企業人事ピッカー三浦孝文さんが「NPに求める“違和感”」

2017/5/13
NewsPicksで活躍するピッカーさんをご紹介する本連載、今回から2回に渡って、企業の人事や採用に携わる方に登場いただきます。
21人目のピッカーさんは、三浦孝文さんです。3年前からコメントを続けてくださっている三浦さんが「コミュニティは同質化しすぎないのが大事」だと考える理由や、ご自身のコメント・ポリシーについて伺いました。
企業の人事に携わるピッカーさんの懇親イベントを、7月に東京で開催予定です。詳細は本記事の最後をご覧ください。

リアルでもSNSでも自分らしく

──2014年4月から3年近くご利用いただいています。使い始めたきっかけについて、覚えていらっしゃいますか。
NewsPicksのことをSNSで誰かが紹介しているのを見たのが、最初の出会いだったように思います。巷で流行りはじめているものは、とりあえず触ってみようと心がけていまして、どうやら一風変わったニュースアプリのようだ、と。
この頃の私は、一社目のインターネット広告関連会社から、次の会社に転職する直前でした。
──ご登録当時から実名や社名を公開されていますね。
私は基本的に、SNSはすべて実名で使っています。
私の発言であることを隠して、SNS用の人格を作り上げたとしても、そんなに器用な性格ではありませんから、何かの拍子に素の自分が出てしまうと思うのです。それを手がかりに調べれば、私の発言であることを特定するのに時間はかからないでしょう。
そうなったときに困るぐらいなら、はじめから名前や顔を明らかにしておきたい。私個人として発信できないようなことは、そもそも書かないというスタンスで使っています。
SNSと実生活とで人格を分けないもうひとつの理由は、私の職歴も関係しているかもしれません。
新卒で入った会社から三社目の今に至るまで、一貫して人事に携わっています。特に採用に関わっていると、外部と近い立ち位置になりますし、社名を背負って色々な方とお会いするのが仕事になります。そうなると、言えないことや、やれないことがあるのが当たり前というか、縛りのある中で言葉を選択することに慣れるんですね。日々の仕事の延長という感覚で、SNSを実名で使うことに抵抗がなくなったのかもしれません。
三浦孝文(みうら たかふみ)
オイシックス株式会社の人材企画室で人事を担当。 株式会社D2Cで採用などを担当したのち、クックパッド株式会社に中途入社。採用を中心に携わり、子会社の株式会社トクバイ、株式会社おいしい健康の人事機能の立ち上げに関わる。その後、退職して現職に至る。 社外では「人事ごった煮会」という企業人事担当者のコミュニティを運営している。

すべてがオープンになる時代

──三浦さんはたびたびコメントで「すべてがオープンになる時代だ」と書かれています。本当の自分は隠せない、どんなところからも見られている可能性がある時代だ、と。
社員によるSNSの使用を禁止している企業もありますが、今後は発信するのが当たり前になっていくのでしょうか。
そうですね、発信する人はどんどん増えると思います。
それに、本人が発信しなくても、その家族や友人が伝え聞いたことをSNSでポロッと書いてしまうこともあり得るでしょうし、止められないと思うんですよね。
これはあくまで私の持論ですが、会社が社員の言動を制限するのは、なるべくやらないほうがいいと思っているんです。むしろ、社員のSNSへの投稿もまた、その会社を表す要素のひとつだと捉えた方がいいのではないでしょうか。
例えば、社員に「ツイッターでつぶやくのは止めてください」と言って止めたとしても、その人が会社について外でウワサ話をすることまでは止められませんよね。
思うこと、感じることはすべて社員の本音ですから、それを遮って禁止するよりも、しっかり向き合って対処する方が本質的なのではないか、と思うのです。
SNSで社員がどんなことを発信しているのか、そこから得るものもありますし、会社の雰囲気を把握するバロメーターになるのではないかと捉えています。
誰でもネットを使って発信できる時代なんですから、究極的には制限できない。それであれば、最低限守ってほしいルールを決めて伝えるほうがいいでしょう。
──三浦さんご自身は、発信するときのポリシーはありますか。
ひとつは、個人の悪口を言わないことですね。
起こった出来事に対して意見を言うのはいいけれど、関わった人について非難することはしないと決めています。
誰だってそういう立場に立たされる可能性がありますし、私自身の心もそこまで強くないので(笑)、個人攻撃を受けたら凹みますから。
もうひとつは、出来る限りポジティブであろうということです。
言葉には引っ張る力があると思うんですよ。
──自分が発した言葉に、自分自身が影響を受けるということでしょうか?
その通りで、ネガティブなことを書けば、自分の中でますますその感情が増幅されますし、文字として残せば、それを読む方にも伝播させてしまう気がするんです。
負の感情が呼び覚まされるようなニュースがあったとして、自分の中から湧いてきた感情を単純に切り取れば、「ひどい」「腹が立つ」と書くことになるでしょう。そういうときでも、その先に意識を向けて、「では、どうするか?」を自分に問いたい。そのほうが、ほかのピッカーさんが読まれたときにも、多少なりとも意味のあるコメントを書けるように思います。

人事として大切にしていること

──三浦さんがやられているお仕事のことをお聞かせください。
人事をやるきっかけになったのは、新卒で入った会社なんですが、当時僕はその会社の新卒6期生で、そろそろ人事に新卒を配属してみようか、という時期だったんですね。
もともと大学でスポーツをずっとやっていたので、チームで勝つ、組織で勝つことに自分の関心がありました。一人のパフォーマンスをあげるよりも組織のパフォーマンスを上げたほうが生産性も上がりますし、勝利にも近づけます。
人事は、会社の経営や人に関わる部分なので、すごく面白そうだなと思っていたところ、希望が叶いました。配属後の一年間、まずは中途採用を担当しました。
――新卒で、中途採用担当ですか。
そうです。面接を回すといいますか、求職者の方が受付にいらっしゃったところから、エレベーターでお見送りするところまで、いかにしてスムーズに実施するかというところですね。
事業部のマネージャーや役員、社長と一緒に、毎日毎日、1日3〜4人ぐらいの求職者の方とお会いしていました。そうするとだんだん会社のこと、経営のことが頭に叩き込まれるんですね。隣で社長や役員が話していることをずっと聞いていますので。そして自分でも話ができるようになってきたころに、新卒採用を任されるようになりました。今考えるとありがたい経験でした。
4年間人事を経験した後は、ネット広告営業の現場を少し経験しました。そして、企業人事仲間の紹介でクックパッドに転職しました。
クックパッドでも採用を1年半ほどやりまして、後半は事業部の子会社化も担当させてもらいました。その後、半年ほど前にオイシックスの人事に移りました。
「高校から大学の学生生活は、カヌーというスポーツに全てを捧げ、チームや個人の日本一を目指して汗をかきました。今の自分を形成しているのは、間違いなくカヌー部での7年間ですね(三浦さん)。」個々の力を組織の力に変える喜びを知ったことが、人事として活躍する今につながっているという。
──職種は同じ人事でも、扱っているサービスや商品が異なる三社を経験されていますね。共通するのはどんなところですか?
結局人事って、社内の人、社員に一番向き合うことが求められる仕事なんです。それは、どの会社でも変わりません。
一社目の頃は、今振り返ってみると「外を向きすぎていたな」と思う時期がありました。
外でいろんなイベントを仕掛けたり、積極的に新しい取り組みを行って採用人数の目標を達成したり、会社からもそれなりに評価していただいていたと思います。
それでも、人事を離れて私が二社目に移るぐらいの頃に、過去に採用した方が退職されたり、新卒採用した方が会社に合わず思い悩んでいると聞く機会がありました。
果たして私は会社にフィットする方々を採用できていただろうか、より良い採用のためにもまず社内をじっくりと見つめる必要があったのではないか、と立ち止まって考えたんですね。
究極的には、私は一人ひとりの価値観や経験を知って、その人の持つエネルギーを活かし、組織を推進していく力に変えたいんです。だからこそ人事の仕事に携わっているのだと、改めて知る機会になりました。

違和感にこそ価値がある

──企業人事のコミュニティ「人事ごった煮会」の運営に長く携わられていますね。企業を超えた連携を意識されているのはなぜですか?
極端な話、一社でやるよりも複数社でやれば、よりスピード感を持ってできることもあるんですね。たとえばスタートアップやインターネット界隈の会社は、人事担当者がぶち当たる壁が比較的似ています。
社員数が50名を超えたあたりで組織が迎える課題、エンジニア採用をする際の悩み、また最近は労働問題のニュースが増えていますが、現場ではどう対処しているのだろうか、などです。
そういった関心分野に対して、他社の経験談を聞いて自社に活かしたり、一緒に採用イベントや研修をやったりと協力し合うことで、自社にとってもスピード感を持って成長できる環境をつくれると感じています。
毎回運営側でテーマを設定し、さまざまな企業の人事担当者が集まり、参加者全員がそこで何らかのアウトプットをする、という会を月に1回ペースで重ねています。
企業人事に携わる人が会社の垣根を超えて集まる「人事ごった煮会」を運営している。「将来はオフラインのコミュニティスペースを運営し、人事だけでなくキャリアの相談相手を求める人や就職活動中の学生さんも集まれる場を作りたいです(三浦さん)。」
──皆さんが知見を持ち寄るという意味では、NewsPicksのコメント欄にも通じるものがあるかもしれないですね。
そうですね、私の中ではNewsPicksでコメントするのはまさに同じ趣旨です。
自分が経験してきたことや意見が、コミュニティのほかのメンバーにとって役に立ち、私自身も気づきをいただける。互いに貢献し合うところが、コミュニティを形成する意味なのではないかと思います。
そういう意味で、最近私は「人事ごった煮会」の課題を、いかに同質化させすぎないかだと捉えています。
──同質化させないほうがいいですか。
そうです、居心地の良すぎるコミュニティよりも、ちょっとした違和感があるほうがいいのではないかと。
例えば、一部の先駆者的な方だけにアウトプットをお願いすると、取り上げるケースが限られてきますし、参加者もなんとなく学んだ気持ちになって受け身になってしまうんですね。すると、それぞれが考えてアクションするところに繋がらなくなってしまう。
参加者全員がアウトプットするとなると、それぞれ自発的に考えざるを得なくなるので負担は増えます。ただ、その分だけ気づきも深くなりますし、それぞれの方にとって全く異なるアプローチをしている人に出会いやすくなるんですね。
同じことが、NewsPicksにも当てはまると思うのです。
それぞれが知見を持ち寄り、コメントというアウトプットを共有する。そして、自分と似た考えの方のコメントだけでなく、全く違う方のコメントが読めるところにこそ価値があると感じています。コメント欄をスクロールして下まで読んで、自分と違う意見の方を見つけたら、その方のマイページをチェックして過去のコメントを読むとか(笑)、ちょっと特殊かもしれませんが、私はそんな使い方をしています。

リアルな出会いづくりに期待

──企業人事の目線で見たとき、NewsPicksがもっと強化すべきところ、変えるべき点はありますか?
オンラインメディアにとって、私はオフラインの場づくりが重要だと思っています。今後、NewsPicksがセミナーや交流会といったリアルな出会いをどうデザインしていくのか、そこに興味がありますね。
最後の最後は、ピッカーさん同士や運営担当者が顔を合わせ、リアルの場を共有するのが重要だと思うんですよ。
まだ前職に勤務していた頃、職場が恵比寿だったので、ときどき駅でNewsPicksの梅田さんをお見かけしていたんです。日ごろのコメントから受ける印象と、リアルにお見かけしたときの雰囲気で重なり合うところがあって、「この方はオンラインとオフラインとで、違いの少ない方なんだな」となんだかホッとしました(笑)。
ちゃんとご挨拶したわけでもなく、こちらが一方的に目撃しただけなんですが、それだけでも親近感が湧きましたし、安心感って生まれるものなんですよね。
コメントという文字を介したやりとりですと、その人の佇まいや温度までは読み取ることが難しく、ごく一部が切り取られて伝わっていくところがあります。それだけを読んで人となりを把握することになるので、誤解が生まれやすいのではないでしょうか。
たとえ短時間でも実際に会ってみれば、その人のキャラクターが分かることも多い。日ごろのコメントからはぶっきらぼうな印象を受けていた人でも、実は愛があって言っていることなのだと理解でき、イメージを補正することができるんですよね。
ピッカー同士のちょっとした出会いが増えていけば、NewsPicksの面白さはもう一段深まるのではないかと期待しています。

三浦孝文さんのおすすめピッカー

「特定の誰かのコメントだけを読むというタイプではないのですが、印象に残るコメントをされているなあと思う方を中心にご紹介します。(三浦さん)」
「いつも大人で温かみのあるコメントをされている印象で、コメントを読んでいると人柄が伝わってきて素敵です」
「徒然なるままにpickされるコメントに、時に癒され、時に気づきをいただいています。かなり前からフォローし続けている方のお一人です」
「最近ピッカーになられたばかりだと思いますが、トップアスリートだった方の視点が世の中のニュースをどのように切り取られるのか関心があり、フォローさせていただいています」
「同じ人事という仕事をされている中で、私よりも圧倒的なアウトプット量でコメントされていて、pickされる記事の幅も広く、いつも素敵だなと思っています」
「人事と学生としての出会いで、彼女のことは学生時代から知っています。その当時に話していたことをいまの会社で彼女がしっかり仕事にしていることに、とても大きな力をもらいました」
■小野 編集後記:

会社を超えた交流の場をご自身でも作られている三浦さんは、その延長としてNewsPicksをご利用くださっているとのこと。NewsPicksをきっかけに、これまでに10名以上の転職・就職相談に応じられたそうで、つながりづくりをお手伝いできていることに嬉しくなりました。

こうした出会いにオープンでいられるよう、裏表のない”三浦さん”であろうと心がけていらっしゃるのかな、と思いましたが、お話を伺ううちに真っ直ぐなお人柄が伝わってきました。日々のコメントからも伺える爽やかさは、きっと天性のものなのですね。

なお、取材時には私の印象についても話が及びまして、「関西人っぽい人だと思っていたけど、違いましたね(笑)」とのご感想を頂戴しました。どう違ったのかについては、聞くのが怖かったので……今度お会いしたときに教えてください。
【イベント告知】

「リアルな出会いづくりに期待しています」という三浦さんの言葉に背中を押していただき、交流イベントを企画します。

今回は、企業で人事や採用に携わっているピッカーさんにお集まりいただき、親睦を深めていただければと思います。三浦さんにもご参加を打診中です。《詳細・お申込みはこちら》
また、6月25日(日)開催予定のロサンゼルス懇親会もご参加受付中です。

今後もさまざまなご専門や、関心分野をお持ちの方にお集まりいただく会を企画する予定です。本連載で告知いたしますので、引き続きよろしくお願いいたします!