【田原総一朗】いま22歳なら、NHKとAbemaTVが選択肢

2017/3/9
特集「東大・早慶の就活2018年卒」第2部のテーマは、有名企業社長や官公庁幹部ら各界で活躍する先達が語る 「もし22歳に戻れるなら、あの会社に入りたい」だ。今回登場するのは、ジャーナリストの田原総一朗氏。田原氏の「会社選び」のポイントとは?

取材にカネをかけているか

もし、いま僕が22歳でも「またジャーナリストになりたい」と考えるだろう。だから、就職活動においても、マスコミ以外は受けないと思う。
僕の就活を振り返ると、マスコミだけに絞って朝日新聞やNHKをはじめ何社も受けたがすべて落ちてしまった。その結果、最後に受けた岩波映画製作所になんとか入ったのだが、きっと当時と同じようにマスコミを目指すだろう。
ただ、僕が就活していたころと今では環境に大きな違いがある。メディアを取り巻く状況が劇的に変わってきたのだ。昔はマスメディアといえば何といっても新聞とテレビが中心で、それにラジオがあった。
しかし、今では多様化が進み、インターネットメディアが台頭している。その中で、「自分がジャーナリストとして圧倒的に活躍できるのは、どこだろうか」という問いを持って就職先を考えた場合、選び方が難しくなっている。
僕自身、きっと迷うだろう。そのため、どのメディアが良いのかを、自分の目で見て、聞いて回ったうえで決めると思う。
では、いまメディアを選ぶうえで大事な基準は何か。最も重要なのは、「取材にカネをかけているかどうか」だ。
今、どの既存メディアも取材の予算が減っている。とりわけ、紙メディアがそうだ。
昔、僕は『週刊ポスト』などの雑誌で、何度もヨーロッパ取材をするために海外出張をした。しかし、今では予算が全くないのでありえない。だから、多くの週刊誌は“病気と薬”のことしかテーマとして扱っていないわけだ。
同じ紙メディアである新聞について考えてみると、ほとんどが部数を減らしていて将来性がない。近年、朝日新聞が早期退職者を募集して多くの人が応募したように、大手新聞社においても終身雇用はなくなる。
それは、一般の大企業と構造は同じだ。活字に関心のある学生は受けてもいいとは思うが、この点を理解しておく必要があるだろう。
その中で、既存メディアを比較すると、取材にカネをかけられるのがテレビになる。だから、僕は新聞社や出版社よりもテレビ局を選ぶだろう。
では、どのテレビ局がいいかと考えると、潤沢な予算があり、1 つの番組づくりに時間がかけられるNHKになる。NHKは、事前に海外で数カ月取材してから、スタッフを連れて番組をつくることだってできる。こんなことは他の民放テレビ局にはできないことだ。
田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。