RECRUIT×NewsPicks 求人特集
「スタートアップ」で幸せを感じられる理由
2015/8/24
大企業からスタートアップへ。大企業で勤め上げることが社会的ステータスだった時代から、スタートアップ経営幹部への転職がキャリアの選択肢として存在感を増している。転職先として、スタートアップの存在。リクルートとNewsPicksが共同で、スタートアップ幹部人材のキャリアストーリーにフォーカスしつつ、求人情報も同時に掲載する。
伊藤忠、IBM、グリーを経てマネーフォワードに
「社会人になって15年になりますが、スタートアップで働いている今が一番幸せですね」と話すのは、マネーフォワードで執行役員MFクラウド本部長を務める宮原崇だ。伊藤忠商事、IBM、グリーを経てマネーフォーワードに15人目の社員として2013年12月に転職した。
マネーフォワードはこの1年半の間に従業員数100人弱の規模になっているから、宮原はその成長を支えた“エンジン”の1人だ。
伊藤忠時代は、水産部に所属していたが、目の前で取引先の中小企業が倒産していく姿に何度も遭遇した。父が中小企業を営んでいたこともあり、経営者たちの顔が父と重なったが、一商社という組織の人間として、何の手を差し伸べることもできなかった。それが無念でならなかった。
「いつか、この人たちの役に立ちたい」
宮原の胸には、ずっとその思いがあった。
常に前に進む姿勢
マネーフォワードと言えば、家計簿サービスから始まったスタートアップだ。社長の辻庸介と話し始めたときも、法人向けビジネス一筋だった自分にはできることがないと宮原は思った。しかし、辻は個人向けだけにとどまらず、法人向けビジネスを始めたいと思っていた。
同社には「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というビジョンがある。お金に対する悩みや不安を軽減して暮らしを改善し、夢を実現する。お金の流れを変えることで世の中を活性化しようというビジョンだ。これは個人だけでなく法人にもあてはまるはずだ。
辻と話す中で、ここなら、自分が以前からやりたかった中小企業に役立つことを仕事にできる。宮原はそう確信し、転職を決意した。今では、会計業務をはじめ、請求書や給与計算業務を改善する法人向けサービスが、個人向け家計簿サービスに並ぶ柱の1つに育った。
キャリアを通して最も大切にしたかった、中小企業に役立つことをしながら、自社の成長に手応えを感じられるのが、今の宮原にとって何よりの喜びだ。
「常に走っている状態だから、体力的にはキツイ面もあります。でも、愚痴を言う人は少ないように思います。一人ひとりが経営者マインドを持って、常に前に進まないといけないので愚痴を言ってる暇はないんでしょうね」
マッキンゼー、楽天からランサーズへ
「圧倒的な社会的大義を感じて転職を決めた」と話すのは、ランサーズで執行役員を務める曽根秀晶だ。
ランサーズは2008年に日本で初めてスキルのあるデザイナーやエンジニアと企業をつなぐクラウドソーシングサービスを開始し、順調に規模を拡大している。曽根が感じた社会的大義とは、「2020年までに1000万人がオンラインで働くプラットフォームをつくる」ことだ。日本の就業者数が約6400万人だから、海外市場への展開を想定しているにしても、これがいかに大きなビジョンであるかがわかる。
曽根は、マッキンゼーの「インターネット世代」と言われる2007年入社組だ。同期はグーグルやアップル、ディー・エヌ・エー、グリーなどのネット企業に転職した人が多く、曽根も楽天へと転じた。
楽天では、楽天市場の営業や事業戦略から、海外事業展開を推進する国際部、そして最終的には全社の戦略を策定する総合企画部まで経験した。現場の営業で地方の店舗を「エンパワーメント」するミッションやベンチャースピリッツを感じるとともに、国際部や総合企画部では連結従業員数1万人を超える「巨艦」を動かす醍醐味(だいごみ)も体験した。
楽天の4年半を通して、インターネットのポテンシャルが、今までとはまったく別のフェーズに入っていることを肌で感じた。Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー)など、もともと強い関心を抱いていたシェアリングエコノミーの領域で、ニッチでスケールしないと思っていたスタートアップが急激に成長していくさまにも刺激を受けた。
自分の信じたビジョンを実現できるところに行きたい。そう思っていたところに出会ったのが、ランサーズCEOの秋好陽介だ。「個のエンパワーメント」というミッションや「時間と場所にとらわれない新しい働き方」を広げたいというビジョンに強く共感するとともに、一緒にビジョン実現を目指す「いい仲間」に出会ったと直感した。
ビジョン>仲間>仕事>報酬
曽根にとっては、共感できるビジョンがあることが何よりも重要で、そのビジョンを誰と共有できるかがその次に重要だ。仕事の内容、報酬は二の次。マッキンゼー、楽天でのキャリアを通じて、その優先順位がより明確になった。今の曽根は、新しい働き方を広げるという圧倒的な社会的大義に向かって進めることに、何よりも充実感を覚えている。
そんな曽根に、スタートアップで働くことは大企業で働くこととどう違うのかを尋ねた。すると、マッキンゼーの出身者らしく「違いは3つですね」と返ってきた。
(1)リスクを背負う。リスクに合うコミットができるかを判断する必要がある。
(2)仲間が大事。組織が小さいので逃げ場がない。
(3)創造は逆境から生まれる。逆境を創造の原動力にする覚悟が求められる。
「そういえば、メールをほとんど使わなくなりました。ここではフェイスブックやチャットワークなどのメッセージが中心で、仕事の進め方がとにかく早いですね」と曽根は付け足した。
スタートアップでは、とにかく前に進み続けるしかない。立ち止まる余裕はない。しかし、仲間とともにビジョンをかたちにできる幸せを感じられる。
もしもあなたが、今、働くことに幸せを感じられずにいるのなら、それは飛び立つ決断をするときかもしれない。(文中敬称略)
(写真:福田俊介)