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Decode Apps – NonGame編(第1回)

レッドオーシャンに挑む新興アプリ、AWA、MixChannel、Sansan開発の思想とは

2015/10/13
AppAnnie主催の「Decode Apps:B2Cでトップを目指すアプリ事業者様向けセミナー」が開催された。今回は、「事業会社のモバイルアプリ参入」をテーマに、10代に大人気の10秒動画コミュニティ「MixChannel」より福山誠氏、名刺管理アプリ「Eight」より塩見賢治氏、音楽配信サービス「AWA」より小野哲太郎氏が登壇。イベント後半には各者とNewsPicks編集長の佐々木紀彦とのパネルディスカッションも開催。アプリの将来について活発な議論を繰り広げた。イベントの内容を全4回にわたってリポートする。

音楽配信サービス「AWA」 「出会い」と「再会」の提供にこだわる

司会:まず、AWAの小野さんからサービスの紹介をよろしくお願いします。

小野:AWA株式会社は、昨年の12月にサイバーエージェントとエイベックス・デジタルのジョイントベンチャーとして創業し、5月27日に「AWA」という音楽配信サービスをリリースしました。僕はAWAでサービス開発を担当しています。

AWAは音楽を1曲ずつダウンロードする「iTunes」のようなサービスとは違い、クラウド上にある音楽を通信しながら再生するストリーミングサービスです。

僕らのサービスは、世界中のすべての曲をAWAのサーバー上に置いて、月に360円からの料金でどれでも好きな曲を聴けるようにすることを目指しています。

少しざっくりとした数になってしまうのですが、5月27日から約4カ月経った時点でダウンロード数は約500万です。国内外の主要な36社の音楽レーベルに参加いただいており、楽曲数は2015年中に約3000万曲に到達する見込みです。

音楽にけっこう詳しい人でも、数千万曲の楽曲から自由に選べるとなると、数十曲も聴いたら手がとまってしまう。AWAは、途中で「あっ、もうこれ以上聴くものなくなっちゃった」「何を聴いたらいいかわからなくなっちゃった」というときに、新たな曲との出会いや、昔よく聴いていた音楽との再会を提供する、そういったことを可能にする設計にこだわっています。

こうした音楽との「出会い・再会」を実現するのがアプリのインターフェースです。AWAは「TRENDING」、「DISCOVERY」、「MOOD」、「RADIO」、「GENRE」の大きく5つに分かれておりまして、横フリックで動かすかたちになっています。

1つ目のTRENDINGは、AWAでよく再生されている曲を全体のTOP100や各ジャンル別に再生数の高いものから並べています。

2つ目のDISCOVERYがAWAの真髄で、ユーザーが聴いた曲の波形や楽器の種類、声の質、バンド形態などを分析したうえで、その曲と近い曲が入っているプレイリストを引っ張ってくる仕組みや、好みの似ているユーザー間での協調フィルタリングなどの手法を活用したリコメンドのコーナーです。

なので、一人ひとりのユーザーの好みに合わせて表示されるプレイリストが異なります。そしてAWAを使えば使うほど、どんどん変化していきます。プレイリストは、サービス内でユーザーがアルバムのように曲を8曲組み合わせてつくります。今はだいたい300万プレイリストがサービス内にありますね。

MOODは、MORNING、SLEEP、WORKOUT、DRIVEなど、時間帯やシーン別に聴きたい曲やプレイリストがまとまっているコーナーです。運動中やドライブ中などに最適なプレイリストを聴くことができます。

RADIOというコーナーは、「自分で探して聴く曲が浮かばない」というときに、好きな曲やアーティストを入力すると関連性がある曲をどんどん流していく機能です。

先ほども言及したプレイリストは公開もでき、ほかのユーザーからお気に入りされたりもするので、ソーシャルな楽しみもあります。自分が公開したプレイリストが多くの人に聴かれ、お気に入りされることでプレイリストの作成にはまっているユーザーがたくさんいます。

動画アプリ「MixChannel」 人気ユーザーはテレビ進出も

司会:次は、福山さんから、「MixChannel」のお話をしていただきます。

福山:簡単に自己紹介させていただきますと、私、株式会社DonutsでMixChannelというサービスのプロデューサーをやっております。Donutsという会社は、モバイルゲームがメインの会社です。『単車の虎』というヤンキーの乗るバイクがテーマのゲームや『Tokyo 7th シスターズ』というアイドルゲームがすごく人気です。ヤンキーやアイドル、女子高生というエッジのきいたテーマに“張っている”独特な会社です。

弊社が運営するMixChannelは、ユーザーが動画を共有するサービスなのですが、「ニコニコ動画」や「YouTube(ユーチューブ)」などといった従来のサービスと違う点は、スマートフォンに完全に特化していることです。

単に動画を視聴するだけでなく、MixChannelのアプリだけで、動画の撮影から編集などをが簡単にできるのが大きな特徴です。つまり、MixChannelをインストールしたら、その日から動画をつくり発信するクリエーターのようになれる。

また、MixChannelは動画をつくる機能だけではなくて、コミュニティ機能も持っています。トップページをランキングにしていて、そのトップページのランキングに載るために、ユーザーががんばって投稿するようなサイクルがあり、独自のコミュニティが生まれています。

実際、どのような動画があるのかを、今日はお見せします。MixChannelの人気カテゴリのうち、カップルのための「LOVE」カテゴリとダンスなどを踊って投稿する「やってみた」カテゴリから動画をピックアップしてみました。

今ご紹介している動画は、LOVEカテゴリの動画で、音楽の歌詞を彼氏に重ねている内容です。LINEカメラなどのデコ系のアプリで一枚一枚画像をつくって、800枚くらいの画像を合わせて動画にしているんですよ。こういった動画をつくるには2週間ぐらいかかってるんです。スマホだから簡単に動画をつくれるとはいえ、かなりの超大作の投稿が相次いでいるのが特徴的ですね。

「やってみた」動画は、全身を撮ってダンスをするというよりも、スマホを目の前に置き、上半身だけで2人でシンクロしながら楽しむ点が特徴的です。振り付けも、土日に集まったりして自分たちで考えるんですよね。そうやってMixChannelに投稿された人気ユーザーの振り付けをまねして楽しむ遊びもすごく流行っています。

「やってみた」動画でファンの多い福島の女子高生の2人組「まこみなちゃん」はMixChannel内で人気に火がつき、先日『めざましテレビ』で特集されました。

ユーザーのデモグラフィック属性は、お察しの通りすごく偏っています。80%が女性で、18歳以下のユーザーがほとんどです。女子高生と女子中学生にすごく支持されていて、さらに言えば、どちらかというと地方の女子高生に高い支持を得ているようです。

リリースから約1年7カ月経った今、ダウンロード数は400万ダウンロードで、月間訪問者数はアプリとWebを合わせて400万人です。月間の動画再生数は5億回を超えました。中高生向けのサービスなのですが、今の中高生は1学年120万ぐらいしかいないので、かなり浸透しているのかなと思っております。

(構成:ケイヒル・エミ、写真提供:AppAnnie)

※続きは明日掲載します。