[東京 4日 ロイター] - ホンダ<7267.T>は、タカタ<7312.T>製エアバッグ部品のインフレ―ター(エアバッグを膨らませるためのガス発生装置)を今後、新たに開発する車に使用しないことを決めた。ホンダの岩村哲夫副社長は4日、その理由について、タカタが同意した米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の指令に基づいて「使わないことにした」と説明。タカタ製インフレ―ターの使用停止を発表したのは、ホンダが国内メーカーで初めてだが、今後、他社も追随する可能性がある。

米当局の指令(同意司令)は、タカタは硝酸アンモニウムを使用したインフレ―ターによる新規契約を10月末以降は結ばないというもの。

タカタはエアバッグを膨らませるためのガス発生剤として、高温多湿に弱いとされる硝酸アンモニウムを使っている。米当局はこの硝酸アンモニウムが米国内で7人の死者と約100人の負傷者につながったエアバッグの異常破裂を引き起こした要因とみて、同国内での硝酸アンモニウム使用による受注の中止を強く要請した。

日産自動車<7201.T>はまだタカタとの取引に関する方針を示していないが、今回の同意指令を受けて「大変驚いており、失望した」(広報担当者)としている。日産は2日、静岡県での衝突事故でタカタ製エアバッグの異常破裂により女性がけがを負った可能性が高いと発表したばかり。

ホンダは、タカタから提出された内部書類を検証した結果、タカタがインフレ―ターの試験データについて不適切な報告を行っていたとみられる情報が認められたとして、NHTSAに適宜報告していたと説明。タカタには「第三者の検証をお願いしており、検証によって明らかになる事実を基に話し合いをしていく」(岩村副社長)という。

ホンダはまた、新たに開発する車すべてでタカタ製インフレ―ターの使用を停止すると同時に、現在生産中の車についても、タカタ製インフレ―ターの採用を段階的に減らし、2016年末までに硝酸グアニジンという別の材料を使っているダイセル<4202.T>やオートリブ<ALV.N>などの他社製に切り替える方針を打ち出した。

ホンダはタカタの最大顧客で、3月末時点でタカタにも1.2%出資する。株式売却の可能性について、岩村副社長は「コメントできない」とした上で、「一般的に申し上げて、当然ながら中長期的な取引の大きさを考慮しながら、株は保有させてもらっている」と語った。

タカタは内製インフレ―ターだけでなく、ダイセルなど他社製インフレ―ターを採用したエアバッグも生産している。タカタは今回の指令を受けて、インフレ―ターの内製比率を低下させるほか、同社が強みとしていた硝酸アンモニウムに代わり、硝酸グアニジンによるインフレ―ターの供給を今後、拡大していく方針を示した。

独立系株式調査会社アドバンスト・リサーチ・ジャパンの遠藤功治シニアアナリストは、タカタについて「内製インフレ―ターを搭載したエアバッグは利益率が高い。他社製を使う比率が高まれば、利益は減るだろう」と指摘。ブランドイメージの低下したタカタ製エアバッグは他社に比べ「安値で受注していかないと厳しい」ともみており、制裁金や裁判費用も今後かさむとみられる中、「収益・財政基盤が大幅に毀損される恐れがある」との見方を示している。

*内容を追加して再送します。

(白木真紀、田実直美 編集:石田仁志)