(Bloomberg) -- 日本企業の取締役会は何十年も、経営者が引退後も顧問や相談役として会社に残り、高い報酬をもらいながら影響力を保持し続けるのを株主に詳しい説明もないまま許してきた。元経営者にとっては割の良い、こうした引退劇はもはや保証されないかもしれない。

医薬品メーカーで日本最大手の武田薬品工業は今月、日本企業としては異例な内容の書簡を株主に送り、相談役に就任予定の長谷川閑史会長について、月額報酬はあるものの賞与や長期インセンティブ報酬はなく、年間報酬額が現在の約12%程度となるほか、社用車や専任秘書を置かないと説明。さらに、長谷川氏が既に同社の事業判断に「もはや」関与していないほか、相談役就任後も現役の経営陣がアドバイスを求めるケースはあるとしても「ごくまれ」と指摘した。

株主にこのような詳細説明を行う日本企業は創業236年の武田を含めてまだ数少ないとしても、他社も恐らく追随していくことになるだろう。政府は今夏、上場企業の社長や最高経営責任者(CEO)が相談役・顧問に就任した場合に役割や待遇をチェックできる情報開示の規則を設ける方針だ。また、実際に透明性を求める株主は増えている。

武田の長谷川氏(71)に関する書簡について、EY総合研究所の上席主任研究員、深澤寛晴氏は「このような説明がされるのはかなり珍しい」と評価。株主が知りたい内容を簡潔に記し、歓迎できるとの認識を示した。また、「一般論として一番分かりやすいのは相談役を置かないこと」とした上で、「置くのであればきっちりとディスクロージャーをする」ことだと述べた。

既にこうした慣行をやめた大企業もある。ソニーは2006年、東京電力ホールディングスは12年にそれぞれ顧問制度を廃止した。武田も実は04年半ばから顧問・相談役は存在しない。しかし、長谷川会長が相談役に就任する予定となり、説明を求められた格好だ。

武田が長谷川氏に関する書簡を出したのは、株主15人程度のグループが相談役就任などに異議を唱えたためだ。同書簡でクリストフ・ウェバー社長兼CEOは、長谷川氏の役割に関して懸念する株主や投資家がいるのを承知していると記し、同氏の役割の大部分は「経済同友会など外部団体の役職のうち、より公共性・重要性が高いと判断されるものについて、その任期終了まで、引き続き当社を代表してその任務にあたる」として、株主に理解を求めた。

武田広報担当の小林一三氏は、株主提案の議案は28日開いた年次株主総会で否決されたと電話取材に答えた。また、長谷川氏が同提案を真摯(しんし)に受け止め、懸念が現実のものとならないよう努めると総会で述べたとも説明した。

同社は9人で構成する取締役会メンバーのうち、5人を社外取締役にする予定。また4人を外国人メンバーとし、日本企業としては異例の構成となる。

原題:Japan’s Corporate Chiefs Face Scrutiny Over Retirement Gigs (1)(抜粋)

(第7段落に株主総会の詳細を追加しました.)

: Tokyo 蒲原桂子 kkambara@bloomberg.net.

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