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地域の書店は、消えゆく運命なのか?

地域の書店は、消えゆく運命なのか?

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林 雅之
デジタル政策と未来社会林 雅之

書店は地域の文化拠点として、多様な知識や思考に触れられる場であり、文化の発信基地として重要な役割を担っています。しかし、インターネット書店やスマートフォンの普及により、従来の書店は厳しい経営環境にさらされています。

経済産業省は街中にある「書店」は、多様なコンテンツに触れることができる場であり、創造性が育まれる文化創造基盤として重要であるという認識の下、「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げ、2024年10月4日に「関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)」を公表しました。

今回は、書店活性化のための課題とその対応について、取り上げたいと思います。

地域の書店が直面する課題

書店が直面している具体的な課題は多岐にわたり、そのいくつかを以下に整理します。

来店客数の減少
スマートフォンやSNSの普及に伴う「読書離れ」が進行し、書店への来店者数が減少しています。特に、定期的に来店するきっかけとなる雑誌の購読者数が減少しており、書店の売上に大きな影響を与えています。また、文化庁の調査によると、1か月に本を1冊も読まないという人が62.6%に上るなど、読書そのものへの関心が低下している現状もあります​。

粗利率と流通慣行
書店の粗利益率は平均で約22%と低く、委託配本制度による返品率の高さが経営を圧迫しています。書籍の返品率は書籍で約33.4%、雑誌では約47.3%に上り、返品に伴う輸送コストも増加しています。また、出版社が価格を決定するため、書店側がコストを販売価格に転嫁できないことが、経営をさらに厳しいものにしています​。

ネット書店との競争
再販売価格維持制度により、書籍は全国一律の価格で販売されていますが、ネット書店は過度なポイント還元や送料無料などを行うことで、実質的な値引きが行われており、実店舗の書店が不利な競争条件に置かれています。この点で、フランスの「反アマゾン法」を参考にすべきという指摘もあります​。

地方自治体との連携の希薄さ
地方自治体による図書館や公共機関の調達は、競争入札を通じて行われることが多く、地元書店が入札に勝てずに販売機会を失うことがあります。また、書店が地域の文化拠点としての役割を果たすために、地方自治体との連携が重要ですが、その理解や協力が十分ではない現状があります​。

DX化と在庫管理の遅れ
書店業界ではDX化が進まず、在庫情報の管理が手作業に依存しているため、適切な在庫管理ができていません。その結果、消費者が書店で特定の本を見つけられず、ネット書店に流れる一因となっています。RFIDタグの導入による効率的な在庫管理が期待されていますが、導入にはコストがかかるため、一部の書店にとどまっています​。

地域の書店の活性化に向けた取り組み

書店の活性化に向けて、次のような取り組みなどが提案されています。

文化イベントの拡充
書店主催のイベントやフェアを通じて、読者を呼び込む取り組みが求められています。地方の小規模書店では、別途会場を借りる費用や作家の交通費の負担が重いため、こうしたイベントを開催するための支援が必要です​。

地方自治体との連携強化
図書館と書店が連携して地域に本を提供する事例も増えつつあります。例えば、鳥取県立図書館では、書籍を地元書店から購入しており、図書館と書店の協力によって地域書店を支える取り組みが進んでいます​。

書店による新事業の開拓
書店が活性化するためには、従来の書籍販売だけでなく、文具やカフェの併設、地域コミュニティの場としての役割を果たすことが重要です。独立系書店や特色ある書店が増えることで、書店の新しい価値が提供されることが期待されています​。

今後に向けて

書店の活性化には、来店客数の減少や粗利率の低さ、ネット書店との競争など、複合的な課題が存在します。その一方で、地域社会と連携し、書店が文化の拠点としての役割を強化することで、地域に根付いた新しい形の書店が生まれる可能性があります。政府や地方自治体、書店業界が協力し、持続可能なビジネスモデルを確立することが急務です。

経済産業省では、中小企業庁の支援策などを整理した、「書店経営者向け支援施策活用ガイド」を公表しています。本活用ガイドも参照しながら、地域の書店をどう活性化させていくか、経産省の政策的な支援の動きは引き続きウオッチしていきたいと思います。

出典:経済産業省 「書店経営者向け支援施策活用ガイド」2024.10


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コメント


注目のコメント

  • 林 雅之
    国際大学GLOCOM 客員研究員

    経済産業省は街中にある「書店」は、多様なコンテンツに触れることができる場であり、創造性が育まれる文化創造基盤として重要であるという認識の下、「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げ、2024年10月4日に「関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)」を公表。

    書店の活性化には、来店客数の減少や粗利率の低さ、ネット書店との競争など、複合的な課題が存在。その一方で、地域社会と連携し、書店が文化の拠点としての役割を強化することで、地域に根付いた新しい形の書店が生まれる可能性。

    政府や地方自治体、書店業界が協力し、持続可能なビジネスモデルを確立することが急務に。


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