【須藤憲司】2017年のマーケティング業界の3つの論点

2016/12/19

豊かさの指標が変わる

昨年に出た、バークレイズ・キャピタルの『Disruptive Mobility』というレポートが、私にとって、とても示唆に富んでいて、2016年を通じてこのレポートが提示した未来について、考えを深めていく一年でした。
今後25年で米国における新車販売台数は40%減少する
このレポートは、GM、フォード、クライスラーの通称"ビッグ3"とそのサプライチェーン全体が深刻な影響を被ることになると警鐘を鳴らしたものです。
例えば完全自動運転車のようなクルマがあれば、
・ 複数の地点への送迎が可能となるため、1家族あたりの自動車所有台数が1台で済む
・ 手頃なライドシェア・サービスがさらに普及すれば、1台につき、これまで個人で所有していた9台の自家用車が必要なくなる
といったことにより、メーカーにとって全体的に見ると売り上げを押し下げる原因になると提示しています。
自動運転車の影響はそれだけではなく、
・ スマートフォンによる利用が可能なロボットタクシーやロボットトラックによって、全米で何万人ものタクシードライバーや約350万人のトラックドライバーが職を失う可能性
・ ドライバーの人件費が不要になることで、消費者はカーシェアリング・サービスと生活用品の輸送の両方で交通コストを抑えることができ、現在1マイル(約1.6km)あたり3.00 ~3.50ドル(約330~385円)のところ、自動運転タクシーなら0.44ドル(約48円)で利用できるようになる
と具体的な数字で示していて、大変興味深いです。
このように具体的な数字で語られると、イメージが湧いてきますよね?
その影響があったかわかりませんが、今年2月にバルセロナで開催された、世界最大級のモバイル見本市「モバイルワールドコングレス」で、フォードのマーク・フィールズCEOは「フォードは、自動車メーカーから、自動車サービス企業に変わる」と宣言しています。
付加価値は、アセットの利用価値を高められるプレイヤーに寄っていく
これらの事象が何を意味しているか?
長期的なトレンドとして、新しいモノを生産するプレイヤーから今存在している人・モノ・金・情報などのアセット(資産)の利用価値を高めて、世の中に流通・循環させていくことができるプレイヤーに付加価値が寄っていくと私は見ています。