【関正生】カリスマ講師だけが知る「神授業」の条件

2017/4/16
「神授業、見放題」を掲げる「スタディサプリ」は、質の高い授業が特徴だ。そのクオリティを支えるのが、経験豊かな講師陣である。「神授業」と呼ばれる密度の濃い授業はいかにして生まれ、そしてクオリティ維持のためにどんな努力をしているのか。スタディサプリでも不動の人気を誇る英語の関正生先生にお話を聞き、制作の裏側に迫った。

伝説のカリスマ講師に聞く神授業の秘密

関正生先生は、大学在学中から予備校の英語講師を務め、全国の予備校で250人の教室を毎回満席にした実績をもつ、まさに伝説の講師だ。スタディサプリでも生徒からの絶大な支持を受け、高い視聴率を誇る。
「動画授業を撮るときは、『画面の向こうに生徒がいると想定して話すべし』というのが鉄則。難しい話が続いて生徒が退屈していないか、眠ってはいないか、自分のギャグはちゃんとウケているか。ライブ授業と違って、どれひとつ確認することはできませんから、それを察知できるかどうかで講師の力量がはかられます。
私の場合、大げさに言えば生徒の一挙手一投足が見えるんですよ。カメラに向かって、誰もいないスタジオで話していても、どこで生徒が下を向いてノートを取り、重要な説明を聞き逃すかが過去の経験からわかる。だから、動画でも遠慮せず『下を向かない!』と言うんです。生徒たちはハッとして画面を見ているでしょうね」
つまり、知識をわかりやすく伝えるだけでなく、ライブ授業の熱狂を再現できた動画授業が「神授業」になるのだ。
「画面の向こうの生徒が見える」という自信の裏には、関先生が20年以上にわたる講師経験で積み重ねてきた、膨大なライブ授業での知見がある。関先生は、予備校時代から生徒のアンケートすべてに目を通し、さらに独自のアンケート調査を行うことで最良の授業を研究してきた。
「私はよく話すスピードが速いと言われますが、授業でゆっくり話していたら、あっという間に生徒は動画を止めてしまう。実は、『M1』などのお笑い番組を何度も見て、人が引きつけられる話し方、テンション、間のとり方を模索してきたんです。ストップウォッチで『間』をはかったこともあります。
お笑いと授業では話が違うと思われるかもしれませんが、私が提示する新しい知識を生徒に『面白い』と感じ、納得してもらう必要がある。それには、彼らが受け入れやすい話し方をしなくてはいけないんです。
そうやって割り出した話し方をライブ授業で試して、生徒の反応を見てアレンジして……たどり着いた『今』のベストが、スタディサプリの授業に表れています」

小ワザがきかない動画授業ならではの苦労

しかし、ライブ授業の熱狂を再現するのは並大抵のことではない。関先生ですら、スタディサプリの授業には「ならでは」の難しさを感じている。
「そもそも、授業がうまい講師ははじめからうまいんです。私もそうでした(笑)。でも、スタディサプリではライブの授業の『小ワザ』がまったく使えないから、どんな人気講師も苦労する。
たとえば、スタディサプリの授業は長期間閲覧されるから、リアルタイムに起きている時事問題について話すことができません。生徒にとって身近なアイドルやアニメキャラなど、著作権の絡んだ小話なども厳禁。
授業外の時間に生徒とコミュニケーションをとって、自分の『ファン』にすることもできないから、心をつかむ手段は『授業』でしかない。両手両足を縛られた状態で『戦え』と言われている気分ですよ」
ライブ授業の強みは、教室という空間に生徒が収まっていることだ。生徒は教室から出られないから、授業がどんなにつまらなく感じても、とりあえず「聞く」という選択をする。しかし、スタディサプリなら少しでも退屈したら動画を止めればいい。
「いつでもどこでも勉強できる」というメリットは、「いつでもどこでも視聴をストップできる」というデメリットと背中合わせなのだ。「一秒たりとも気を抜けない」という関先生の言葉には、実感がこもっている。
「スタディサプリの講師には、覚悟と勇気が必要です。教室で授業をするなら、相手は生徒だけだった。ですが、動画授業は生徒だけでなく保護者や学校の先生、その分野の専門家・有識者まで見ることができます。これは相当なプレッシャーですよ。
講師としては、自分が積み上げてきた授業の手の内が同業者にバレてしまうというデメリットもありますね」

ダメ出しと撮り直しで維持するクオリティ

スタディサプリでは、視聴率やアンケートによって、授業を撮り直したり、編集をしたりして、常により良い授業へのブラッシュアップを行っている。講師のコンディションに関係なく、最高の状態の授業を生徒が何度でも視聴できるのは、ライブ授業にはない強みだ。
時には、講師同士で授業の収録現場に立ち会い、意見を出し合うこともあるという。
「私は他の先生に対してもかなりダメ出しをしますよ。ベストな授業を作ろうと集まった講師たちなのだから、他人の授業だからといって妥協はできない。
とはいえ、授業の作り方は先生によって違います。納得いくまで何度も撮り直す先生もいれば、私のようにあまり撮り直さない先生もいる。
たとえば私は、ちょっと間違った説明をしてしまったときも、あえてカットしないことにしています。そのほうが、ライブ感があってリアルだからです。なぜ間違えたのか、プロセスを説明することで、生徒の印象にも残ります」
関先生の元には、「神授業」を受けた生徒たちからの声が続々と届いている。
「画面の前で、ついお辞儀をしてしまいます」「講義を聞いていたら、感動して泣いてしまいました」といった意見。
イレギュラーではあるが、子どもと一緒に授業を見た保護者からの「これまで英語でわからなかった疑問が、やっと解けました」といった声もあるという。

カリスマ講師が情熱を注ぐ理由とは

関先生がここまで動画授業に情熱を傾けるのは、スタディサプリが掲げる「教育改革」という目標に心から共感しているからだ。
「家庭や病気といった事情で塾に通えず、勉強が満足にできない子どもたちも、スタディサプリなら低価格で、家にいながらにして質の高い授業が受けられる。スタディサプリには、既存の教育環境ではすくいとれない生徒たちを補う力があるんです。
私の元に届いた感想にも、『これまでは病気で塾にも行けず、思うように勉強できなかった。スタディサプリのおかげでやっと学べる』といった声が少なからずありました。スタディサプリが進化していけば、地方差や収入差、さまざまな教育格差が解消していくでしょう」
関先生の参考書にもファンは多い
関先生はある決意をもっている。「講師として古くなったら辞める」という誓いだ。これは、スタディサプリの講師を引き受けたときから決めていた。また、こうも言う。
「決して今の授業に満足はしていないし、おそらく満足することはないでしょう」
これからも、よりよい授業を目指し、100%を目指し続ける。背水の陣とも言うべき覚悟を持ち、飽くなき向上心を抱いているからこそ、多くの生徒に支持される「神授業」を生み出せるのかもしれない。
この春にOAされたスタディサプリのTV CMで、関先生が「I have to goの“to”は“タ”と発音する」と説明しています。これについて詳しく知りたい方は以下のリンク記事をご覧ください。“to”の発音は「弱形」と呼ばれるもので、リスニングの本質がおわかりになるはずです。詳しくはこちら
(編集:大高志帆 構成:相川いずみ 撮影:早坂佳美)