2016年のISの動向、そして私たちにできる対策とは(菅原出)
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「本丸」が弱体化し、各地域で混乱・対立といった現地の文脈を活かしたテロや襲撃が主体になるというストーリーは、「対テロ戦争」後のアル=カーイダが選んだ道と同様で、現実性は高いと思う。
本丸以外の動きは2つに分けられ、記事に倣うと「支部」と「支持者」ということになる。
・リビア、エジプト、ナイジェリアなどでは、中央政府の統治が不十分で権力の空白地帯が存在する。こちらでは、支部などの形でマクロな組織としての活動が続く。
・欧州や東南アジアなどでは、よりミクロなレベルの動きが中心になる。これは、国家権力の統治というよりも、政治的・経済的な格差などが問題となる。
テロの今後については、権力の空白や国内格差といった各地の事情次第なので、予測は困難だと思う。
欧州での危険について敢えて予測するなら、空爆強化やイスラームに対する抑圧の影響で、2016年はホームグロウン・テロの動きは活発になるだろう。ただ、治安当局側の対処も強まるはずなので、実際に発生するテロのリスクはそこまで増えないかもしれない。
2017年以降はISの本体が弱体化する可能性が高い。地理的な支配がなくなるというのは宣伝活動にもマイナスに働き、欧州などでのリクルーティングも落ち着くのではないか。
注目のコメント
今回は、現在のISの脅威を見る上で重要なポイントに絞って書かせていただきました。ちょうどこの原稿を書いた後の12月26日にISのメディア部門フルカーンがバグダーディー指導者の音声声明を発表しています。かなり激しい口調で全世界のムスリムに対して聖戦を命じています。こうしたISの公式声明が出た後には、必ず反応して行動する「支持者」が出てきます。
ラマディをイラク軍に奪還されたことに対するダメージコントロールやこの声明発表のタイミングを考えると、次の金曜日1月1日かその次の8日あたりは要警戒日です。菅原プロにはタイトな字数制限のなかで、重要な点をコンパクトにまとめていただきました。
安全だと言い切れる場所はありません。常に渡航先の治安やリスクについては、自ら調べる習慣を付けることが重要です。「知ること」は「安全対策」との指摘その通りだと思います。外務省の「たびレジ」は下記から登録できます。
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
危ないから行かない、ではなく、的確に現地の治安情報を把握した上で、考えて行動することの重要性が指摘されていると思います。「面倒くさいことを確実に行うことが危機管理の基本」、外務省で危機管理やテロ情報分析に関わった私としても、この意見はその通りだと思います。
関連のNewsPicksオリジナル記事もありますので、ご参照下さい。
・菅原プロのパリテロ後の緊急寄稿
https://newspicks.com/news/1278527
・東南アジアのテロ脅威について(「リアルタイムざっくりASEAN」)
https://newspicks.com/news/1264623
その他のパリテロ特別寄稿
・末近浩太氏(ロンドン大研究員・立命館大学教授)
https://newspicks.com/news/1280593
・高岡豊氏(中東調査会上席研究員)
https://newspicks.com/news/12826302015年は常態化でなくとも、テロが身近で起きる現実を突きつけた一年だったと感じる。そして菅原さんの指摘するマレーシアやインドネシアの動きは確かに怖い。
本文から少し外れるが、パリの同時多発テロについて高校生の視点で書かれた記事がある。果たしてテロが身近で起きた時に、彼女たちのように人種、宗教に偏見を持たずに受け入れられるのか。日本はもっとヒステリックになるのではないかと危惧してしまう。
私の見たパリ同時多発テロ事件 -中江彩(17)
http://seishun.style/656