「狂っている」と同僚に言われた上場前の退職。なぜ起業の道を選んだか
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注目のコメント
GSの上場メリットを享受しなかったのは、創業のタイミングを遅らせたくないという思いも強かったのではないかと思います。お金より時間、タイミングの方が大切です。
マネックスの松本氏のインタビュー特集、なかなか読み応えがある。これまでの連載のなかでも取り上げられたが、松本氏はGS在籍中に、一本でも出れば十分なホームラン級の活躍を二度している。最初は、円デリバティブのチームを東京で立ち上げゼロから200人のチームにまで大きくしたこと。その成果で30歳で社員のなかで1%ほどしかいないパートナーに就任。そして、その後もまたゼロからはじめた不良債権売買プロジェクト「プロジェクトビッグバン」で巨額の利益を生み出す。このホームラン2本で、まさにレジェンド。
GS上場直前の時期の退職で、50億円とも言われる上場利益を目の前にして捨てた決断を、同僚から「狂っている」と言われたとのくだりは、ちょっと僕は差し引いて見ている。一般的に、GSのパートナーの平均年収は90万ドル前後(約1億円)と言われ、ボーナスは別にその何倍も出る。世界的にもトップクラスの成績を上げていた松本氏は、ボーナスで下手をすれば10億円近くは入っていたのではないかと推察。そのレベルになれば、50億円の上場利益も、さして大きな金額には思えなくなるのも当然かと。マンションの一室でゼロからビジネスを始めたスタートアップ起業家が、上場前に50億円を捨てたのとはまったく次元が違う話だと思う。
ただ、「若くして大金を手にするのはリスク」という松本氏の感覚には完全に同意する。賞賛すべきは、既にGSで年収数億円を得ていた松本氏が、こうした「普通の感覚」を忘れなかったことだろう。僕がいま住んでいるシンガポールには、日本で得た数十〜数百億円の個人資産(主に上場益か会社売却益)を持ってシンガポールに移り住んできた人たちがかなりいるが、その中にはまだ人生半ばの30代〜40代の人たちもいる。確かに彼らの優雅な生活は聞いているだけでも刺激的だが、まだまだ先の長い人生どう自分をモチベートするのだろうなぁと要らぬ心配をしてしまう。
この先の連載も楽しみ。