牽引役は「自分の生中継」機能

世界中で大ブームになりつつあるライブ動画配信。いわばセルフィー(自撮り)のビデオ(そしてライブ)版だが、このサービスが中国でも大旋風を巻き起こしており、アメリカの投資家に大きな利益をもたらしている。
特に注目が集まっているのが、出会い系アプリの「陌陌(モモ)」だ。
スマホのロケーション機能で、物理的に近くにいる好みのタイプがどんどん表示される「お気軽デートアプリ」として支持を集めてきたが、そこにライブ動画配信機能が加わった。
北京のビジネス街・朝陽区を拠点とするモモは、2014年にニューヨーク証券取引所に上場。2016年7〜9月期の利益は前年同期比123%増と、アメリカの株式市場に上場している全企業のなかで4番目の伸びを見せた。時価総額は20億ドル超になる。
クレディ・スイスによると、この業界はこの1年で175%成長してきたが、モモはそれを上回る成長を遂げてきたと見られている。モモの向こう12カ月間の目標株価は23%高と予想されている。

ミレニアル世代の手軽な娯楽

「自撮り」ならぬ「自分の生中継」ともいえるライブ動画配信は、いまやロシアからインドまで世界中で大人気。その背景には、スマホの普及とデータ通信の低額化、それにパソコンからモバイル端末へのシフトがある。
中国では、ライブ動画配信はミレニアル世代の手軽な娯楽として楽しまれていると、クレディ・スイスのアナリストらは指摘する。
それとともにこのトレンドを利用したビジネスチャンスも急拡大しているというのが、金融アナリストらの一致した見方となっている。
「中国のネットユーザーにとって、オンラインビデオは『一生のうち15分だけ有名人に』という欲求を満たしてくれるだけかもしれないが、モモにとっては企業として成長するための大きな潜在性がある」と、米ローゼンブラット証券のジュン・チャンは言う。
「モモの株価上昇は、好調な業績を反映している。今四半期も堅調との見方が支配的だ」

来年にはプラットフォームの淘汰も

自分を「生放送」したい消費者の獲得競争はヒートアップしている。
ライブ動画配信サービスを提供するプラットフォームは今年だけで150も増えたと、クレディ・スイスのゾーイ・チャオは言う。中国での市場規模は2017年には50億ドルに達するとチャオは見る。
来年に入って成長のペースが落ちれば、これらプラットフォームの淘汰が進むだろうとチャオは語る。チャオ自身、モモをこの業界のトップ推奨銘柄の1つに選んでおり、9月にはオーバーウエイトにした。
モモのようなソーシャルメディア系ライブ動画配信は、一定の視聴者が確保されているうえに、ロケーション機能とメッセージング機能がうまくシンクロしているのが大きな魅力だ。
「写真と文章だけのメッセージではインパクトがやや弱い。ライブ動画配信機能を追加すれば、ユーザーの利用時間や関与レベルが高まるだろう」とチャンは話す。

マネタイズは「始まったばかり」

実際、2016年4〜6月期にモモの売上高が前年同期比222%増となったとき、モモは有料のライブ動画配信サービスを利用するユーザーが増えたためと説明している。
ライブ動画配信サービスによるマネタイズは「始まったばかりだ」と、JPモルガンのアレックス・ヤオは言う。ヤオも四半期決算の発表後、モモをオーバウエイトに格上げした。
モモなどアメリカの株式市場に上場している中国企業は、最近の上場廃止の懸念をものともしない株価動向を見せてきた。モモの場合も、IPO(新規株式公開)で2億4800万ドルを調達してから半年後の2015年6月に、自社CEOが率いる投資グループから買収提案を受けた。
この投資グループには、米名門ファンドのセコイア・キャピタルの中国法人「中国紅杉」などが名を連ねていた。同グループは9月に買収提案を引っ込めた。
「ある程度のアップダウンはあっても、世界的なブームに牽引されたオンライン動画には力強い潜在性があると我々は考えている」と、モモの対外広報担当者のクリスチャン・アーネルは語る。
「オンライン動画は今ホットな分野であり、モモはこのトレンドから利益を得るための大掛かりな措置をとっている」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Elena Popina記者、翻訳:藤原朝子、写真:Rohappy/iStock)
©2016 Bloomberg News
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