【堀紘一・上】3つの新トレンド? そんなものは、ちっとも新しくない

2015/8/20
特集の最後は、ボストン コンサルティング グループ(BCG)日本オフィスの創設期を支え、現在は自身が設立したドリームインキュベータ(DI)の会長を務める、「伝説のコンサル」堀紘一氏へのロングインタビューを掲載。本特集で深掘りしてきた「3つの新トレンド」への見解を伺うつもりが、話は思わぬ方向へと進み……。スリリングで示唆に富む「堀紘一節」全開のインタビューとなった。

DIメンバーが「コンサルタント」と名乗らない理由

──コンサルティング業界の新潮流として、「投資ファンド化」「高級派遣業化」「クリエイティブ路線への進出」が挙げられます。
堀 悪いけど、僕からすれば、全然新しくない(笑)。いま、いろんなコンサルティング会社がやり始めたことって、僕らが15年前にやっていたことだね。
2000年にドリームインキュベータ(DI)を創業したとき、マッキンゼーやBCGと同じことをやっていては、まったく勝負にならないと思った。たとえば棒高跳びだったら、「向こうは6メートルしか飛んでないけど、こっちは7メートル飛んだ」と客観的に実力を比べることができる。
でもコンサルティングは客観的な数字が目に見えないからね。商品を買う前に品質がわかりにくい。だから一番無難な買い方は、名前が売れている会社のコンサルティングを買う。そうなると、マッキンゼーやBCGが強いよね。
だから、知名度がないDIは、マッキンゼーやBCGと差別化しなきゃいけない。そこで、「新しいビジネスを創る人」を意味する「ビジネスプロデューサー(BP)」というコンセプトを打ち出した。(同席したDI社員を指して)彼らの名刺を見てごらん、BPと書いてあるから。われわれはコンサルタントとは違うんだというのは、会社ができたときからの精神なわけだ。
どういうことかというと、たとえば大企業では、新規事業を立ち上げるときに、3年間で、全社の売上の10%ぐらいを賄えるように設計する。売上1000億円の企業なら、新規事業で100億円を目指すという具合にね。
でも、トヨタ自動車のような大企業で、売上が10兆円を超える企業だったら、10%でも1兆円になる。売上1兆円というと、これはもう日本を代表する大企業をつくるようなもの。業務改善なんていう、なまじのことをやっていたんじゃ、ダメだ。