トラビル・ブラッドベリー博士が、世界で最も成功を収めた人々のユニークな習慣を紹介する。あなたも試してみて、何が変わるか確かめてほしい。

豊かな生産性を獲得した秘訣とは

大きな成功を収めた人たちと親しい知り合いになってみると、その人の本当のパーソナリティや動機、そしてもっとも重要なこととして、なぜそれほどの成功と豊かな生産性を獲得したかについて驚くような知識が得られる。
「成功者を眺めるとき、人はパブリックな栄光ばかりを見て、そこへ至るためのプライベートな犠牲を見ようとしない」──ヴァイバヴ・シャー
ケビン・クルーズは、そうした知識を学んだ人物のひとりだ。ケビンはこれまで、7人の億万長者、13人のオリンピック選手、大勢の成功した起業家を含む200人以上の大成功を収めた人々のインタビューを行ってきた。クルーズによると、もっとも啓発的な情報の源は、ある単純な自由回答形式の質問にあったという。
「あなたの生産性を可能にした、一番の秘訣は何ですか」
インタビューをした人たちの答えを分析したクルーズは、それらの答えを体系化して、いくつかの興味深い示唆を得た。以下に示すのは、ケビンの発見のうち、わたしが特に気に入っているものだ。

1. 「時間」でなく「分」単位で集中する

多くの人はスケジューラーの区切りを、1時間あるいは30分単位にしている。だが、大きな成功を収めた人々は、時間以上に価値のあるものはないと考えており、1日は1440分であると考えている。
失った金はまた取り戻せるが、過ぎてしまった時間は二度と取り返せない。
オリンピックに出場した、アメリカの著名な体操選手シャノン・ミラーは、ケビンにこう語っている。「今日に至るまで、わたしはほぼ分刻みのスケジュールを守ってきました」。
自分の人生を征服するには、まず「分単位の時間」を征服する必要がある。

2. ひとつのことだけに集中する

生産性の高い人々は、自分にとって何が「もっとも重要なタスク」であるか知っていて、毎朝1~2時間、決して中断することなくそのタスクに取り組んでいる。
目標への到達に、もっとも大きく影響するのはどのタスクか。何を達成すれば職場での昇進につながるか。そのことに、毎日の朝の時間を割り当てるべきだ。

3. To-Doリストを使わない

To-Doリストはゴミ箱に放り込もう。その代わりに、すべてをカレンダーに書き込んでスケジューリングするのだ。To-Doリストに書き込まれたことのうち、実行されるのは41%にすぎないことがわかっている。
そして、まだ済ませていない多くのことは「ツァイガルニク効果」、つまり完了した課題より未完了の課題のほうが強く記憶に残りやすいという現象のために、ストレスと不眠症につながる。
生産性の高い人々は、あらゆることをカレンダーに書いておいて、それに従って働き、生活する。

4. 未来の自分に先回りする

未来の自分を信じてはいけない。わたしたちに時間的一貫性はないからだ。
たとえば、これから1週間、ずっとヘルシーなサラダを食べようと考えて野菜を買っても、1週間後にはクタクタになった緑色の生ゴミを大量に出すことになるだろう。
成功する人たちは、未来の自分にやるべきことをさせるために、いま自分にできることは何かを考える。未来の自分がどんなふうに自分の足を引っぱろうとするかをあらかじめ予想し、未来の自分に先回りをして勝つための手を今日のうちに考えるのだ。

5. 夕食までに帰宅する

ケビンがこれを最初に学んだのは、インテルのアンディ・グローブに「やること、やるべきことはつねにあり、いつも実際にできる以上の量がある」と言われたときだった。
大きな成功を収める人々は、自分が人生において何に価値を置くかを自覚している。そう、仕事も大事だが、他にも大事なことはあるのだ。
それに関して普遍的な正解はないが、家族と過ごす時間、エクササイズ、恩返しなどに価値を置いている人は多い。そして、1日1440分の時間を仕事以外の大事な領域にも意識的に振り分けて(つまり、カレンダーに書き込んで)、そのスケジュールをしっかり守っている。

6. 紙のノートを使う

リチャード・ブランソンは何度となく、自分がどこへでも持っていくシンプルなノートがなかったら、バージンを築くことはできなかっただろうと語っている。
また、ギリシャの海運王アリストテレス・オナシスは、あるインタビューでこう語った。「いつも1冊のノートを持ち歩き、あらゆることを書き留めておけ。それこそ、ビジネススクールでは教えてくれない、100万ドルの価値があるレッスンだ」
生産性の高い人たちは、何か考えが浮かんだらすぐにノートに書いてしまうことで、いつも頭を空けておくように心がけている。

7. メールを処理するのは1日に2、3回だけ

生産性の高い人たちは、1日中「メールチェック」したりしない。スマートフォンのバイブレーションや着信音にいちいち反応して、誰が受信箱に侵入したのかを確かめたりはしないのだ。
そうした人々は、他のあらゆることと同じように、メールを迅速かつ効率的に処理するための時間をスケジューリングしている。具体的には、1日1回という人もいれば、朝、昼、晩の3回とする人もいるようだ。

8. あらゆる手を使って会議を避ける

ケビンが著名な実業家マーク・キューバンに、生産性に関する一番のアドバイスを授けてほしいと頼んだとき、キューバンは即座にこう答えた。「誰かがその場で小切手を書くのでない限り、絶対に会議には出ないことだ」
会議は悪名高い「時間つぶし」だ。開始時刻は遅れ、見当違いな人々が参加し、本当の議題にはなかなか入れず、しかも長時間続く。
チャンスさえあれば、いつでも会議から抜け出すべきだし、自分で開く会議はごく少数にとどめるべきだ。もし自分が議長を務めるのなら、できるだけ短く、かつ要領を得たものにしよう。

9. ほとんどのことに「ノー」と言う

億万長者のウォーレン・バフェットは、かつてこう言った。「成功する人々と大成功する人々の違いは何か。それは、大成功する人々はほとんど何にでもノーと言うことだ」
また、起業家のジェームス・アルトゥーカーはもう少し劇的な言い方で、ケビンにこの助言を与えた。「『イエスに決まってるだろ!』と言うほどでなければ、ノーと言っておけ」
先にも述べたように、誰でも1日は1440分しかない。限られた時間を簡単には人に与えないことだ。

10. 「80/20」のルールに従う

パレートの法則として知られるこのルールは、多くの場合、成果の80%は活動全体のわずか20%からもたらされるというものだ。
生産性の高い人々は、どの活動がもっとも意味のある結果につながるかを知っている。それらに集中して、他は無視しよう。

11. ほとんどのことを人に任せる

生産性の高い人々は「どうしたらわたしにこのタスクができるか」とは考えず、「どうすればこのタスクを片付けられるか」を考える。つまり、可能な限り自分ではやらないようにするのだ。
生産性が非常に高い人々は、なんでも自分で支配しなければ気がすまないタイプではなく、細かいことにうるさいマネージャーでもない。多くの場合、用が足りればそれで十分なのだ。

12. 手を触れるのは一度だけ

ごく普通の郵便物、おそらく請求書とかそんなものを、あなたは何回手に取り、あとで処理しようと考えてまた元に戻しているだろうか。あるメールを読んだのに、あとで処理しようと考えて、そのまま受信箱に置いておくことがどのくらいあるだろうか。
大きな成功を収めた人たちは「触れるのは一度だけ」にしようと努めている。5分か10分以内で片付くことなら、それが何であれ、そのときにその場でやってしまうのだ。
そうすれば、もう二度とそれを思い出す必要はないのでストレスが減る。将来のどこかの時点でもう一度読み直し、もう一度考えることもないので、効率もいい。

13. 毎日の朝のルーティンを実践する

200人以上の大成功を収めた人々にインタビューするなかで、ケビンがもっとも驚いたのは、自分の「朝の儀式」を一緒にやらないかと誘う人がとても多かったことだという。
ケビンが聞いた朝の習慣は多岐にわたっていたが、その多くは、水を飲む、健康的な朝食をとる、軽い運動をするなどして体を整えること。さらに、瞑想、祈り、インスピレーションが得られる読書、あるいは日記をつけるなどで心を整えるものだった。

14. エネルギーがすべて

1日の時間を増やすことはできないが、エネルギーを高めて注意力、集中力、生産性を高めることはできる。
生産性の高い人々はより多くの仕事をするために、食事や睡眠、あるいは休憩を抜いたりはしない。むしろ、食べ物は燃料、睡眠は回復に必要な時間、休憩はさらに多くの仕事をするための再充電の機会と見なしている。
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あなたは、起業家でもなければオリンピック選手でもなく、億万長者でもない(あるいは、そうなろうとも思わない)かもしれない。
だが、彼らが教えてくれた秘訣が、より短い時間で多くの仕事をしたり、働きすぎで精神的に参ってしまうのを防ぐのに役立てば、それだけでも十分ではなかろうか。
生産性を高めるために、みなさんはどんなことをしているだろうか。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Travis Bradberry/Author, Emotional Intelligence 2.0、翻訳:水書健司/ガリレオ、写真:Fedinchik/iStock)
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This article was produced in conjuction with IBM.