イノベーターズ・トーク
【慎泰俊×池上彰】世の中を変える伝え方
2016/4/25
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、イノベーターが時代を切り取るテーマについてトークを展開する。
第23回には、NPO法人Living in Peace代表理事の慎泰俊氏とジャーナリストの池上彰氏が登場する。
今回のテーマは、いかに社会的課題を「世の中に伝え、改善へと導くか」だ。
子どもの社会的養護に取り組んできた慎氏と、ジャーナリストであり、世界の出来事を分かりやすく広める伝道師でもある池上氏が議論する。
社会的課題は、一時的に関心が高まることはあっても、なかなか具体的な解決のアクションにつながりにくい傾向にある。メディアがいかに問題を伝えるのか、政府や自治体がどう取り組むべきかなど、論点は尽きない。
そこで、池上氏が自身の経験を振り返りながら、どのようにすれば社会に問題が伝わり、世の中を変えることができるのかについて語る。
さらに、慎氏が池上氏の「明示的に自己主張をしない」スタイルや、ジャーナリストとしての思いにも迫る。そこで明かされた池上氏の考え方とは。
二人の議論から、私たち一人ひとりが社会的課題にどう向き合うべきかが見えてくる。
世の中には数多くの社会的課題が存在するが、いまだ改善につながっていない問題も存在する。近年注目を集めている子どもの貧困も同じだ。それは一体なぜなのだろうか。
池上彰氏は近年子どもの貧困や里親問題などに関心を持って取り組んでいるが、「関わるようになってはじめて、その問題点に気づくようになった」と語る。
これに対して、これまで子どもの社会的養護に取り組んできた慎泰俊氏は「なぜ、メディアがあまり取り上げることがなかったのか」と疑問を投げかける。
池上氏は自身の経験を振り返りながら、社会的課題に対する「気づき方」が重要だと言う。
第1回「なぜ、社会的課題は改善されないままなのか」に続く。
どのような表現方法で社会的課題を伝えれば、世の中の人々を動かすことができるのだろうか。
池上氏は、人を動かすのは「エモーショナルな表現」であると語る。かつてスーダン内戦で注目を集めた「ハゲワシと少女」から「保育園落ちた日本死ね!!!」に至るまで、その表現は共通しているという。
これに対して慎氏は、池上氏がメディア側の人間として抱えている課題や、ソーシャルメディアへの考え方について問う。
第2回「エモーショナルな表現が人々を動かす」に続く。
池上氏は、いま最も世の中の問題を分かりやすく広める「伝道師」の役割を果たしていると言っても過言ではない。
しかし、その際に取り上げた社会的課題について「こうすべきだ」と主張することはほとんどない。「それはなぜなのか」と慎氏が迫る。
これについて池上氏は、あるテレビ番組がターニング・ポイントになったと語る。
第3回「なぜ、池上彰は自己主張しないのか」に続く。
慎氏が取り組んでいる社会的養護の問題について、池上氏は「子どもを育てることに対する圧倒的な予算不足」が問題だと指摘し、低所得の高齢者に3万円を配るのは「究極のばらまき」と批判する。
そして、現在の「シルバー民主主義」のなかで、発言力が弱い子どもの教育にどれだけ予算をかけられるのかを真剣に考えるべきだと主張。
そのために、日本が採るべき教育目標は明確だという。
第4回「日本の教育目標は『良き納税者を育てること』だ」に続く。
池上氏は、ジャーナリストの仕事は「真実に少しでも近づくために、事実を集めて構成すること」だとしながらも、「『真実はこれだ』という言葉が嫌い」であるとして、常に物事に対して謙虚でいたいと語る。
「事実の取り上げ方は主観的なものである」ため、「いろんな事実を集めても、実はわからないという恐れをいつも持っている」と明かす。
そのなかで、今ある社会的課題を改善させるためには何が必要なのだろうか。最終回も、熱を帯びた議論が展開する。
第5回「池上彰が考えるジャーナリズムの課題と可能性」に続く。
本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
【第1回】なぜ、社会的課題は改善されないままなのか
*目次
第1回:なぜ、社会的課題は改善されないままなのか
第2回:エモーショナルな表現が人々を動かす
第3回:なぜ、池上彰は自己主張しないのか
第4回:日本の教育目標は「良き納税者を育てること」だ
第5回:池上彰が考えるジャーナリズムの課題と可能性
(構成:菅原聖司、デザイン:名和田まるめ、写真:竹井俊晴)