デジタル革命は、経済を縮小させるのか

2015/11/2

老人が有利な時代がくる

佐々木 前回の対談では、「テクノロジーが人間の生き方を変えていく」という話になりましたが、現在進行中のIT革命は、現代人の生活をこれからどう変えていくのでしょうか。
佐藤 200〜300年ぐらい前の産業革命だと、基本は動力の革命じゃないですか。重いものを持ち上げる力を、いままでの何千倍、何万倍というレベルまで上げた動力革命だったと思うんです。
でも、最近のコンピュータの進化は、人間の精神の拡張にまでおよんでいる。今まで頭の中だけに閉じていたものが、あらゆるところにつながっていく。知性の革命といえるかもしれません。
私たちの計算能力はまだ個体のレベルにとどまっていますけど、多分10年後、20年後には、あり得えないほどの知性を私たちは持ってるような気がしますね。それは脳に埋め込むタイプなのか、はたまたiPhoneみたいに打ち込んでいくタイプなのかわかりませんけど。まあ、すでに端末だけでもめちゃくちゃな情報量を私たちは持っていて、相当なことを知ってますからね。
竹中 そうですね。今のポイントはすごく重要ですね。テクノロジーの進歩というのは望ましいんだけども、大きく分ければ2つのタイプがあるということですよね。幅広く、みんなに恩恵をもたらすようなテクノロジーがある。
これ、私はよく言うんですけど、電気釜とか電気洗濯機とか全部そうですよね。クレーンもそうですしね。あれはみんなが操作できるわけです。
ところが今起こっているのは、デジタルな新しいものをどう使うかという話です。これは個人の持っている才能とか能力によって、結果がものすごく違ってくるわけですよ。
すごくいろんなことができる人が出てくる一方で、入り口にすら入っていけない人が出てくる。そのことをインターネットリテラシーとか、デジタルデバイドとか言ったわけだけれど、これが社会問題になるぐらい大きな問題になっている。
たとえばパソコンにしてもiPhoneにしても、これは本当に、使う人の個人の技に依存してるんですよ。気がついてみると、テクノロジーの時代は技の時代になっているという、変なパラドックスができてるわけですよ。
佐藤 ああ、わかります。
竹中 私よく慶應義塾大学の村井純さんと話すんですけど、同じパソコンを持ってても、村井さんと私じゃ、ずいぶん違う。彼はもう多様な使い方ができるわけでしょう。
それで考えてみるとね、実は意外と今のところそういう技術に遅れている老人世代が、逆に有利になる時代が来るような気がしてるんですよ。なぜかというと、今は私よりも学生のほうがいろんな情報を早く手にする。
それはなぜかというと理由は簡単で、彼らのほうが暇だからですよ。要するに技ですから、向き合っているといろんなことがわかってくるわけね。今のパソコンとかウェブシステムというのはマニュアルがありませんから、実際に使ってみて、いろんなことをやりながら覚えるわけです。