【最終回】川村元気、自己愛とSNSが恋愛を殺した

2016/6/10

みんな自分が一番好き

──週刊文春で川村さんの連載小説、『四月になれば彼女は』が始まったところですが、「東京から恋愛が消えた」理由について、仮説はありますか?
川村:仮説もあるし、結論らしきものもでています。大きく2つあり、ひとつは、みんなが言うことですが「とにかくみんな自分が一番好きだ」ということです。自分が一番大事だという人にとっては、恋愛は一番非合理ですよね。
恋愛は相手がいる話です。ですから、恋愛した以上は、もはや自分のペースでは生きられなくなります。今10代、20代の自分大好きっ子たちは、恋愛すると、もう半端ない“ロス”になります。
なんで自分が好きなときに寝て、好きなときに好きな人と遊んじゃダメなの、と。いわゆる自己愛の典型ですが、その状態がオジサン、お姉さんになっても継続している気がします。
そして、もうひとつは言葉の問題です。恋愛したら、あなたのことを好きだと思う感情がありますよね。それを一応、「恋」とか「愛」という言葉にしないといけない。でも、それに無理があるというか、かなり複雑になっています。
電話もなかった時代は、恋している気持ちを伝えるのは簡単でした。携帯がない時代も、伝えやすかった。
でも、今はLINEの時代です。「好きだよ」を20人同時に送信できてしまう。