(Bloomberg) -- 日本と欧州連合(EU)は6日、経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意したと正式に発表した。発効すれば国内総生産(GDP)で世界の約3割を占める経済圏が誕生する。7日にドイツ・ハンブルクで開幕する20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、日欧が自由貿易推進の立場を鮮明にした形だ。

安倍晋三首相は日EUのEPAは「自由で公正なルールに基づく、21世紀の経済秩序のモデルとなる」と強調。ユンケル欧州委員長は2019年の早い時期の発効を目指す考えを示した。両氏はブリュッセルで行った定期首脳協議後の共同記者会見で語った。

安倍政権が成長戦略の柱と位置付けていた環太平洋連携協定(TPP)は、トランプ米政権の離脱で11カ国による発効に向けた交渉を余儀なくされている。首相にとってEUとの合意は外交成果となり、共同記者会見では「保護主義的動きの中、日EUが自由貿易の旗を高く掲げるとの強い政治的意思を示すことができた」と語った。
 
双日総合研究所の吉崎達彦チーフエコノミストは「保護主義への流れができかかった時に、日本とEUという大きな経済圏がEPAを結ぶというのは大きい」と指摘。日本が進める11カ国でのTPP交渉にとっても、秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに成果を得るための「大きな後押しになることは間違いない」と語った。

日本、シンガポールなどの11カ国は12日から神奈川県箱根町でTPPの首席交渉官会合を予定している。

自動車

日本政府が6日公表した資料によると、EUは日本製乗用車への関税(現行税率10%)を8年目に撤廃。自動車部品への関税(乗用車タイヤで4.5%など)も貿易額ベースで92.1%を即時撤廃することで合意した。

日本側にとっては乗用車、自動車部品など鉱工業製品の関税撤廃が課題となっていた。競合する韓国はEUと自由貿易協定(FTA)を結んでおり、乗用車の関税は撤廃されている。財務省の貿易統計によると、日本がEUに輸出している自動車は16年度で約1.25兆円(うち乗用車が約1.23兆円)、自動車部品は約4800億円。

農産物に関しては、欧州産のソフト系チーズについて関税割当枠を設けて段階的に引き下げ、16年目に無税とする。枠の数量は初年度が2万トン、16年目が3万1000トン。

安倍首相は共同記者会見で、大枠合意を踏まえ、「できる限りの総合的対策を実施する」と表明。必要な国内体制の整備や対策の策定を石原伸晃経済再生担当相に指示する考えも示した。

(正式発表を受け、見出し、第1、2、3、6、8、9段落を更新します.)

--取材協力: Isabel Reynolds 、 鈴木克依

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