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中国語の「内卷」「卷」とは?― 競争社会のリアルを映す流行語

中国語の「内卷」「卷」とは?― 競争社会のリアルを映す流行語

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ZIHAN WANG
中国語を学ぶ、学び方を学ぶZIHAN WANG

中国のネットスラングには、現代社会の複雑な競争やプレッシャーを映し出す表現が数多くあります。その中でも特に注目されているのが「内卷(nèijuǎn/ネイジュアン)」という言葉です。

今回は「内卷」及び「内卷」から派生した「卷(juǎn/ジュアン)」の意味と背景について解説していきます。

「内卷」とは?

「内卷(nèijuǎn)」は、元々「involution」という英単語の訳語で、社会学の専門用語として使われていました。本来は「社会がある発展段階に達した後、次の段階に進めず停滞すること」という意味ですが、ネット上で学生たちが「資源が限られている中で無駄に繰り広げられる激しい競争や資源の奪い合い」という文脈で使い始めたことから、「内卷」という言葉が広まりました。現在では、本来の意味よりも「無意味な競争」という意味として定着しています。

現代中国において「内卷」は、激しい競争の中で、自分や他人の努力が報われず、成果が横ばいになる状況を指します。例えば、職場での過度な労働や、受験戦争の中での過剰な努力などが「内卷」として表現されます。労働者や学生が競争に巻き込まれ、最終的に誰も勝者になれない状況を揶揄する言葉です。

使用例

中国語(ピンイン)

自从公司开始996以后,员工们为了保住工作不得不加班,形成了内卷。

(Zìcóng gōngsī kāishǐ jiǔjiǔliù yǐhòu, yuángōngmen wèile bǎozhù gōngzuò bùdé bù jiābān, xíngchéngle nèijuǎn.)

日本語の意味:

会社が996勤務制度を導入して以来、社員たちは解雇されないようにやむを得ず残業し、内巻(=無駄な競争)になった。

語彙解説:

996→午前9時から午後9時まで働き、週6日間勤務すること

保住工作→解雇されないように仕事のポジションを守る

背景:

中国では、週休二日制を徹底している会社が少なく、実際には「996」制度(午前9時から午後9時まで働くことを週6日続ける制度)が広く採用されています。これにより、休憩時間を考慮しても一週間当たりの実働時間は60~66時間に達します。

一応、中国の労働基準法に相当する『労働法』では、労働者の労働時間は一日8時間以内、週44時間を超えてはいけないと規定されています。しかし、996制度を導入している多くの会社は、表向きには「8時間労働、週5日勤務」を掲げているものの、実態は毎日10~11時間、週6日勤務が当たり前になっています。このようにして、表面的には労働法を遵守しているように見せかけつつ、実際にはその規定を回避している企業が多いのです。

新入社員は入社してすぐに周囲のほとんどが「996」を実践していることに気づき、その圧力から、たとえ報われないと知りつつも、自らも「996」を余儀なくされてしまうことが少なくありません。

「卷」とは?

ここで解説する「卷(juǎn)」は本来の「ロール」や「巻く」という意味を持つ「卷」ではなく、「内卷」から派生した動詞のことです。

この「卷」は「成果の望めない激しい競争に巻き込まれる」という意味を持っており、積極的に他人と競い合うのではなく、「競争に参加しないと負けてしまう」という恐怖心から競争への参加を余儀なくされることを意味します。例えば、「周りが残業しているから自分も残業してしまう」「他社が価格を下げているから、自社も値下げをせざるを得ない」などの状況を「卷」と言います。

使用例

中国語(ピンイン)

自从上了大学以后,周围的人都在为了出国留学或者考研卷成绩、卷绩点。

(Zìcóng shàngle dàxué yǐhòu, zhōuwéi de rén dōu zài wèile chūguó liúxué huòzhě kǎoyán juǎn chéngjì, juǎn jìdiǎn.)

日本語の意味:

大学に入学してからというもの、周りはみんな海外留学や大学院受験のために成績やGPAの競争に巻き込まれている。

語彙解説:

考研→大学院受験

绩点→GPA、成績評価

背景:

中国の高等教育環境は非常に競争が激しく、多くの学生が将来のキャリアや学術的な成功のために高い成績を求められています。特に大学入学後は、留学や大学院進学を目指す学生が増え、それに伴って学業成績やGPA(成績評価)が重要視されるようになります。

このような状況下で「卷(成果の望めない激しい競争に巻き込まれる)」の現象が顕著に見られます。学生たちは、留学や進学、就職といった目標達成のために、他者と比較して自分を高める必要性を感じ、結果として過度な努力やストレスを抱えることになります。

終わりに

中国では、「内卷」という言葉が現代社会の激しい競争を象徴する表現として広く使われています。特に職場や学業において、目に見える成果が得られないまま努力が続く状況を「内卷」と表現し、多くの人々の共感を呼んでいます。

しかし、リソースが限られた中で成果が期待できない競争に巻き込まれる「内卷」の状態では、精神的な負担が増し、心の健康に悪影響を及ぼすことも少なくありません。それでも競争を避けることができず、「内卷」に巻き込まれてしまう人々が多いのが現実です。

今後も、中国語の単語だけでなく、それに関連する中国の社会現象や背景についてもお伝えしていきたいと思います。ぜひフォローして、次回の投稿を楽しみにお待ちください。

また、もし中国語学習で困っていることなどがある方はお気軽に中国語コーチングスクールthe courageにご相談ください。プロの語学学習コーチがカウンセリング対応させていただきます。

(見出し画像:https://www.gettyimages.co.jp/より)


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コメント


注目のコメント

  • 木戸口 学
    商社

    今の中国の競争力の根源でしょうか。
    そのうち少子化が進むと日本のようにゆとり教育、売り手市場と巻く必要がなくなり、競争力も弱まるサイクルへ行き着くでしょうね。


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