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SORABITO代表・青木隆幸インタビュー【組織編】

愛知県から世界へ。建機市場のAmazonになれるか

2015/12/18
「日本の優秀な建機を世界中に届ける」。2014年5月に創業したSORABITO株式会社は、中古建設機械の売り手と買い手をつなぐ世界初のマーケットプレイス「ALLSTOCKER」のβ版を今年3月にローンチ、はやくも世界150カ国超のユーザーに利用されている注目のスタートアップだ。今秋には総額1億円超の出資を受け、組織の体制強化にも乗り出している。急成長のさなかにある同社のCEO・青木隆幸氏に、組織づくりのビジョンを聞いた。
前編の【事業編】はこちらから。

21歳ではじめた建機販売から、新たなマーケット構想が生まれた

──SORABITO創設に至るまでの活動を教えてください。

僕の実家は起業家一族で、父はもともと愛知県の地元で建設業、不動産業を経営しています。そのほかにハワイでイチゴ栽培、イギリスで造園業なども手がけていて、昔から「興味が湧いたことにはどんどんチャレンジしろ」と教えられてきました。

その教育のおかげか、僕自身も興味をもったことには全力でのめり込んでいく性格です。趣味がコーヒーを淹(い)れることなんですが、それが高じてコーヒー焙煎(ばいせん)の専門店で半年間ほど修業したこともあります。

初めて自分で事業を立ち上げたのは21歳のころです。当時、父が50台ほどの建機を保有しており、それらを売ることにとても苦労していました。そこで試しにネットに情報を載せてみると、すぐに買い手が見つかったんです。

「これはチャンスがある!」と感じて、父が営む建設会社で、建機の買い取り販売を行う独立採算制の事業部をつくりました。ネット上での買い取り販売という従来の建機販売にはないスタイルを確立し、最初の2週間で売り上げが300万円を突破しました。

その当時は、すべての業務を自分で行っていました。すべてというのは、予算ゼロから資金を集めることにはじまって、それを元手に建機を買い取って整備し、必要としている人に販売、手元に届けるまでの全工程です。単なるオンライン販売ではなく、整備や引き渡しも含めたすべてのプロセスに関わってみたいと思ったんです。

ツナギを着て油や泥にまみれながら建機の整備をしたりもしていました。子どものころから建機への憧れがありましたし、そうした作業も含めて好きなんです。

その後も事業は順調に成長し、数年後には案件獲得数で業界ナンバーワンを取るまでになったのですが、同時に中古建機取引の問題点も多く感じるようになりました。旧態依然とした市場の非合理性に疑問を感じてしまい、「これをITの力でなんとかしたい、もっとフェアなマーケットを作りたい」という思いから、学生時代の仲間2人とともにSORABITOを設立しました。

青木隆幸(あおき・たかゆき) 1985年生まれ。建設業・リサイクル業・不動産業など複数の事業を営む家系に生まれ、10代の頃から新規事業の企画・設立に携わる。早稲田大学大学院修了後、建設機械の売買事業を設立。立ち上げから僅か10ヶ月でスケールアップを行い、事業を成功に導く。2014年「SORABITO株式会社」を設立。

青木隆幸(あおき・たかゆき) 1985年生まれ。建設業・リサイクル業・不動産業など複数の事業を営む家系に生まれ、10代の頃から新規事業の企画・設立に携わる。早稲田大学大学院修了後、建設機械の売買事業を設立。立ち上げから僅か10ヶ月でスケールアップを行い、事業を成功に導く。2014年「SORABITO株式会社」を設立。

建機販売のアマゾンに。本気で世界標準を目指す

──現在の会社規模はどれくらいでしょう?

現在のメンバーは10人、外部スタッフも含めると16人ほどで活動しています。組織として重視しているのは、メンバー一人ひとりの個性が生きる場をつくること。「ALLSTOCKER」のサービスを充実させて世界中に浸透させるという目標はもちろんありますが、それと同時に、各人の経験や才能を存分に生かせる組織でありたいと思っています。

いま事業拡大のために新たなメンバーを募集していますが、従事する分野を限定する必要はないと考えています。極端に言えば、建機をはじめとする産業機械を扱うことにとらわれなくてもいい。その人の能力を引き出して一緒に働くことを重視しています。

──SORABITOで働く面白さは、どんなところにあると思われますか?

「ALLSTOCKER」は、すでに150カ国以上のユーザーとの取引があり、国の数だけ見ると成果が出ているようにも思われますが、ユーザー数や取引台数においてはまだまだこれからです。決済機能を備えた正式サービスは11月にスタートしたばかりですし、まさに今からサービスの強化を重ねて伸ばしていこうという段階です。

サービス開始から半年がたち、ひとまず累計掲載台数1万5000台、掲載総額450億円を突破しました。近いうちに月間100台の取引をクリアしたいと思っていますが、その後も立ち止まらず規模を拡大させて、世界中の建機が出品され活発に売買される状況にすることが目標です。また、今は建設機械がメインですが、農業機械など産業機械全般へと水平展開させて、さらに拡大させていきたいと考えています。

われわれがつくりたいのは、「ALLSTOCKER」という新しい標準です。「Amazon」のように世界中に浸透して活用されるスタンダードを、大型で高額な建機という商品のマーケットで実現したい。すでに完成された既存のサービスに携わるのではなく、これまでにない新しい価値を、自分たちで一つひとつ構築し打ち出していくという醍醐味(だいごみ)を共有してもらえたらと思っています。

SORABITOの東京オフィスは八丁堀にある。日本最大の建機メーカーをはじめ、建設業界の主要企業が多く集まるエリアだ。

SORABITOの東京オフィスは八丁堀にある。日本最大の建機メーカーをはじめ、建設業界の主要企業が多く集まるエリアだ。

「宇宙規模でサービスを模索する」というカルチャー

──組織づくりにおいて目指しているイメージを教えてください。

メンバーが一人増えれば、その人の能力を生かしてさらに新しいチャレンジができるようになります。人材が増えれば増えるほどにその可能性は拡大するわけで、できることの範囲が広がっていくことが楽しみで仕方ありません。

たとえるなら、新大陸を目指してみんなで冒険しているような感覚です。自分たちなりの“新しい正解”や“スタンダード”を求め、まだ見ぬ目的地に向かって船に乗っているイメージですね。

ただ、「誰よりも先に」という焦りはありません。自分たちが作っているサービスには揺るぎない価値があると信じているので、全員がそこに向かって夢中になって進んでいければいいと思っています。

──最後に、SORABITOという社名の由来を教えて下さい。

「SORABITO」は、「宇宙人」を意味しています。僕の地元の愛知県では最適と思われたサービスであっても、日本全国に浸透させるのは難しいかもしれない。日本国内では良しとされたシステムが世界では通用しないことだってあるでしょう。地球や宇宙の規模で考えればなおさらです。

だからわれわれは、愛知県人としてでも日本人としてでもなく、宇宙人として地球を俯瞰(ふかん)で眺めたときに、正解だと思えることを実現したい。そういう思いを込めています。

われわれは本気で世界標準のプラットフォームになることを目指しています。「まずは国内から」というアプローチではなく、最初からグローバルなフィールドでチャレンジができる。そこに面白さを感じてもらえる方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。

(聞き手:呉 琢磨、構成:西門和美、撮影:オカムラダイスケ)