アイデアは「思い付いた理由」に着目せよ

2016/9/12

イノベーションは必ず「議論を生む」

──濱口さんはこれまで、松下電工の新規事業担当やアメリカのデザインコンサルティング会社Zibaの戦略ディレクターとして、企業内イントラネット、USBフラッシュメモリ、マイナスイオンドライヤーなど、数々のヒット製品を生み出してきました。専門は「イノベーション・シンキング」ですが、まずはイノベーションに対する基本的な考え方をお聞かせください。
濱口 「イノベーション」という言葉を一口にいっても、専門家ごとに定義は千差万別で、決まった定義はありません。
しかし、定義できないものはコントロールできません。だから僕は一時期、「イノベーションとは何か」を真剣に考え、「イノベーションは3つの条件を満たすものだ」という結論に達しました。
1つ目は、当たり前ですが「見た事も聞いた事もないもの」です。僕がポケットから、iPhoneを取り出し「これ、僕が新しく考えたものです」と言ったら、誰しも「いやいや、iPhoneじゃないか」と思いますよね。
そうではなく、出した瞬間に「見た事ないぞ」と思われない限り、それはイノベーションではありません。
2つ目は、実行可能なことです。先のiPhoneの例で話すと、「端末を5億台持ってきて、階段状に積み上げて月に行く」というアイデアは、見た事も聞いた事もないですが、そもそも実行不可能ですよね。
実際のビジネスは競争環境など、さまざまな前提条件があるので、その条件下でできないものは、イノベーションではなくファンタジーです。
3つ目は、controversial(議論を生む)であることです。アイデアが提示されたときに「そんなの見た事ない、おれは反対だ」「やってみたら面白いかもしれない、僕は賛成する」と、意見が分かれることが必須です。
全員が反対すればそこに市場はないということですし、全員が賛成すれば面白い意見にはなりません。100人中、1、2人が賛成するぐらいが、一番イノベーションにつながりやすい。
まずはこの3つを押さえることが重要です。