【慎泰俊×五十嵐隆】日本の小児医療が抱える課題と今後の変化
コメント
注目のコメント
というわけで、日本の小児医療についての対談記事の後編です。関心のある方は是非にお読みになってください。
晩産化が発達障害に影響を与えているかもしれないという仮説は、なるほどなと思わされました。今後もこの傾向は続くと思われるので、子どもの内側をサポートする仕組みが必要になるが、まだ制度が追いついていない状況。
またGenetically Modified赤ちゃんの是非についてのコメントも、すごく参考になりました。一般人が言ったら普通に聞こえがちですが、これを五十嵐先生が言うことの意味は大きい。
一方で、僕が過ごしている途上国では、20人に一人の子どもが5歳の誕生日を迎えられない。お医者さんが健康診断・衛生指導を定期的にするだけでそんな悲劇ははるかに減らせるはずで、日本の小児医療が貢献できることは大きいと思います。
ちなみにカバーページの写真は、成育の手術室の入り口です。子どもが怖がらないように絵が描かれています。小児医療に関する論点は多岐にわたるのですが、それはまた他の社会的課題も同様です。
ビジネスで経験を積んだ方がソーシャル・イシューの分野で活躍し始めていますが、それもまだ途上。病院経営も含めて、プロフェッショナルが参入した方が課題解決へのスピードが高まることに間違いありません。
個人的にも、引き続きこうしたトピックを取り上げて行ければと思っています。幾つかの補足を、下記のとおり書き記します。
1.小児慢性特定疾病(国が指定した子どもの慢性疾患)
”小児慢性特定疾病情報センター(http://bit.ly/1Lq5JDa)”を起点に、慢性疾患を抱える子どもとその家族への支援が、医療機関だけでなく地域の保健センターや教育機関などに広がっていくことを目指しております。
2.思春期医療
たとえば「幼少期に心臓の手術をした女の子が、妊娠・出産を考える」「思春期に精神疾患を患った女の子が、出産・育児に直面する」「先天性疾患を持って生まれた男の子が、結婚を考える」といったとき。それぞれがぞれぞれの過去を重く背負って、いつか来るはずであった未来を諦めてしまうケースが起きています。
こんな時、専門職による適切な情報提供と支援があれば――小児科医に求められる機能は、年齢を超えて大きくなりつつあります。
3.チャイルド・デス・レビュー
昨年に本研究を実施しましたが、(http://bit.ly/1SL1Nm1)これはあくまで一度きりのパイロット・プログラム。
こうした客観的なデータに基づき、窒息や転落などの不慮の事故死を減らすため、国に死因や事故の状況を登録し再発防止策を講ずる仕組みが整備されることを望みます。
4.発達障害
昨今、発達障害児のためのクラスを設けて学校現場で医学的見地を取り入れた教育を施すことで、子どもの成長は健常児とほぼ同水準に到達させられることが分かってきております。
医療・福祉だけでなく、教育の世界でも個別化・オーダーメイド化の潮流が来ているのは承知のとおりですが、今後ますます丁寧に次世代の個性を育む支援と体制が求められています。
5.出生前診断
そもそも社会的な理解と国の制度設計の追い付いていない中で始まってしまったこの診断が、公正な倫理観に則って議論されずに世の中の功利主義的思想に押し流されている現状自体が問題であると考えます。
便利な技術は、そこにどれだけの学術的な価値があろうと「果たして人類は、何を大切にすべきなのだろう?」という、哲学的・倫理学的な視座を以てして自問自答する必要を感じます。それは、デザイナーベイビーの問題にとどまることは無く、エネルギー問題や人口問題といったソーシャル・イシュー全般に言えることだと思います。