NY円、161円台前半 一時37年半ぶり安値
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「1986年12月以来、約37年半ぶりの安値」とありますが、1986年12月の世界の中での円の購買力(≒実質実効為替相場)は今の約2倍ありました。同じ161円でも、円の価値は当時の半分になっており、円の購買力は既に日本が発展途上で庶民の海外旅行がまだ夢だった1960年代に戻っています。
その理由は次の通りです。
仮にハンバーガーが日本で100円、アメリカで1ドル、ドル円相場が1ドル100円なら、100円玉でアメリカのハンバーガーも日本のハンバーガーも1個買えます。低インフレの日本でハンバーガーが100円のままで、高インフレのアメリカで2ドルに値上がりし、1ドルが100円のままなら、100円玉ではアメリカのハンバーガーは半分しか買えなくなります。このとき為替が1ドル50円の円高に動けば100円玉が2ドルになりますから、元通り100円玉で日本のハンバーガーもアメリカのハンバーガーも1個買えるのです。円高を嫌がって無理やり1ドル200円の円安にすれば、100円玉は50セントにしかなりませんから、100円玉ではアメリカのハンバーガーが1/4しか買えなくなってしまいます。これがいま我が国で起きていることで、だから日本で千円のラーメンがアメリカで3千円といったことになるのです。
円の実力は日本が高度経済成長を始めた時から本格的な停滞が始まる1990年代の半ばまで上げ続け、その後は停滞の中で一貫して落ち続けています。円高が停滞の原因ではなく、産業の競争力が落ちてドルを手に入れる力が弱まった、即ち手に入れたドルを売って円を買う力が弱まったことが原因であろうことは想像に難くありません。そして実力低下が一気に速まったのが異次元緩和の2013年以降です。弱くなった産業が円安を求め、日銀が量的緩和でモノとサービスの裏付けの無い円を大量にばら撒き、マイナス金利とYCCで金利を無くして円の魅力を落とし、資源高と円安で交易条件が悪化して貿易赤字が膨らみ、庶民が円を売って外貨運用する事態になりました。そして、円安によるインフレ自体も円安の要因です。
円安の原因を日米の金利差だけに求めて納得していたら、円の購買力がますます落ちて日本国民は世界の中で本当に貧しくなってしまいます。円安でインフレを起こせば日本が豊かになるとの幻想を捨て、日本経済を衰退に追い込む根本原因を取り除くことが大事です。人民元に対しても円安が進んでいます。
足元では1元=約22円と、私が中国に来てから最も安い水準で推移しています。以前は1万円=600~700元程度でしたが、今では1万円=450元にまで円安が進みました。
最近日本に旅行に行った私の学生も「安い!」と大はしゃぎ。ハーゲンダッツのアイスクリームを爆食し、色々と買い物をして帰ってきたそうです。