リー・クアンユー後のシンガポール政治は盤石か

2016/7/4

「党は政府、政府は党」という一党支配

シンガポールは人民行動党(PAP: People’s Action Party)が自治政府時代の1959年から一貫して政権を担っている。
シンガポール研究を専門とする田村慶子北九州大学教授は、リー・クアンユー初代首相について「人民行動党が政府であり、政府は人民行動党である。私はこのことに何の弁解もしない」という発言を引用しつつ、「シンガポールの安定と繁栄が人民行動党の一党支配ゆえに実現されたことを誇った」と分析する。
そして、リーは「安定した一党支配こそが国家の生存と繁栄の前提であると考えられている」との見解を示す(田村慶子編著『シンガポールを知るための65章 第3版』、明石書店、2013年、p.312)。
つまり、リー・クアンユーは、一党支配こそがシンガポールを効率的に運営する最良の手段という立場を一貫して表明してきたのだ。
そのリー・クアンユーが2015年に死去したことを受けて、日本を含む外国メディアはシンガポールの安定性が揺らぐのではないかと懸念を示している。
しかし筆者は、シンガポールの安定性にはさほど影響が及ばないと考えている。本稿ではその理由を明らかにしたいが、その前にシンガポールの政治制度に対する理解が不可欠である。