プロピッカーが体験。「NewsPicks×PORTER」はビジネスシーンでどう使えるか

2017/5/3
現代ビジネスシーンに必須の機能を詰め込み、NewsPicksと吉田カバンがコラボレーションしたビジネスバッグシリーズ。その仕上がりを一足先に体験したプロピッカー迫俊亮氏と、デザインを手掛けた吉田カバンの桑畑晃氏との対談により、ビジネスパーソンのファッションの変遷や、その道具として進化する「ビジネスバッグ」の可能性を掘り下げた。
※「吉」の正確な表記は「土」の下に「口」。

多様化が進むファッション

──お二人はビジネスパーソンのファッションの変化について、どう考えていますか。
迫 私が子どもの時と比べたら、いまはビジネスシーンでのファッションはどんどん自由になり、かつ多様化してきていると感じます。昔はビジネスパーソンの服装といえば「暗い色のスーツに地味なネクタイ」といったイメージが強かったですよね。
私個人の経験でも、前職のマザーハウスではスーツは着なかったですが、“スタートアップといえばTシャツにジーンズ”的なイメージもなくなってきていて、最近はBtoB向けの仕事をする人はスーツをよく着ています。
昔と違って「こういう職業だからこういった服装」といった固定観念のようなものはほぼなくなってきているのではないでしょうか。
迫 俊亮(さこ・しゅんすけ)/ミニット・アジア・パシフィック社長
1985年、福岡県生まれ。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)社会学部を卒業後、三菱商事に入社。その後、ベンチャー企業のマザーハウスに転じ、 同社の創業期を支えながら台湾における事業確立などでも成果を上げた。2013 年にミスターミニットを運営するミニット・アジア・パシフィック入社。苦戦を強いられていた東南アジア事業の立て直しを担い、2014年4月、29歳にして代表取締役社長に就任。
桑畑 僕もやはり多様性を感じますし、ビジネスファッションのカジュアル化や持ち物もどんどん軽装化している印象があります。恐らく、リーマン・ショックや東日本大震災などの社会の大きな出来事、スマートフォンのようなデバイスの進化などが要因ではないでしょうか。
ただ、多様化したからといって便利になったわけではないと思います。僕が学生のころはファッション誌は「メンズクラブ」や「POPEYE」くらいしかなくて、ファッションの情報を得る手段が限られていました。
ただ、現在はこれだけ「雑誌が売れない」と言われている中でも本屋に行ったらたくさんファッション誌が置かれていますよね。
これだけ情報が多い状況だと、ビジネスパーソンも自分が何を買えばいいのかわからなくなってしまっているのではないでしょうか。
桑畑 晃(くわはた こう)/株式会社 吉田 企画開発本部・取締役本部長
1968年神奈川県生まれ。文化服装学院卒業後、1989年に株式会社 吉田(吉田カバン)に入社。入社後は企画部に配属され、デザイナーとして活躍。その後は、デザインだけでなく企画開発本部・取締役本部長として会社の中軸を担う。
迫 確かに、私の身の回りでも情報が増えすぎて何を買えばいいかわからないという人が多くいます。
同じことはキャリアにも言えますよね。昔は王道のキャリアというものがありましたが、いまは大企業だって傾く時代ですし、かといってスタートアップだって簡単に潰れるのは変わらない。
「これをやっておけば間違いがない」というセオリーはもうどこにもないと思います。
──多様化には功罪があると思いますが、そちらについてはどう考えていますか。
迫 基本的には多様化により選択肢が増え、世界観が広がることはいいことだと思っています。ファッションで考えても、カジュアルからフォーマルまで選ぶことができますよね。
ただ、選択肢が広まった一方で「こだわる」「突き詰める」ということは減ってしまったと考えています。ファストファッションももちろん否定はしませんが、既存の概念を打ち破るような新しい提案ではないですよね。
こだわって商品を開発したからといって、ビジネス的にうまくいくかといえば必ずしもそうではありません。むしろ苦労するところも多い。難しい時代だと思います。

「ストーリー」が今後は大事に

──今回の対談の核でもある「バッグ」ですが、ビジネスシーンにおけるバッグもどんどん自由になってきましたよね。例えばNewsPicksでも時々話題になりますが、昔は「スーツにバックパックなんてありえない」と言われていたのに、最近はスーツにバックパックを背負う人もよく見かけるようになりました。桑畑さんから見て、ビジネスの世界でのバッグの変化についてはどう捉えていますか?
桑畑 仕事や服装が多様化していくと、当然バッグの選択肢も増えます。カバンをずっと作り続けてきた僕の立場から見ても、ビジネスパーソン向けのバッグもこの5年くらいで大きく変わってきているように思います。
僕は吉田カバンに約30年前に入社しました。当時のビジネスバッグの主流はレザーです。そんななかで、吉田カバンが特異だと言われたのは、いち早く「ビジネスカジュアル(ビジカジ)」をコンセプトとしたカバンに着目し、発表していたことです。
このいわゆる「ビジカジ」のカバンも、もともとは「軽い」「手入れが楽」というアメリカの学生のスクールバッグから着想を得たものでした。そこからだんだんビジネスの世界でのカバンに「ビジカジ」という概念が入ってきて、時代とともにブランディングがされていきました。
──迫さんは「(しわがつくので)スーツにバックパックは背負わない」とのことですが、マザーハウスはビジネス向けのカバンも作られていましたよね。どういった点を意識していましたか?
迫 マザーハウスでは最初はビジネス向けのカバンは作らない予定でした。ただ、お客さまからの要望が強かったので、要望を出してくださった方を巻き込んで商品開発をしてきました。
一口にビジネス向けのカバンといっても、書類をたくさん持ち運ぶ人もいるし、PCを持ち運ぶ人もいるし、タブレットで済ませる人もいます。つまり要望はみんなバラバラなわけですが、その要望の間をとっても中途半端なものしかできません。
結局は、個別のケースを想定したバッグを多種類作っていくしかないのだと感じました。
また、マザーハウスのカバンを選ぶようなビジネスパーソンは、デザインや機能性、値段といった一般的な要素から一周してきたような方が多かったです。
そういった方に刺さったのが、マザーハウスの「途上国で作っている」というコンセプトやストーリーです。そういったモノの裏側にある「ストーリー」が今後はより大事になってくる気がします。
実は、私はいまの会社(ミスターミニット)に入るまでは革靴は1足しか持っておらず、スーツも1着しかありませんでした。マザーハウスでは全身コム・デ・ギャルソンで通していましたから。
でも、ミスターミニットは「靴の修理」をメインの事業としている会社です。そういった会社に入るなら、扱う商品は好きになった方がいいですよね。ミスターミニットに入る前にヨーロッパに行って、本場の靴職人の方ともいろいろ話しているうちに自然と革靴が大好きになっていました。
そうなると、モノを見ても作る人の顔が目に浮かんで、表には見えないこだわりも感じられるようになりました。やっぱり周辺情報やストーリーがあると、そのモノにも愛着がわきますよね。
我々のお客さまにも、たまに修理代金の方が、当初の購入金額より高くなる方もいます。でも、それでも修理をしたいのには理由があって「就職して初めて買った靴だった」だったり、「親の形見なんだ」といった理由だったりするわけです。
最近はそういったお客さまが増えている印象がありますし、そういったニーズをちゃんと受け止められる会社でありたいと思っています。

プロの仕事を感じた

──そういったこだわりやストーリーを大事にされる迫さんが、今回の「NewsPicks×PORTER」のカバンを使ってみた感想はいかがでしたか。
迫 主にドキュメントケースを数日間使ってみたのですが、圧倒的な機能性の高さを感じました。いまの私のカバンはフルレザーなのですが、やはり重いし機能性はこのカバンではあまり意識していません。
桑畑 迫さんのこのカバン、とてもいいカバンですね。絶妙なミックス感を感じます。イギリスのテーラードを勉強した日本人が、イタリアの素材でカバンを作ったような……、形はイギリスですよね。
迫 このカバンは、実は私の靴を作ってくれた靴職人が作ってくれたものです。ミスターミニットは職人集団なので、社長である私も、モノにこだわりたいと思ってあつらえたものですが、伝統的な製法を追求して再現しているために、やっぱり機能性には欠けますね。重いし開閉の手順が複雑で……。
また、私は常にアイパッドを持ち歩いているのですが、このカバンだと落としたらアイパッドは壊れてしまうし、雨に濡れるとレザーからもうダメになってしまいます。
でも、今回の「NewsPicks×PORTER」のドキュメントケースは、軽量で収納もよく考えられている。機能性はもちろん、スーツスタイルにもフィットしますよね。また、触ってみたらわかりますが保護性もある。PCやタブレットを入れることを前提に、現在のライフスタイルを反映していると思います。
雨に濡れても大丈夫そうですし、底部のサブハンドルがあるのも落下の防止になって、いいですよね。
こちらのリュックサックも背負ってみましたが、同じく使いやすいです。いまは仕事でバックパックは背負いませんが、前の仕事はバックパックを使っていたのでその機能性はよく理解しているつもりです。やっぱり両手がフリーになるのはいいですよね。
PCやタブレット、その周辺機器を持ち運ぶことを前提にしている設計だと思いますが、もうこのカバンがあれば1日~2日くらいの出張には行けてしまうと思います。
迫 名刺入れも使ってみました。名刺入れは、胸ポケットに入れると「ボコッ」と盛り上がってしまうものも多いのですが、この名刺入れは全く問題がありませんでした。また、この名刺入れは名刺を入れるところが2カ所あって、自分の名刺といただいた名刺を分けて入れられるのが便利ですよね。
カバンは1センチ縫い目がずれただけでも全然印象が変わってしまう繊細なものですし、ユーザーのニーズは本当にさまざまです。でも、その一つ一つの意見をふまえてデザインをすると中途半端なものになるか、どこかで破綻してしまいます。
そんな中、このカバンはバランスをちゃんととり、全ての要素を実現させているのは「さすがプロの仕事だな」と感じました。
桑畑 それが僕の仕事だと思っています(笑)。

人間は無駄なことに感動できる

──桑畑さんがこのカバンに仕掛けたものは何だったのでしょうか。
桑畑 実はそこまで決め込んだわけではありません。強いていうならば、使う人それぞれで使いやすいカバンであればいいというイメージです。
いまは雑誌の付録でもバッグが付いてくる時代です。でも、うちのカバンは3万~4万円の価格帯が多いです。じゃあ「うちのカバンを買ってもらえる理由は何か」ということは作り手としてはちゃんと考えないといけない。名前だけではもうビジネスは成立しないわけですから。
そんな中で僕が考えてるのは、安心感、安定感を保ちつつも、市場を見渡してみて「このカバン、ありそうで実はなかったよね」といったカバンを作っていければと思っています。
人によっては「このドキュメントケースやリュックサックがあれば、大体の用途には対応できるよ」と言ってくれるかもしれません。
それはそれでうれしいですが「これで全て済ましてほしい」という感覚は僕にはなく、どちらかといえば「他のカバンとの併用でもいい、ただ選択肢には入っていてほしいな」という感覚です。
実は、僕は手ぶらが好きなので普段はカバンは持ち歩いていません。だから僕のカバンは「丸の内の人だったらこういった用途で使うだろうな……」と突き詰めていった結果の想定の上に成り立っているデザインなんです。
僕は極論を言うと、カバンはなるべく使いたくないと思っています。でも、買っていただき、使っていただけるならその人のビジネスシーンでの味方になったり、カバンを持っていることでテンションが上がるような後押しになりたいと思っています。
そうじゃなかったらただの「袋」でもいいわけですよね。
カバンも嗜好(しこう)性が高いものが好きな人がいるし「ものを運ぶ道具」として見ている人もいます。それはいい悪いの話ではなく、答えがない問いだと思っています。
アップルウォッチが出てきたからといって機械式の時計が完全になくなるわけではないように、便利なものだけが世の中に残るわけではないですよね。
僕は「人間は無駄なことに価値を見つけて感動できるはず」と考えているのですが、迫さんが先ほど言っていたように、僕も、こだわって作ったものや、ストーリーが背景にあるものは残ると信じています。
じゃないと「靴も安いのを買って履き潰せばいい」という話になってしまいますよね。
僕たちはこれだけ価値観が多様化していく現代でも「わざわざ直してでも使いたい」と思ってもらえるカバンを作らないといけないですし、それが使命だと思っています。
(聞き手:呉琢磨、構成:上田裕、撮影:岡村大輔)
※お知らせ
多くのお問い合わせをいただいたため、「NewsPicks×PORTER」のカバン・小物を実際にピッカーのみなさまにご確認いただける機会をご用意いたしました。

日時:5/15(月)、16(火)17:00〜20:00
場所:ユーザベース本社
(〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿 1-18-14 恵比寿ファーストスクエア10階)
となります。

ご関心のある方はぜひご参加ください。