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グーグル自律走行プロジェクトが前進か

自動運転でAIを運転手と認定。ロボ・タクシーも実現化に近づく

2016/2/18

グーグルの自律走行車プロジェクトにとっては、画期的ともいえる判断が先頃米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によって下された。自走車のソフトウェアやAIシステムを運転手と同等とみなす、というものである。

自走車なんだから運転手がいなくて当たり前だろうと思われるだろうが、これまでそれが許されていなかったのである。

自走車がテスト走行する際には運転具合を監督する人間が乗り込まなくてはならないということになっていた。何か問題が起きたときには人間がコントロールを取り、車のハンドルを切ったりブレーキをかけたりできるようにすることが定められていた。これが自走車の開発、テスト、実用化への大きな壁になっていたのである。

正式な自走車規制に先立って、カリフォルニア州も1月に規制草案を発表していたのだが、その内容は人間のドライバー同乗が必要というものだった。つまり、自走車が実用化されても人間が一緒に乗って監督している必要があり、自走車だけで走り回ることはNG。また、人間が緊急時にコントロールを取り上げるには、ハンドルやブレーキペダルが必要になるということだった。

実はグーグルが独自に設計、開発したかわいい自走車グーグル・カーには、スタートとストップボタンがあるだけで、ハンドルやペダルがない。カリフォルニアの規制草案は、グーグルを消沈させただけでなく、その通りに最終化されると、このデザインもやり直しになる。最も問題だったのは、自走車は技術的にはまだまだ未熟という印象を社会に与えてしまったことだった。

そうした問題が、今回の判断で晴れたということになる。グーグルは、昨年11月に人間ドライバーを必要としない自走車のデザインと共に質問事項をNHTSAに提出しており、それへの返答という形でこの連邦レベルの判断が下りた。

ただし、これ自体が規制ではなく、現行の安全規制が自走車ではどう解釈されるのかを明解にしただけのもの。自走車の実際のガイドラインは、今後6カ月にわたって進められるイニシアチブで定められるようだ。

ロボ・タクシーがぐっと身近に

今回の判断で、いろいろなことががらりと変わる可能性がある。

まず、ロボ・タクシーがぐっと身近になったことだ。これまで自走車は、いくつかの段階を経て路上に登場すると考えられてきた。

現在すでに一部の自動車に搭載されているオートクルーズや自動縦列駐車も自走車への一歩とすれば、次に人間のドライバーが一部だけ運転する必要のある段階があり、さらにその次に自走車が自律走行するが、人間が同乗して前方を監視していなければならないといった段階がある。

自走車が勝手に走り回る完全なロボ・タクシー実現は、やっとその後とされていたのだ。ところが、自走車がドライバーと見なされるのならば、人間が監督する必要などないということだ。

また、自走車のデザインもはっきりする。グーグル・カーのように、人間が手を出す必要のない、あるいは手が出せないすっきりしたデザインが可能になる。自動車デザインのレガシーを持っている大手メーカーだけでなく、そんなレガシーが何もないスタートアップの自走車メーカーが乗り込んできやすくなるのかもしれない。

何よりも明確になったのは、法律上の問題だろう。自走車が自律走行していても、人間が監督として乗っている場合、もし自走車が事故を起こしたらそれはどちらの責任になるのか。

今回の判断で、自走車それ自体がドライバーであるとされたことで、自走車のソフトウェアやAIのシステムをつくったメーカーに責任があるとされることになる可能性が高い。もちろん、持ち主がハッキング(改造)などをしていないという限定つきだが。

私自身は、先だってテスラのモデルSの試乗運転でオートパイロットを試し、「もうこれはかなり自走車に近い」と感じてしまった。今回の判断で、自走車が予想以上に早く実用化に近づく予感がする。

*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。