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スーパーボウル、5年後はテレビで観戦しないかも

2月8日夜(米国時間)に行われたアメリカン・フットボールの「スーパーボウル」。たくさんの人が試合を(コマーシャルも含めて)オンライン上で視聴することができたはずだが、大多数の米国人はCBSのもくろみ通り、テレビの大画面で観戦した。

しかし、5年後にはそうならないかもしれない。インターネットで動画をストリーミングする視聴者が増加し、有料放送を解約したり、契約するチャンネル数を減らしたりする人々が多いことを踏まえ、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)は、テレビを解約しそうな視聴者を取り込もうとして、さまざまなテクノロジー企業や通信会社に精力的に声をかけている。

「サーズデーナイト・フットボール」のストリーミング権を売り込んできたNFLは、当初はアップル、アマゾン、ヤフー、フェイスブック、ベライゾン、AT&Tと話し合いを進めていた。

これらの企業の動きに詳しい情報筋によれば、このうち数社があまりの高値に尻込みしたが、AT&T、ヤフー、ベライゾンは入札に応じると見られる。ヤフーは昨年、NFLのロンドンゲームをライブ配信したし、ベライゾンは現在、スマートフォンでアメフトの試合をライブ配信している(ほとんどのタブレットでは不可)。

NFLとこれらの企業は、本件についてコメントを避けた。

前出の情報筋は公開されていない話なので情報源は伏せてほしいと前置きした上で、NFLは長期契約を考えているわけではないと明かした。

NFLは今後数年かけてさまざまなメディアや配布モデル、技術を試したい考えだという。2021年に最大の放送権契約が切れるまでにはNFLはさまざまなデジタル著作権を売る準備ができ、さらに契約料を得ることになるだろう。

ライブスポーツはCMの間も視聴者を画面前に座らせる

もしテクノロジー企業や通信会社が国民的人気のアメフトの試合をライブ配信する契約を結ぶことができるなら、昔ながらの放送会社やケーブルテレビ会社にとっては打撃となるだろう。

ライブのスポーツは、視聴者がリアルタイムで見てくれる数少ない番組のひとつだ。つまり、DVRの録画を見るのとは違ってコマーシャルの間も視聴者を画面の前に座らせることが容易になる。

だからこそ、ESPNの加入者1人当たりの料金があれほど高額になるのだし、放送局がスポーツ試合の放映権にあれほどの金額を払おうとするのだ。

ケーブルテレビから顧客を奪おうと目論むテクノロジー企業は、アメフトの試合なしでは苦戦を強いられるだろう。だが、NFLの試合の放映権は安くない。NFLが提示する1試合当たりの価格は、米国のテレビで放映されるどのスポーツよりも高額だ。

ごく最近の契約では、2016年から2017年シーズンの「サーズデーナイト・フットボール」5試合に、CBSとNBCがそれぞれ1試合当たり約4500万ドルを支払った。ヤフーは2015年に行われた「ロンドンゲーム」のストリーミング権に1700万ドルを支払った。ニューヨーク時間の午前9時半に開始された同試合は、チームの地元ではTV放映された。

情報筋によれば、ごく最近行われた話し合いでは契約を結ぶ可能性のある企業の少なくとも1社が価格の高さを理由に断念したという。アップルとグーグル傘下のユーチューブは今のところ、サーズデーナイトのデジタル著作権の入札に本腰を入れるとは見られていない。昔からのパートナーであるCBSとNBCも、現在のテレビ放映契約に関してこれ以上支払う気はないようだ。

ストリーミングに名乗り上げる企業とのミーティングは始まったばかり

さまざまなメディア企業やプラットフォームが契約を結ぶ可能性があるため、価格や構造は複雑化しそうだ。今年の例を見れば分かる。CBSは7インチ以上のどんなデバイスでもオンラインで「スーパーボウル」を見られるようにした。スマートフォンや極小のタブレットなど、7インチより小さいデバイスでのストリーミングはNFLとの契約によりベライゾンが独占している。

NFLは放映権に関して、これまでとは異なるプラットフォームでさまざまな視聴者にアピールできるよう、満遍ないアプローチを心がけてきた。ベライゾンとヤフーのライブ配信に加え、NFLはビデオクリップの権利をツイッター、ユーチューブ、フェイスブックに売った。

前出の情報筋によれば、NFLとストリーミングに名乗りを上げている企業が行う今年のミーティングはまだ始まったばかりだという。結論は少なくとも数週間先になる見込みだ。

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Scott Soshnick、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:Luca_Boveri/iStock)

©2016 Bloomberg News

This article was produced in conjuction with IBM.