【第5回】バークレイズも加担、当局をあぜんとさせた不正の中身
2015/10/31, NewsPicks編集部
【第5回】バークレイズも加担、当局をあぜんとさせた不正の中身
2015/10/31
転機となったアメリカの政権交代
ヘイズの評判が高まる一方で、マクゴナグルらCFTCの調査チームは壁にぶつかっていた。銀行に情報提供を呼びかけたものの、実際に得られた有用な情報はわずかで、ほとんどの銀行には完全に無視された。
また、金融危機の発生以来、エンフォース(法執行)部門は原油価格の急騰と投機筋の関係調査にほとんどの時間を取られた。
ロンドンでは、BBAがLIBOR操作疑惑の火消しに動いた。WSJなどの報道をきっかけに騒がれるようになったLIBOR操作疑惑は、ジャーナリストたちの誤解によるもので、銀行側に不正行為はないとの声明を出したのだ。
イギリスの監督当局は真相究明に関心を示さなかった。金融システムのメルトダウンを防ぐことで手いっぱいだったのだ(FSA、SFO、BBAはコメントを拒否)。
2010年初めの時点で、CFTCのLIBOR調査にまともに協力していたのはバークレイズだけだった。同社は否定しようのない金利操作の証拠を発見して以来、グレッグ・モセク元CFTCエンフォースメント部長を弁護士に迎えて、LIBORに関する助言を求めていた。
モセクは退任後もCFTCと緊密な関係を維持していて、バークレイズに対して、早期に不正を認めて制裁を軽くしてもらったほうがいいと助言した。
2009年1月にオバマ政権が誕生したのを受け、5月にはCFTCのトップに元ゴールドマン・サックス幹部で、6000万ドルの資産を持つゲーリー・ゲンスラーが就任した。
「チビで、ハゲのボルティモア出身のユダヤ人」を自称するゲンスラーは、オバマ大統領からデリバティブの規制を任された。それまでにデリバティブは、金融危機を悪化させたと原因の一つと考えられていたのだ。
CFTC委員長に就任したゲンスラーは、控えめだったCFTCをもっと「威張りくさった」組織にすると意気込んだ。そんな彼にとって、LIBOR詐欺疑惑はCFTCの存在を世に知らしめる格好の大型案件だった。
だからゲンスラーは、なんとか調査を再開させたがった。そして2010年3月のある日、彼の夢をかなえる小包が届いた。
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コメント
注目のコメント
ゴールドマンの元幹部のCFTCへの移籍や、司法省に対して金融機関への厳罰を求める世間の圧力など、いろいろな要因が積み重なって捜査が一気に進展した感じですね。
金融が国際化するなかで、当局間のパワーゲームも背景にはありそうと感じる記事。ゲンスラーに関しては、金融規制において参考になると思う。実務家で十分金を稼いでいる人で何らか問題意識を持っている人が、実務に即した規制・調査に最も適した人材。
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