IS戦闘員最大の「輸出国」チュニジア、抑止には若者に希望を
2016/07/08, NewsPicks編集部
中東読解11 若手外交官が見たチュニジア(後編)
IS戦闘員最大の「輸出国」チュニジア、抑止には若者に希望を
2016/7/8
昨日公開した前編に引き続き、在チュニジア日本大使館の山下将史書記官のチュニジア情勢分析の後編を掲載する。
自称「イスラーム国」(ISIL)には若者を中心とした多くの外国人が戦闘員として参加している。実はその最大の「輸出国」はチュニジアなのだ。
なぜ、「アラブの春」の優等生とも言われたチュニジアがそうなってしまったのか。若者たちが希望を持てる未来を描けるのだろうか。非常事態が未だ敷かれているチュニジアで外交活動に奮闘し、アラビア語を駆使しながら若者たちとの交流を続けた山下書記官の分析をお届けする。
なお、山下書記官が執筆した本文では外交青書に従い、ISの表記は「ISIL」としている。
■後編のポイント
・チュニジアはISILの外国人戦闘員の最大の「輸出国」
・高等教育修了者の30%が失業
・政治に失望し、「平等」なISILに引き付けられる若者たち
・日本政府はチュニジアに対する最大の援助国
・治安と経済の回復、そして若者が希望を抱ける社会となることがチュニジア安定化のカギ
newspicks.com
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注目のコメント
若手外交官のチュニジア現場報告、後編を公開します。チュニジアはIS戦闘員の最大の「輸出国」。アラブの春の優等生と言われたこの国がなぜこうなったのか。それを理解するカギは政治と若者の置かれた状況にあります。
将来の希望を込めて、扉のバナー写真は日本文化に親しむチュニジアの子どもたちの写真を選びました。現地語を駆使して地道に日本文化の普及活動をすることは、山下書記官をはじめ、多くの若手の現地語ができる外交官の重要な仕事の1つです。
政府高官から市井の人々までアラビア語で交流し、現地社会の歴史文化に理解のある現場の外交官だからこそ見えるものがあります。
前編はこちら↓
https://newspicks.com/news/1651124
中東読解のバンクナンバーはこちら↓
https://newspicks.com/user/9281/
【次回予告】
8月上旬の配信予定。初めての試みとなるフォトエッセイ。パレスチナやヨルダンで写真を撮り続ける若いフォトグラファーが手がける作品。テロや紛争だけではない、現地の人たちの等身大の様子。その時にしかない一瞬を切り取った写真から見えるメッセージの強さに息を飲みます。
【なぜこの連載をするのか】
「中東読解」は現場に入り込み、現地の人々と触れあい、本質を理解している実務家・研究者などに登場をお願いしています。一般的な知名度の有無はどちらでもよく、私が直接話したり、紹介を受けたりして、この人ならばと思う方々です。
日本から遠く、テロ、紛争といったイメージが強い中東ですが、日本人がもっと知らなければいけない地域。エネルギー供給源の国が多いことはもちろん、日本の国際社会での地位向上は企業活動や援助活動を通じて向上するものです。
単なる経済大国の時代は去り、日本への信頼や敬意といった価値が問われる時代です。日本のようなエネルギーに乏しい海洋国家は、他国とのつながり抜きには存在できません。外国のことを感じにくい環境の日本ですが、多くの国との友好関係があってこそです。その中東で奮闘する専門家の声はもっと届くべきでしょう。
「中東読解」からNewsPicksユーザーのみなさんが、一歩踏み込んで考えるきっかけとなればと思い連載を組んでいます。登場する専門家の方々も同じ想いです。次回もご期待下さい。2015年2月にチュニジアで潜伏調査(たいしたことはしてない)していましたが、滞在最終日近くに身元・所在を明かして、大使館員と意見交換させていただきました。その時に小さな大使館のほぼ唯一のアラビア語専門官として頑張っておられた山下さんとはフェイスブックで繋がって現地メディアの報道などをシェアしあっていました。翌月にバルドー博物館のテロが起きて、私が「何かあった時に」とか冗談を言って渡したカップラーメンとかが本当に役立ってしまったのかと気になった。
若い世代の失望感はチュニジア限らず世界各国で見られる現象だろう。
いち早く気付いた他のアラブ諸国は(表面的であるかもしれないが)若返りを実施してきた。33歳で首長職を受け継いだカタールや、若い息子達を積極的に全面に押し出すドバイや、ようやく第三世代が出てきたサウジなど。
それに比べるとエジプトなど北アフリカは揺れ戻しが激しい印象だ。
余談になるが、個人的にチュニジア人は裏表があるイメージ。普段の顔と、腹の中で考えていることの乖離が大きい。たまたまそういうタイプにばかり会ってしまったのかもしれないが。