦争……。
「えーっ」と思ってる方が多いと思いますが、見れば「やっぱり僕の(私の)信頼するノーランだった!」と納得すること間違いなし。いつもどおり、時間を巧みに操ってハラハラドキドキさせてくれます。
あと、これはデートムービーです。異性に対する不信感が描かれないぶん、『インセプション』よりもデート向きなくらいです(笑)。見た方、見たい方、ぜひネタバレなしでコメントくださいね。