食糧問題の解決には、再生可能エネルギーの視点が不可欠だ
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本日お伝えしたかったことは、以下の3点です。
・4月にポテトチップスが販売休止となったように、気候変動は既に私たちの身近なところで影響が現れている。
・食べ物が私たちの口に入るまでに、膨大なエネルギーと水が投入されている。
・持続可能な農業には、省エネだけではなく創エネの視点も必要である。
本日は、サッシャさんと寺岡さんの素晴らしい振りとフォローにより、私の拙い解説を分かりやすく、伝わりやすくして頂きました。ありがとうございました。ラジオでご説明できなかったことを以下に記載させて頂きます。
<補足>
一般的に牛肉1kgを作るためには、20kgの飼料と、20.6tの水が必要だとされています。飼料(トウモロコシや大豆)の栽培には、野菜栽培よりも農薬や化学肥料が多く使われます。特に日本の畜産は、牛や豚などのエサとなるたくさんの飼料穀物を輸入しているので、さらに環境負荷が高いといえます。
一方、植物肉の原料である大豆1kgの生産に必要なエネルギー投入量は牛肉の1/10、水は1/8と、家畜の飼育よりも大幅に少ないため環境に優しいとされています。
また、フェイクフードだけではなく、AgTech(農業×テクノロジー)やバイオテクノロジーの活用(品種改良、培養)も食糧問題や気候変動の解決策として、取り組まれています。
しかし、テクノロジーの利用にはエネルギーが必要ですし、フェイクフードの原料である大豆の栽培にも、農薬と化学肥料が必要です。
生産過程におけるエネルギー消費量をどんなに削減しても、エネルギーの投入は必要となるため、再生可能エネルギーや未利用エネルギーなど、エネルギー創造の視点も必要だと考えています。人類が口にする食品に含まれる窒素の8割は、天然ガス由来と言われています。なぜそうなるかと言えば、牛や豚等の家畜が食べる飼料作物が大量の窒素肥料によって生産されているからで、そうした窒素肥料は主に天然ガスのエネルギーを用いて空気中の窒素を固定したアンモニアが原材料になっているからです。
特に、牛等がよく食べているトウモロコシは、米国における大量生産の課程で、そのカロリーの10倍ほどのエネルギーが生産時に投入されていると言われています。
実は、日本の米(水稲)もトウモロコシ並に窒素肥料投入が行われています(殆どが水に流れてしまう)。
残りの2割は、マメ科の植物の根についている根粒菌によるものです。牛はマメ科の牧草を食べることでタンパク質を効率よく生成しています。
植物の生育には、窒素の他にもカリウムやリンといった主栄養素と、他にも必須元素がありますが、窒素肥料の投入による増産効果はかなり大きいです。そして、窒素肥料はエネルギーと空気がある限り無限に作れますが、カリウムやリンは有限資源であり、特にリン資源は枯渇に近づいています。
タンパク質を高効率に生産し摂取するという意味では、確かに大豆は悪くないのですが、私はコオロギやカイコを用いたタンパク質生産に注目しています。
こうした問題を解決するには、一つには窒素肥料を何から作るかという問題があります。一般的な再生可能エネルギーは殆どが電気ですが、例えば燃料電池の逆反応を使って、電気からアンモニアを生産する技術も一応あります。ただ、現在は天然ガス価格が安い地域で窒素肥料が安く生産され流通していますので、再エネ窒素肥料が流通コストで既存製品に勝つことは相当難しいでしょう。
昆虫の繁殖にも、温度管理が重要で、それほど高温は必要ありませんが、例えばコオロギであれば28度程度の温度を年中保つ必要があります。
余った電気や余った熱によって、窒素肥料や昆虫タンパク質を作ることが、これからの時代に求められるのではないかと考えています。畑にいると野菜の葉は文字通りソーラーパネルであると実感します。
当たり前ですが生きて動いているのでしっかりと太陽光をつかめるように角度を変え、蒸散の力を使って地下水を吸い上げています。
結果的にブロックのごとく二酸化炭素を炭素化し固めた幹は、乾燥させればよく燃えます。
というところを見ているとまさに農業は食物連鎖含め様々なエネルギー循環の現場であると思います。
気になるのはもともと昭和30年代までは人糞を介してヒトもその循環の輪の中に入っていたわけですが、現在では完全に化石燃料等を利用した外部からのエネルギー投入と自身が持っているエネルギーについてはこれまた下水道で化石燃料をつかって処理しているという点。
技術革新によって小規模エネルギーを効率よく蓄積したり放出したりすることができれば農業も変わるのではないかと思います。