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ただ売るだけではダメ

ロボットをどうやってマネタイズするのか

2015/12/24

ロボット会社のビジネス・モデルは何か? これは興味深い問題だ。

つまり、ロボットを開発する会社はどうやって収入を得るのかという問いだが、「そんなもの、当たり前だろう。ロボットを売って金を儲けるのだ」と思われるだろうか。

確かにそうした会社もあるのだが、最近アメリカで出てきているロボット会社を見ると、必ずしもそれだけではない。ロボットを中心にして、いろいろまわりにサービスを提供するというタイプが見受けられるのだ。

たとえば、エアウェアというドローンの会社。同社は、ドローンそのものを売るのではなく、ドローンに付けるボックスを売って商売にしている。このボックスを付ければ、同社のプラットフォームが利用できるようになり、さまざまな開発が可能になる。

サードパーティーの開発者は、たとえば農場でドローンを利用したいという顧客のために、ドローンが撮影した画像を分析したり、湿度センサーのデータから農地の状態をモニターしたりできるようなソリューションを独自に開発して、顧客に提供できる。

つまり、エアウェアはどんなドローンにも付けられ、どんなソフトウェアにも対応できるようなプラットフォームを仕立てることによって、B2Bのソリューション・ビジネスがそのまわりにたくさん生まれることを狙っているのだ。ドローンというハードウェアを売る商売ではないが、ドローンが広まることを見越し、その先をいくビジネスといえる。

ハードウェアだけでなくバックエンドのしくみも

また、病院内でシーツや食事、薬品を自律搬送するロボットを開発したエーソンという会社は、ロボットのハードウェアだけでなく、顧客が複数のロボットを管理するためのバックエンドのしくみを作っている。

ロボットが何台あっても、今どのロボットがどこを走行しているかがわかるだけでなく、1週間に何度ロボットが走行して、どれだけ仕事をしたかなどもわかる。

この中には、薬品の扱いを管理するしくみもある。薬局から出ていく医薬品をトラックして、患者の元まで紛失することなく確実に届けられるようにモニターするのだ。ロボットは、病院内の物流の大きなネットワークの中で、一つの役目を果たしているという位置づけだ。

最近ちょくちょく見かけるのが、店頭ロボットである。「いらっしゃいませ」などと、普通の話し言葉で客を迎えた後、客が探している商品棚まで案内していったりする。客はロボットと一般の言葉で話せるだけでなく、探している商品(たとえば、ネジなど)をロボットの前にかざすだけで、ロボットがそれを認識して売り場まで連れて行ってくれるのだ。

商品棚のところで、そのネジに関してもっと詳しい情報が欲しければ、それもロボットが表示してくれる。また、案内している間に、店内のあちこちでやっているお得なセールを広告としてアピールすることも忘れない。

自然言語での会話、案内、広告と、それだけでも有能だが、最近新たに開発されている店頭ロボットには、在庫管理までできるものがある。店内をスキャンして、商品棚で品薄になっているものを検知するのだ。こうなると、POSのシステムの中にロボットが組み込まれているというタイプになるだろう。

アプリ開発者を集める家庭用ロボットも

来春の出荷が待たれる家庭用ロボットのジーボも、ただロボットを売ろうというわけではないらしい。ジーボは、MIT准教授で何十年にもわたってソーシャル・ロボットを研究してきたシンシア・ブレジール氏の手になるもので、クルクルと動くジーボの中身は頭のいい小さなコンピューターだ。顔の表情が映し出される部分は、ちょうどスマートフォンのように四角い。

ブレジール氏は、ジーボのまわりにロボットのアプリ開発者を集めようとしているようだ。ちょうどアイフォーンやアンドロイド・フォンはアプリ開発者のおかげで面白い使い勝手が増えたように、開発者がジーボ用にいろいろな開発をすることで、家庭でジーボの果たす役割がどんどん増えるというアプローチだ。

こちらも、ロボットを売るだけでなく、そのまわりに開発者によるエコ・システムのようなものを築くことによって、ロボットもビジネスも面白くしようというアプローチ。

B2BであれB2Cであれ、こうして見ると、ロボットは単体としてよりも何かもっと広いしくみやビジネス、楽しみ方の中で捉えられるようになっているのだなあ、と感じるのである。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやシステム、ソリューションが一組になっている。ハードウェアが得意な日本のロボットだが、これからのロボット開発会社にとっては、このソフトウェアの部分は大きなヒントだと思うのである。

(文:瀧口範子、写真:Fellow Robots)

*本連載は毎週木曜日に掲載します。