[東京 21日 ロイター] - 東芝<6502.T>の監査を担当しているPwCあらた監査法人の木村浩一郎代表執行役は21日、ロイターの電話インタビューに応じ、東芝の財務諸表への限定付適正意見について「非常に異例であり、法人内で慎重に検討した」と述べた。

限定付ながら適正意見を得たことで、東芝は上場廃止をいったん回避。監査の過程で、政治家や金融庁から何らかの「圧力」や「指摘」、「指示」があったかとの質問には「一切なかった」と述べた。

東芝は、2017年3月期の有価証券報告書を10日に関東財務局へ提出。あらた監査法人は、財務諸表には限定付適正意見を付ける一方、内部統制には不適正意見を付けた。

監査法人の監督官庁である金融庁は、あらたが限定付適正意見を出すことを容認したかとの質問に、木村代表は「私たちの判断に対して、(金融庁は)事前に良いとか悪いとかは言わない」と話した。

あらた監査法人は監査報告書で、東芝の米子会社だったウエスチングハウスが2015年末に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)社の損失認識時期を問題視したが、財務諸表に不適正意見は付けなかった。

木村代表は「今回の事象は、PL(損益計算書)には影響しているがBS(貸借対照表)には影響していない。東芝の連結財務諸表全体を見たときに、(S&Wの損失認識時期は)確かに重要だが、全体が信頼できないという結論に至るほどのものか、財務諸表の理解に不可欠な要素と言えるのか、慎重に検討した」と説明した。

一方、東芝の内部統制については、S&Wの損失認識について検証するシステムが適切に運用されていないとして、不適正意見を表明した。

木村氏は「17年3月期について、WHの内部統制に問題があったという言い方はしていない。連結財務諸表に誤りがあり、財務諸表を支える内部統制にも不備があると判断した」と述べた。

内部統制監査報告書に記載されたのが、米連邦破産法の適用を申請したWHに限定されたことで、東芝の綱川智社長は10日の会見で「(内部統制の)不備の可能性はなくなった」と言明した。

木村代表は、今後の内部統制監査報告書については「監査をしてみないとわからない」と述べるにとどめた。

WHが買収したS&Wにおける損失の認識時期に異論を唱えることで、あらた監査法人は、東芝の監査を16年3月期まで担当した新日本監査法人の判断に異議を差し挟む格好になった。

木村代表執行役は「限定付適正意見の理由を説明しようとすると、前期に問題があったと言わざるをえなかった。過去の財務諸表に異論を唱えるのが本旨ではない」と釈明した。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)