(ブルームバーグ):米投資ファンドのカーライル・グループは、日本で後継者難や海外進出のノウハウがないなどの課題を抱える中堅企業に重点投資していく方針だ。有能な人材の派遣や提携先探しなど、資金面だけでなく経営面からも支援して成長を促す。9月までに1195億円を集めたファンドから資金を拠出する。案件次第ではより規模の大きな出資も検討していく考えだ。

カーライル・ジャパンの安達保共同代表はブルームバーグの取材に対し、「良い製品を持っているのに海外展開のノウハウがないため成長できない企業も多い」と述べ、米国はじめ海外での投資経営で得た経営ノウハウや人脈を活用していく方針を示した。英調査会社プレキンによると、日本に投資する外資系投資ファンドの中でカーライルは過去数年で最も多額を集めている。

カーライルは世界で1930億ドル(約23兆円)を運用する世界で2番目に大きなPE投資ファンドだが、日本では2000年に進出して以降、大企業の閉鎖性から投資先を中堅企業としたり、日本拠点の人材をすべて日本人で固めるなど独自の対応をしてきた。今回のファンドは日本での組成による3本目。01年には1号ファンド、06年に2号ファンドを立ち上げ投資してきた。

安達氏によると、最新のファンドからはすでにベビースターで知られる「おやつカンパニー」など4件に投資した。今後は企業価値3億ドル(約360億円)以下の同族経営企業などを念頭に、より大きな企業への出資機会があれば、グループ内の海外ファンドの支援も視野に検討していく。これ以前のファンドでは約20件に投資し、約10件で資金回収を終えたという。

経営者の高齢化


日本では中堅・中小企業の後継者不足が深刻だ。帝国データバンクの調査によると、1990年に54歳だった日本の社長の平均年齢は2014年に59歳まで上昇。特に年商が小さいほど70代、80代以上が目立つなど事業承継は遅れている。

安達氏は今後について、基本的に少子高齢化で日本は低成長が見込まれるとして、「まだ成長が見込める産業に焦点を絞って投資を検討したい」と述べた。有望な業界としては、高齢化が追い風となるヘルスケア産業や、アジアなど海外で品質の高さが評価されている消費財分野などを挙げた。大企業で非中核部門から撤退する動きなどにも関心を示した。

プライベート・エクイティ(PE)関連投資はリーマン危機後に落ち込んでいる。べイン・アンド・カンパニーのリポートによると、世界で2014年に発表された買収総額は計2520億ドルと、ピークだった2006年の6870億ドルの4割以下の水準にとどまっている。英プレキンによれば、国内での昨年の投資は29億ドルと米国(1660億ドル)の60分の1程度だ。

安達氏は、日本企業の中ではこれまで海外資本に対する警戒があったが、最近は「海外からの投資に対して以前よりオープンになってきている」と指摘した。その上で「大事なことは、出資する企業の経営陣や従業員と信頼関係を築くことだ」と語った。

安達氏は3号ファンドのリターンについてコメントを控えた。全米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース) がウェブサイトで開示した昨年末時点の同基金の内部収益率に関する資料によると、カーライルの日本の1号ファンドは34.1%、 2号ファンドはマイナス3%となっている。

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