(Bloomberg) -- 資産家で前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏は7日、2016年の米大統領選に出馬しない決断を下したことを明らかにした。これにより見通しが不透明で、異例の展開となっている今回の選挙戦の不確定要素の一つがなくなった。

ブルームバーグ氏(74)はこれまで、今回の大統領選では候補者が極端に走っており、有権者を侮辱するものだと発言。出馬すれば選挙活動に自らの資産の一部をつぎ込む予定だった。同氏はブルームバ ーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの創業者で、過半数の株式を保有している。

同氏は「ブルームバーグ・ビュー」の論説で、「この数カ月間、私は多くの米国民から、二大政党のいずれにも属さない大統領候補として立候補するよう励まされてきたし、現在の候補者は望ましくないと考える一部の人たちからは、愛国的な見地から私が立候補することは義務だと言われてきた。このような励ましを私は感謝しており、真剣に立候補を検討してきた。そして投票アクセス規定により、回答期限が訪れた」と説明。「しかしデータを検討した結果、出馬しても勝てない可能性があることが明らかになった。幾つかの州を制することは可能でも、大統領当選に必要な選挙人票の過半数には足りない見込みだ」と述べた。

計画を公表する立場にないとしてブルームバーグ氏のアドバイザーが匿名を条件に明らかにしたところによれば、ブルームバーグ氏は副大統領候補としてマイケル・マレン元統合参謀本部議長を考えていた。

ブルームバーグ氏のアドバイザーは、二大政党以外の立候補に必要な一定数の有権者の署名を全州で確保できる見通しだと述べていた。その根拠は民主・共和両党で、政治の経験に乏しいか、ないしはイデオロギー色の強い候補が有力視されていることだった。共和党の候補選びでは不動産王で著名人のドナルド・トランプ氏がトップを走り、民主党は民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース上院議員がクリントン前国務長官を追走している。

またブルームバーグ氏の出馬断念は、ヒラリー・クリントン氏がこの2週間の民主党候補レースで確実に獲得代議員数を積み増す中で発表された。 ブルームバーグ氏とクリントン氏は数十年来の知己であり、特に2001-09年はニューヨーク市長とニューヨーク州選出の上院議員として密に接していた。

有識者やアナリストは、現行の二大政党制の下でブルームバーグ氏の当選に向けた現実的な道筋があるかどうか明確でないと判断していた。2月24日にAP通信が実施した世論調査では、同氏に投票するとした登録有権者は7%で、29%が投票を検討すると回答していた。2大政党に属する有権者の6割がブルームバーグ氏に投票しないと答えた。

ブルームバーグ氏は論説で「共和党が上下両院で過半数を握る中、私が立候補すればトランプ氏ないしテッド・クルーズ上院議員の当選につながる可能性がある。自分の良識からして、これは冒すべきリスクではない」と説明した。

ブルームバーグ氏が当選を果たすには、十分な数の州で勝利を収め、選挙人票の過半数である270票以上を得ることだった。どの候補も270票を獲得できない場合、憲法の規定に従い下院での決選投票に持ち込まれることになるが、この方法が使われたのは1800年と24年の大統領選を受けた2回のみ。共和党が下院の過半数を占めている。
 
原題:Michael Bloomberg Says He Won’t Run for President in 2016 (5)(抜粋)

(4段落以降に米大統領選の背景などを追加して更新します.)

麗英二 etoshi@bloomberg.net, 城塚愛也 ashirotsuka@bloomberg.net, 渡辺漢太 kwatanabe22@bloomberg.net, 大久保義人 yokubo1@bloomberg.net, 城塚愛也 ashirotsuka@bloomberg.net, Henry Goldman hgoldman@bloomberg.net, Craig Gordon cgordon39@bloomberg.net.

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