住友商事、株式評価損358億円 インドネシア出資銀行で
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SPEEDAによると、住友商事は2015/2にTPG系企業等から計20%のBTPN株式を取得しました。そのときの買収価額はPBRにして2.9xです。そして、翌期に単体会計上、価値の「著しい下落(50%以上の株価下落。PBR 2.9xであるため必然)」により損失を認識したということかと推察します。連結では引き続き価値ありということで、減損は非計上。
なお、BTPNはインドネシアの中堅リテール向け銀行です。住商が20%を保有している他、SMBCが40%の大株主です。かつては米ファンドのTPGがマジョリティーを保有していました。
BTPNは利益を計上している会社であり、ROEは2006-2013年は20-30%程度、2014-2015年は15%程度です。
なお、SMBCでは同社の減損を認識しています。別記事へのコメントは以下の通り:
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日本企業を含めた外資企業による新興国(の金融機関)を対象としたM&Aでは、①のれんが多額に生じやすく、かつ②減損が発生しやすい構造にあるものと思います。
①の理由について、高い成長が期待されたり高いインフレ下にある新興国では、企業の資本蓄積が小さく途上であり、PBRにして3-5x程度のバリュエーションとなることがままあります。この例ですと、純資産(持分相当)の2-4x程度ののれんが発生します。
②の理由について、そもそも当該国のマクロ経済が世界経済の影響を受けやすい性質にあったりマクロ指標やインフレ率が歴史的にぶれやすかったりすると、当該国で活動を行う企業の収益も相当ぶれます。このとき、M&A時点で立てた計画が未達となることで、のれんが減損となるリスクがあります。
また、新興国では(特に金融機関など国民経済に直結する産業において)外資資本規制が存在することがあり、この外資資本規制の要請で外資企業は上場企業のマイノリティ持分しか取得・保有できないことがあります。このとき先に述べた計画未達による減損リスクの他に、M&A後であっても対象企業は引き続き上場企業であるため、株価下落により減損の兆候が発生することがありえます。外資企業が新興国ローカル企業を買う際に、マイノリティ出資でありつつも売り手から株価に対して高いプレミアムを求められたとすると、M&A後に株価が少し下落しただけで減損を検討しなければならない水準に突入してしまいますBTPNは時価総額でみるとインドネシアの銀行で第8位(SPEEDAによる)。
トップのBank Central Asiaは2兆7872億円、BTPNは1390億円。いわゆる中堅行です。
また、financial statementのリンクを紹介しておきます。
四半期
http://www.btpn.com/investor-relations/quarterly-financial-statement/
月次
http://www.btpn.com/investor-relations/monthly-financial-statement/
追記:たぐ ひろさんのコメントを読んで。確かにこの銀行のATMはみませんね・・・中堅行は中堅行でも、中堅のなかでも真ん中からやや下ぐらいの規模感です。インドネシアは、早晩、銀行の統廃合を行うでしょうから、そのときにどうなるか・・・