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GEグローバルイノベーションバロメーター

経営者2748人が回答。世界一のイノベーション大国はどこか?

2016/4/18

GEが23カ国で調査

今、世界中がイノベーションに飢えている。

世界経済が低成長に悩まされる中、先進国も新興国も、イノベーションへの興味を強めている。日本でも、イノベーションという言葉を聞かない日がないほどにイノベーションがバズワードになっている。

では今、世界でもっともイノベーティブだと思われているのはどの国だろうか。そして、世界の企業幹部たちは、イノベーションに対してどのような問題意識を持っているのだろうか。

それを知るためのヒントになるのが、GEが世界23カ国を対象に実施している「GEグローバルイノベーションバロメーター(IB)」の調査だ。

今回で第5回となる本調査は、世界23カ国のシニア経営者層(合計2748名、その内、CEO、COO、CFO、CTOなどのCスイートが1915名)を対象にして、イノベーションに対する企業の取り組みなどについて聞いている。

2015年10月〜12月にかけて各国の言語で平均30分の電話調査を実施。日本でも103名の経営幹部が回答している。

この調査の主な結果を、以下に紹介していきたい。

日本は世界2位

まず、「イノベーションのチャンピオンだと思う国はどこか」という問いに対する答えは以下のようになった。

トップは米国(33%)で、それに続くのが、日本(17%)、ドイツ(10%)という構図だ。

日本は前年の3位から2位にランクアップ。逆に、ドイツは前年の2位より3位に転落した。日本が、世界のビジネスリーダーたちから、「イノベーションの国」として認識されていることがわかる。
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ただし、日本のリーダーは、「漸進型(インクリメンタル)のイノベーション」を好む傾向があることも確かだ。ゼロから一を生み出す「ブレークスルー型」ではなく、現在の商品やサービスを改善する「連続型のイベノーション」に強いと言える。

実際、連続型のイノベーションを好むと答えたリーダーの比率は、スウェーデンに次いで高くなっている。
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さらに、他国に比べて、スタートアップカルチャーを重視する姿勢が弱く、イノベーションのために他社とコラボレーションすることにもあまり積極的ではない。

「スタートアップカルチャーを重視する」と答えたリーダーの比率は、世界平均の81%を下回る80%になっている。
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また、「イノベーションに関するコラボレーションは利益を生む」と答えたリーダーの比率は54%となっており、対象国23カ国のうちで最下位。世界平均の77%を大きく下回っている。

ベストプラクティスとして、アイデアを活発に共有する「コネクテッドカルチャー」を生み出そうとするリーダーは他の国よりも少ない。
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日本はデジタル革命に消極的

今後のイノベーションについて、世界のリーダーたちは、とくにデジタル分野に注目している。多くのリーダーは、「今後10年間、アドバンスド・マニュファクチャリング(高度製造技術)がビジネス界を変革する」と予想している。

そうした中で、日本のリーダーたちは、デジタルに対する消極的な見方が目立つ。

たとえば、デジタル革命をポジティブに捉えるリーダーの比率は、日本の場合、31%にすぎない。この数値は、世界最下位だ。
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また、前回調査よりは改善しているものの、ビッグデータ分野の重要性に関する認識も他国に比べて低い。「データ・アナリティクスは重要だと思う」という問いに対して、肯定的に回答したリーダーの比率は40%にすぎない。これも世界で最下位だ。
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日本のリーダーたちは、雇用や仕事に関するデジタル革命の影響についても、前向きな回答をしていない。今後、ロボットなど機械が人に置き換わっていくかという問いに対して、置き換わらないと答えた比率が圧倒的に高い。
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デジタル革命を筆頭に、新しいブレークスルー型のイノベーションに対して日本は消極的だが、その背景にあるのは、必ずしも文化的な要素だけではない。経営リーダーの間で、中長期的なビジョンを持って投資をしようというマインドが弱いこともその一因だろう。

事実、「ブレークスルー型イノベーションのため、長期的なROIを重視する」と答えた日本の経営リーダーの比率は世界最下位だ。目の前の利益が優先されてしまい、長期的なイノベーションのための投資に積極的でない現状がうかがえる。
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本調査の一連のデータを見る限り、日本は今なお、世界に冠たる「イノベーション大国」だと言える。

しかし、IoT、AIなどデジタル分野でもイノベーションのリーダーになるためには、多くの課題がある。今のままでは、「世界第2位」の地位を維持することは難しいだろう。

では、どうすれば日本はイノベーションをもう一段スケールアップすることができるのか。

そうした日本の課題について、一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授にインタビューしているので、ぜひこちらもあわせて読んでほしい。

イノベーターズ・トーク:【米倉誠一郎】日本のイノベーションは「20世紀的」すぎる
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(バナー写真:iStock.com/Oko_SwanOmurphy)