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イノベーターズ・トーク 第35回

【新】ネスレ高岡×別所哲也が語る「新時代のマーケティング」

2016/7/18
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、イノベーターが時代を切り取るテーマについてトークを展開する。
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第35回は、ネスレ日本の高岡浩三社長と、俳優の別所哲也氏が登場する。

テーマは、新時代のマーケティング。ショートフィルムなどを中心とした、新しいマーケティング、ブランディングのあり方について語ってもらう。

高岡氏は、日本を代表するマーケティングのプロだ。

2001年に手がけた、キットカットの「受験生応援キャンペーン」が大ヒット。ネスカフェ アンバサダーなど、斬新なビジネスモデルを生み出し、ネスレ日本の社長兼CEOとして、日本での事業をけん引している。ネスレがブランド展開する190カ国の中でも、ネスレ日本は際立った実績を残している。

一方、俳優、キャスターなどとして活躍する別所哲也氏は、起業家としての顔も持っている。

1999年に、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」を代表として立ち上げ。SSFF & ASIAは米国アカデミー賞公認の映画祭であり、ジョージ・ルーカスなどハリウッドの著名人も応援団に名を連ねている。今年で18回目を迎え、アジア最大級のショートフィルムの映画祭へと成長している。

マーケティング、ショートフィルムの世界で名を馳せる2人をつなぐのが、「ブランデッドムービー」。ブランデッドムービーとは、企業などがブランディング目的で制作する映像のことであり、この分野に世界でいち早く挑戦してきたのが、高岡氏と別所氏だ。

なぜ今、ブランデッドムービーなのか。テレビCMにはない魅力は何か?そして、ブランデッドムービーにかぎらず、新時代のマーケティングに求められる思考や素養は何なのか。イノベーションという切り口から、新時代のマーケティングを考えていく。

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近年、動画マーケティングの手法として、ブランデッドムービーに取り組む企業が増えている。数ある取り組みの中でも、別所氏が、最も注目すべき動きとして挙げるのが、キットカットによる映像配信だ。

高岡氏は、まだブロードバンドが充分に普及していない時代から、ショートフィルムに注目。映画監督の岩井俊二氏に依頼して、「花とアリス」を創ってもらった。

なぜテレビCM全盛期の時代にあって、いち早く、テレビCM中心の広告宣伝から、ブランデッドムービーを軸にしたマーケティングへと切り替えることにしたのか。

「20世紀型のメディアで広告宣伝をやり続けることに限界を感じていましたので、一度全部やめてみようと思ったのです」と高岡氏は話す。

外野からの批判を浴びながらも、ブランデッドムービーに賭けた理由を語る。

第1回、「なぜ反対を押し切って、動画に投資したのか」に続く。

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過去10年に比べて、動画の分野でも技術が大幅に進化。10年前には考えられなかったことが可能になってきている。スマホの小さい画面で映像を見るのはすっかり日常の風景だ。

そうした文脈の中で生まれてきているのが、AbemaTV(アベマティーヴィー)などの新サービス。高岡氏は「AbemaTVは絶対にうまくいく」と太鼓判を押す。

大きな変化に見舞われているのはクリエーター側も同じだ。新しい潮流に適応しないと生き残れない時代が到来している。

別所氏は「過去18年間は、映像産業や映像文化に関わる人たちが、さまざまな最先端の技術や作法を学ばないといけない時代だった」と振り返る。

そして、インターネットによって最も大きな変化を迫られているのが、ビジネスモデル。映画界も広告界もいまだに、20世紀型のビジネスモデルによって成り立っている。

インターネット時代における、映像分野の「21世紀型ビジネスモデル」について考える。

第2回、「映像の21世紀型ビジネスモデルは何か」に続く。

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ブランデッドムービーの最大のメリットのひとつ。それは、コストにある。

15秒、30秒のコマーシャルを1本つくるのに、だいたい3,000万〜5,000万円かかるのに対し、同規模の予算があれば、一流の映像作家を起用したハイクオリティのショートフィルムをつくることができる。

しかも、ブランデッドムービーの場合、YouTubeでの配信を中心にすれば、テレビ広告のようにCMを流す費用がいらないため、コストを大幅に抑制できる。

ブランデッドムービーのもうひとつのメリットは、国境を超えられることだ。

放送と異なり、インターネットは世界中に配信ができる。それだけに、とくに世界市場に打って出る企業にとって、ブランデッドムービーは費用対効果のいい投資になりうる。

ブランデッドムービーの可能性と、高いROIを生むためのポイントについて語る。

第3回、「テレビCMとは違う、ショートフィルムの魅力」に続く。

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高岡氏が、繰り返し強調するのが、日本企業の「マーケティングの不在」。プロのマーケターの有無が、グローバル企業と日本企業の差を生んでいると指摘する。

マーケティングの基本は、困っている人の問題解決を行うことだ。しかし、日本では、プロのマーケターがいないために、映画の世界でも、広告の世界でも、課題に対するソリューションが提示されないままになっている。

映像制作の面でも、マーケティング的思考が欠かせない。従来の作り方にとらわれている限り、いかに有名な監督がつくった作品であっても、顧客の支持は得られない。

では現在、ネスレ日本では、問題解決のためにどのようなマーケティングに取り組んでいるのか。そして、多くの企業のケースを見てきた別所氏の考える、動画マーケティングを効果的に活用するポイントは何か。

今求められる「マーケティング思考」を語り合う。

第4回「日本の企業にはマーケティングがない」に続く。

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戦後、日本が大きく成長した時代には、日本にも天才的なマーケター、イノベーターがいた。

高岡氏がその筆頭として挙げるのが、ソニーの盛田昭夫氏。ウォークマンという発明は「顧客が認識していない問題を解決した」という点で、確実にイノベーションだったという。

そのほかにも、セブンイレブンの鈴木敏文氏が生んだコンビニエンスストア、ヤマト運輸の小倉昌男氏がつくった宅配ビジネスなど、本物のイノベーターは存在する。

しかし、現在の日本における製品・サービスは、大半が“リノベーション”に甘んじている。

イノベーションとリノベーションの本質的な違いとは何か。イノベーションはどうすれば生まれるのか。イノベーションの本質について考えながら、日本を「マーケティング大国」に育てるためのヒントを探っていく。

第5回「イノベーションとリノベーション」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。

【第1回】なぜ反対を押し切って、動画に投資したのか
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(予告・本文構成:佐々木紀彦、撮影:遠藤素子、デザイン:名和田まるめ)

*目次
予告:ネスレ高岡×別所哲也が語る「新時代のマーケティング」
Part1:なぜ反対を押し切って、動画に投資したのか
Part2:映像の「21世紀型ビジネスモデル」は何か
Part3:テレビCMとは違う、ショートフィルムの魅力
Part4:日本にはマーケティングがない
Part5:イノベーションとリノベーション